クレバーの意味。
世の中には、要領の良い人と悪い人がいる。
私は要領が悪い。そして、自分が気を遣ってやったことに対して「要領が悪い」と言われることが大嫌いだ。(棚上げ)
就職した会社は仲間意識が強く、終業後の飲み会が多かった。しかしメンバーは楽しい人ばかりで、誘われたら嬉しかった。
それでもたまには早く帰ってゆっくりしたい日もあったのだが、1人暮らしだった私は先輩方の誘いをうまく断れなかった。学生時代に上下関係の厳しいクラブに所属していたことも関係するのかもしれない。
さらに就職したばかりはお金がなくて、給料日前は1日150円で過ごさなければならなかったので、そういう時は正直に断っていた。
そんな私にも、3年後に後輩ができた。
美しく、カリスマ性もあったので、私が散々怒鳴られてきたようなことがあっても、滅多に叱責を受けることがなかった。
もちろん仕事もできた。
上記だけで十分嫉妬に値するが、私にはさらにモヤモヤすることがあった。
そう、それは飲み会を断ることだった。
私も疲れているから今日は行きたくない。でも、私が断ることは許されない空気。何これ。
我慢できなくなった私は、社外の友人に打ち明けた。それを聞いた彼の言葉は忘れもしない。
「それは彼女がクレバーなだけ」
私は、「は??」であった。なぜに彼女が賢いという結論になるんだ?気とお金を遣ってるのは私なんですけど?お前も断ればいい?それができないし、空気を読んでるからモヤモヤしてるんだよ。なんで人によって許されることがある?
無言になった私の一瞬の炎を感じたのか、彼はすぐさま
「クレバーには、狡猾なっていう意味もあるんだよ」
とフォローしてきた。単純な私の炎は、また一瞬で消火された。
「そうなんだ」
誰かに言ってほしかった。自分の周りでは、私なんかよりもずっと認められている後輩。私だって、できないなりにバカ正直に頑張っている。
文字にすると一層みじめだな。
その後、後輩はとてもいい子だったので、仲良くなり、長く一緒に働いた。
びっくりするほど昔のことを根に持っている私。今日、あの話は本当だったのかな?と思い、クレバーの意味をやっと調べてみたのでした。
彼は嘘をついていなかった。
彼と後輩はやっぱり、私をうまく転がす賢い人であった。