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給食室の天使たち①

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとはたぶん関係ありません。。。


「きゅうしょく きゅうしょく うっれしいな〜♪
おててもきれいになりました〜 みーんなそろってごあいさつ♪」

3歳の娘が、覚えたての歌を歌っている。

40年前に僕が幼稚園で歌っていた給食ソングが、未だ歌い継がれていたとは、、、

妻と幼子とテーブルを囲んで、テレビを観ながら夕食を摂る。

居酒屋に勤めていた頃に憧れていた、食卓の風景が、ここにある。

4月に転職した僕は、17時頃には帰宅できるようになり、毎日の夕飯の支度が出来るようになった。
妻の家事育児の負担も多少は減り、毎日遊んでくれるパパは娘も嫌いではないらしい(以前は「パパきらい」が口癖だった)。

僕?

勿論僕も、毎日家族と顔を合わせて食事出来るのは嬉しい。

だけど、胸が苦しい。あの給食室に明日も行くのかと思うと、可愛い我が子の歌が何とも苦々しく聴こえるのだ。

時は遡り、、、


居酒屋勤めから抜け出したい。

僕が切実にそう願う様になったのは、新型コロナウイルスの流行があった2020年頃からだ。
盆と正月以外は無休で稼働していた僕の勤め先の居酒屋も時短勤務を余儀なくされて、店の経営は一気に苦しくなった。

店の存続の為には、致し方なかったのかも知れないが、給料をカットした挙句
「従業員が居なかったら、営業なんかしないで休んでる」
と言い放つオーナーの姿勢にはかなりがっかりした。

でもそれが現実なのだ。

お人好しじゃあ、経営は出来ないってか。

時短勤務によってうまれた多少の時間を勉強に当てて、僕は調理師免許を取得した。

郊外に中古のマンションを見つけて、住宅ローンの審査をどうにか通して、僕は11年働いた居酒屋を辞めた。

アラフォーの仕事探しは、困難を極めるかと思いきや、
何件かの応募ののち実にあっさりと内定をもらった。

中規模の給食の委託会社で、ネットの情報によれば
(怒鳴るチーフがいる)だとか(給料がクソ安い)、
(面接さえすれば受かる会社)等、評判はあまり良くない。

ままぁ、いいさ!
とにかく仕事が決まってハッピー!
何事もチャレンジだい!


、、、そうなんです。
僕って浅はかなんです。    


これが悪夢の始まりでした。

          
     
      次回『給食室の天使たち②』乞うご期待!












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