ブルックリン物語 #53 “Boys & Girls” 10年経って出会った時もラストは君と
「そうか、あなたはNYから来たんだ。何をされている方ですか?」
露天風呂で出会ったその人の年の頃は70過ぎ。僕に興味津々と言ったところで無造作に髪を撫でそう尋ねてきた。
「音楽を作って演奏したりしているんですよ」
「へえ、羨ましい。私は聞くのは好きだけれど演奏はできないです。アメリカは厳しいでしょう? 大したもんだ」
昼間は団体客がバスで観光に向かうせいか、ほとんど人が残っていない。そんなホテルの湯だから空いているだろうと勢いよくドアを蹴ったら、湯気の向こうにぼんやり