認知症介護を乗り切るいちばんの方法
1.認知症セミナーでの出来事
10月にイオンモール品川シーサイド店で『認知症コミュニケーション』のセミナーを行いました。セミナーの後にグループ相談会をしている途中、40代くらいの女性が急にポロポロと涙をこぼされたことがありました。
それは、親の介護をすべて背負わなくていい、介護はできる範囲でいい、自分の家庭や仕事を優先しなければならないという話をしていたときでした。ほとんど発言しない女性でしたが、相当しんどい状況だったのだろうなぁと思いました。
9月に介護コミュニケーションのセミナーを行なったときも、同じようなことがありました。なぜ日本の介護は、”介護する人”にこれほど厳しい状況になってしまったのか。私たちWellnessナースは、介護する人の心を守ることを最優先にしてもらいたくて、セミナーや相談会を毎月開催しています。
2.認知症の動画投稿
最近YouTubeで認知症の動画投稿を観るようになりました。見始めた頃は、介護する人がどれほど大変な思いをしているか…という内容のものが多かったです。少し驚きましたが、コメントには共感する言葉がたくさん並び、発信している人だけでなく、同じように介護している人にとっても、勇気になっているのを感じました。
そして最近よく見るようになったのは、進行した認知症の親の動画投稿です。介護している家族がさまざまな場面で苦労をされているのは変わりありませんが、主旨がやや変化してきたように思います。ちょっとクスっと笑えるようなやり取りが映し出されているんですね。
たまに感情的になっているシーンが出て来ることもありますが、以前の動画は撮影者たる家族も感情的になっていたのに対し、最近の認知症動画ではご家族はいたって冷静に対応されているのです。すごいなぁと思うのは、観ている人がほっこりするような、(的確な言葉ではないかもしれませんが)ちょっと楽しめるような内容になっているのです。
とはいえ、大変は大変です。コメント欄には「よくこんなに落ち着いて対応していますね」とか「5分毎に呼ばれたら私ならキレちゃうな」というような言葉が並んでいます。中には「可愛い」とか「お茶目です~」というコメントもあります。コミュニケーションの質が上がってきたんだなぁと感じました。
3.否定的なコメント
ところがですね、中には厳しいコメントを書く人がいます。そういうことをしたら可哀想とか、このシーンは良くないとか、親を馬鹿にしているとか、失礼だとか。
もちろん目上の方は尊敬すべきであり、介護実習では必ず敬語を使うように指導されます。ですが敬語を使っていないからといって尊敬していないわけではなく、馴れ馴れしくしているからといって馬鹿にしているわけではありません。親しみを込めて関わることが、介護においてはとくに重要だと思うのです。
ましてや家族なのだから、尊敬する・しないという問題ではないでしょう。24時間続く介護。昼夜なく続く5分毎の徘徊。同じ問いかけが延々と繰り返される日々。介護している人の方がおかしくなってしまいそうな日が365日続くのです。そして終わりが見えないのが介護です。あなたなら、この状況をどのように乗り切りますか?
否定的なコメントをする人は、きっと介護をしていない人ではないかと思いました。もしくは、その人も認知症の親の介護をしていて、とてもじゃないけど笑えない、苦しい状況なのだろうと思います。だからこそ楽しそうな発信が許せないのかもしれません。
撮影されているご本人もご家族も、楽しそうに笑っているのであれば問題ないと私は思うのですが。その後、発信者側の人がそのコメントを気にして、謝罪している記事を見かけてちょっとせつなくなりました。
4.正しさより愛を
私自身も以前は『正義感』の強いタイプでした。命を預かる医療現場だから…というのもありましたが、常に白か黒かハッキリ、ゼロか1かというタイプでした(泣)。「正義感強いよね」とストレートに言われたことも。その頃の私は人間関係上の悩みが多くストレス満載でした。それが何故なのかまったくわかりませんでした。なぜなら私は間違ってない、相手が間違ってると思っていたからです・・
コミュニケーションを学んでわかったのは、正義を振りかざしたところで相手は変わらないし、問題は何も解決しないということでした。いかなる人も”自分の正しさ”に従っているのです。「良い・悪い」「正しい・間違っている」の二元論でものごと捉えている限り、私たちは他者と争い続けねばなりません。そうして相手を傷つけると共に、自分自身をも傷つけて病んでいきます。
介護に必要なのは、正義よりも許すこと。『許容』です。どれだけ器を広げて相手を許容できるかであり、それは『愛』をもっての行為です。認知症の介護は正しい・間違っているという『審判』できることではなく、介護する人の『愛』が試されているのだと思います。認知症コミュニケーションが難しいのは、日本人の私たちが愛を取り戻すため。そのために在宅介護が増えているのだろうと思うのです。。
5.認知症介護を乗り切る方法
どんな人にも個性やキャラがあって、とくに高齢者さんは長く生きている分、それが強くなっているように思います。みんなに愛されるおじいちゃま、おばあちゃまは、ついクスっと笑ってしまうような個性的な人です。とくに認知症は理性の制限が外れているため思ったことをそのまま行動に移して、周囲を驚かせることがあります。
たとえばある夜、深夜に自室の洗面所で、下半身すっぽんぽんで汚れた紙オムツを石鹸で洗っているおばあちゃんがいました。私は後ろ姿を見てギョッとして「どうされたんですか?」と尋ねると、「こんな年になって、そそうをしちゃって。ごめんなさいね~」と申し訳なさそうに謝るのです。もう可愛くて、笑っちゃったことがありました。
介護・医療の専門家である私たちも、実は施設やご自宅にいる認知症のおばあちゃまやおじいちゃまを可愛いと思っています。個性的でキャラが強い人ほど、つい笑ってしまうような面白い出来事がたくさんあります。それを職員同士で共有し、個性を助長していくことで、そのおじいちゃまやおばあちゃまがどんどん愛されキャラになっていきます。
生きているかぎり誰でも愛されたいし、愛されている感覚は明日への喜びにつながります。健康にも影響します。認知症の人を前にして、~でなければならないを連発して怖い顔をしているより、許せる範囲のことは大目に見て笑い話にしてしまう。実はこれが認知症の高齢者さんと健全に過ごす唯一の方法です。
たとえばね、問題行動があったとき「えーーー!」の次に「おもろーい!」と声に出して言ってみてください。なんでもかんでも「おもろーい!」って言ってみるといいです。ほんとに笑える解釈ができますので。そうして認知症の親を大きな愛で包んであげてください。そして愛を込めて周囲にその話をして、笑い合って、ご自身も愛に包まれてほしいなぁと思いますヽ(^。^)ノ
お知らせ
|★||イオンモール品川シーサイド店
健康家族&シニアケアMySCUEにて
9月「親にイライラしない介護コミュニケーション」
10月「あれ?認知症?と思ったときの5つのケア」
11月「更年期のこころと体の変化」
セミナー&相談会を行いました。
|★||12月15日(日)は「親の看取りの心構え」
セミナー&相談会を行います
10時~ 13時~ 15時~ ご自由に参加できます
担当:せのようこ
イオンモール品川店のセミナーは予約もできます
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