ブルックリン在住の大江千里が日々の暮らしを綴る6000字前後の読み応えあるエッセイ。「NEW DAYS」も仲間になりました。単行本『ブルックリンでジヤズを耕す 52歳からのひとり…
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2018年9月の記事一覧
ブルックリン物語 #55 “The Adventure of Uncle Senri” 千里叔父さんの冒険 (後編)
「あなたが世界中で一番落ち着ける場所ってどこですか?」 「そうだなあ、住んでいるLAでも日本でもないなあ。敢えて言えば、飛行機の上かな」 86年の春、LAで会ったカメラマンはそう僕に言った。あの日のアメリカへの憧れは天国まで続きそうなパームツリーとともに、広大なカリフォルニアの空へ吸い込まれていった。そのあと逃げるように日本へ戻った僕には、とてつもない空虚だけが残った。夢に全力加速し、アクセルを吹かし、近づき過ぎたのかもしれない。 あの年のカリフォルニアでのひと夏の「旅本
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