僕らの長い放課後(前編)
※過去のブログ(2021年)からの転載です。
悪しからず。
「×年×組山田、今すぐ職員室に来なさい」
中学時代、何回この放送を聞いたのか定かではないが、呼び出しを喰らった時の重苦しくて、どんよりとした、いやーな気持ちは今も鮮明に憶えている。
そして(やっべ、、、俺、何したっけ、、、⁇)と自問しながら、職員室に向かって歩くのが僕、いや僕等の日常だった。
その日は少し様子が違っていた。
土曜日、テスト期間も今日で終わり!
弁当食ってさあ部活に行くぜ!と思った矢先。
学年主任、鈴木あきらの不気味な声で「×年×組M、×組G、×組山田、×組......会議室に来なさい」総勢10名程が呼び出されたのだ。
しかも「会議室に来なさい」
成る程、あの部屋はだだっ広いくて、何も置いていない。窓も扉も閉め切ってしまえば、音は漏れず、他学年の先生に見られる事もなく完全な密室になる。
僕は、本腰を入れた粛清、いや、ジェノサイドを予感し恐怖におののいた。
おそるおそる会議室の扉を開けると、そこには衝撃の光景が広がっていた。
サッカー部のM君(『性の目覚め、そして眠りへ、、、』登場)番長的な存在のG君(『さよならGくん』登場)そのほか、僕の学年の中でも特に、おふざけ大好き男子達が、ずらっと一直線に正座の状態で並んでいたのだった。
僕は誰に命令された訳でもなく観念して、スッと列の最後尾に正座した。どんな言葉を発しても、殴られるのは目に見えてる。
僕の後に入ってきた、愉快な仲間たちも同じようにうなだれて正座の列を伸ばしていった。
100キロはある巨漢の学年主任の鈴木あきら。首だか顎だかもはや区別はつかないが、余りにも太過ぎてポロシャツのボタンは全開にもかかわらず、今にもはち切れんばかりだ。
そしてものすごい高い位置から僕らを見下ろしながら、一言。
「さぁて、、、何故だか、分かるか?」
端っこから順番に答えさせられる。
「分かりません、、、」
「分かりません、、、」
「分か、、、」
数人が答えたところで、人類史上最悪の暴力国語教師、バレー部顧問の三井(『伝説の暴力教師』登場)が
「お前らァァァ〜〜‼︎とぼけんなまぁ(三井独特の方言)、ゴラァ‼︎」
激昂してから、ビンタに移るまでの、流れる様な美しいモーション。
来る!(避けるという、選択肢は無い)
僕らは目をつむった。
バチコーン!バチコーン!
会議室に平手で頬を打つ乾いた音が響き渡る。
僕らはドミノの如く倒されていった。
無駄の無い動き、まさしくプロフェッショナルの仕事。
ビンタのダメージでまだ脳天がクラクラしている僕らに向かって学年主任は実に苦々しく、怒りを押し殺す様に言った。
「お前ら、、、テスト期間中に小学校のグラウンドでサッカーしてたらしいな?」
ウン。
、、、してたよ、、、みんなでサッカーしたよ。
、、、楽しかったよ。
(エッ?それだけで⁉︎)
僕らは心の中で叫んだ。
(後編に続く)