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NEW DAYS ★ プチDAYS★ブルックリン物語

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ブルックリン在住の大江千里が日々の暮らしを綴る6000字前後の読み応えあるエッセイ。「NEW DAYS」も仲間になりました。単行本『ブルックリンでジヤズを耕す 52歳からのひとり…
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2017年3月の記事一覧

ブルックリン物語 #40 メキシコ紀行 (後編) 〜La Bikina〜

太陽のピラミッドとはよく言ったもので、頂上の「天に近い場所」で両手を広げると「宇宙」にちょっぴり近くなったような気持ちになる。 それは言うならば「無」の境地。 「自然」と一体になったような不思議な感覚。周りで記念撮影する人たちの賑わいが消えて「風の音」だけが自分の耳に聞こえる。さっきまでここで27年前の僕が「写ルンです!」で撮影していた気がする。 同じようなピラミッドの縁で同じように足を震わせ同じように地上を覗き込み、緑と青と茶の色のメキシコの自然を目に写し込んだ。もう

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ブルックリン物語 #39 メキシコ紀行(前編)〜Easy Living〜

モレという料理がある。メキシコでは一般的にソースという意味。ブルックリンの僕が住む地区にあるメキシコレストランでは「モレ!」とオーダーをすると「煮込んだチキンと豆とご飯の盛り合わせ」が出る。チキンにはたっぷりカカオを溶いたソースがかかって。これには様々なスパイスが入っていて一見キッチュなようで実は深くて神秘的、どこか懐かしい味だ。 アミーゴSenriがメキシコでコンサートをやることになったのには理由がある。榎本植民団と言われる移民たちが明治時代に夢とロマンを求めて南メキシコ

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