ブルックリン物語 #43 You Are The Sunshine of My Life
中西部ツアーから帰ってきて久しぶりにブルックリンの我が家のある街にサンダルで繰り出したら、心からホッとした。ホームとは不思議なものだと思った。
夏になるとうちの近所の角に立つかき氷屋さんのおじちゃんが苦みばしった顔で(甘い蜜をいっぱいかけるかき氷屋なのに)「よ!一年ぶり」と声をかけてくる。僕がここいらに越してきた6年ほど前から「閉店セール」をやり続けている紳士服屋も「本当の本当の閉店セール」を大々的に開催中。誰も本気にはしていないけれど。
地球の気候がおかしくなったみたいな灼熱の中西部に比べると、たまたまだろうがNYは比較的気持ちのいい按配の天気だ。馴染みの店に入ると「これだよね!」と生ビールが出てきた。丁寧に泡の分量を考えて何度もやり直して出してくれたらしくどんなもんだいと店の子の顔が言っている。
「抜群だよ。ありがとう」
「どういたしまして。いつものシシトウにする?」
「うん。それと今日は3種盛りにしようかな。シシトウとハマスとマカロニ!」
「いいチョイスだよ。すぐに用意するからね」
窓際の4人がけの席は陽の光がやんわり入ってとても気持ちがいい。そのままいると昼寝をしそうになるのが玉に瑕だが、ちょこっとランチにはもってこいだ。何より「ここに座っていい? 1人だけれど」と言うと必ず「もちろん。何処へでも好きなところへ」と笑ってくれるのがありがたい。
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