【前置詞】by その①
英語学習者にとって、前置詞の理解は一つの大きな壁だと思います。
前置詞を使いこなすためには、文脈はもちろん、前置詞それ自身が持つ単語としての本質的な「意味」や「空間的なニュアンス」の理解が必要だったりします。
このあたりが難しいので、熟語として暗記するしかなくなります。
これは、英語の楽しさからはかけ離れた勉強法です。
という中、受動態を習うときに出会う「by」という単語。
be動詞 + 過去分詞 + by ~
受動態の文法の中で、「~で」「~によって」
と機械的に覚えられることから、おそらく初めて、明快で使いやすい前置詞に出会った感覚を持つ方も多いかと思います。
しかし、「~で」はつねにbyを使うとは限りません。
例えば、
「そのウィルスは顕微鏡で観察されました」
を英語で書く時、
The virus was observed by a microscope.
というようにbyを使うことはできない、と考えられます。
byが使えるのは、次の2つの場合であることを覚えておいてください。
1)動作の行為者であること
2)運輸・運送、伝達の「手段」として
先ほどの例文は、顕微鏡自体に手があって、目があって、自らが観察をしているような風景が思いうかばれます。
microscopeは、「手段」とも言えますが、運輸・運送、伝達には当てはまらず、行為者が使用している「道具」と解釈できますので、その場合は、
The virus was observed with a microscope.
というように「with」を使うのが適切と考えられます。
あるいは、「顕微鏡を通して」というニュアンスで、
through a microscope
これもありだと思います。
行為者(動作主)を含めて書く場合は、
The virus was observed by him with(through) a microscope.
これがきれいな形だと思います。
似たような例で、
written with a pen.
とういうように、ペンも書くための「道具」と解釈されます。
では、
「タイプライター(パソコンでも結構です)で書かれた」
このケースはどうなると思いますか?
written with a typewriter.
でしょうか?
実は、
written on a typewriter.
が適切と考えられます。
この場合、タイプライターは単なる「道具」というより、人が入力したものを加工して出力する「プラットフォーム」のようなものと解釈されます。
この場合、「on(~上で)」となります。
パソコンやパソコンのソフトで書く場合も同じです。
ここでふと思いましたのは、「AI」です。
パソコンのソフトやタイプライターと同じく、「AIを使って書いた」というニュアンスであれば、
・on AI
「AIに書かせた」、というような場合は、
・by AI
前者は、ある程度サポート的にAIを使用したように感じますし、
後者は、AIにお題を与えて、自動的に文章を生成させたように感じます。
今の時代、by AI も十分にあり得ると思います。
ここでお伝えしたいのは、「この名詞の場合は、こう」というような表面的なルールがあるわけではないということです。
文脈や、伝えたい背景によって英語にも自由度があります。
ちなみに、
on には、「~について」という意味もありますので、
written on AI.
「AIについて書かれた」のか、「AIを使って書かれた」のかは、しっかり文脈で判断してください。
最後に繰り返しお伝えしたいのが、
今回の内容、ややこしい、使い分けが難しいと思われたかもしれませんが、英会話は別です。
もし、
observed by a microscope.
と、とっさに言ってしまったとしても大丈夫です。
言いたいことはわかってくれます。
「なんだお前の家には、自動で観察する顕微鏡ロボットがいるのか?」
なんて思われません。
コミュニケーションにおいて、文法マウントをとってはいけません。