そのたびにダヤンを確認する
ちょうど中学生の頃、猫のダヤンが流行っていました。
近所の雑貨屋さんには、「わちふぃーるど」のコーナーがあって、そのお店に行くたびに商品を見て楽しんでいたのです。
当時の私たちにとって、少し高価なダヤンの雑貨は女子生徒の憧れでした。
交換日記もはやっていて、ひとりで何個もグループに入るから、「今日3冊もまわってきたよー!どうしよう」と言っている人もいたと思います。
私も交換日記大好きで、小学生の頃から7年続けた子もいたし、中学の3年間続けた子もいました。その交換日記をしていた相手のひとりがマッキーでした。
小学生の頃から知っていたけど、中学に上がったら急に仲良くなり、私にとても良くしてくれました。交換日記もあるのに、授業中には手紙が何度もまわってくるのです。男子に「また?」と言われながら。笑
誕生日にはプレゼントを渡し合いました。ある年、マッキーがダヤンのハンカチをくれました。
それは、ネイビーに白くダヤンがプリントされた、光沢のある素敵なものでした。私は本当に嬉しくて、「すごい!ダヤンや。いいの?ありがとう」と何度もお礼を言ったと思います。
中学を卒業するとき、10冊くらいはたまっていたマッキーとの交換日記。
私は卒業式のあとでマッキーに話しかけました。
「このノートどうする?半分こする?」
「ううん、全部青ちゃんが持ってて」
「・・・うん、わかった」
私が少し答えに詰まったのは泣きそうになったからです。
卒業式の最中は、隣で友達がポロポロ泣いていても実感がわかなくて、ぼんやりと歌ったりしていたのに、マッキーとの日記が終わったんだと思ったら、ちょっとよくわからない涙がこみ上げたのです。
マッキーが冷たいと思ったわけではありません。彼女はいつもと変わらない笑顔でした。「元気でね」と別れました。
高校が違ったので、マッキーとはそれっきりです。
何年か後に、就職して結婚したと聞きました。
ある日、駅のホームで遠目にマッキーをみかけました。
そこには髪の毛を短く切った、大人の女性がいました。
私は、確かに同級生だった友人を見て、自分よりもずっと先の世界を生きている気がして、話しかけることはできませんでした。
あのときみたいには話せないかもしれない。
自分も結婚して出産するころ、会社をやめました。
もうこんなに使わないからと古いハンカチは整理しました。
マッキーがくれたダヤンのハンカチは、ネイビーが少し濃いめの青くらいになり、白いダヤンはプリント割れしながらもそこにいます。
何十年経った今も、現役です。
もしも、どこかでマッキーに会って何も話すことがなくて「あのときのダヤンのハンカチ使ってる」って言ってみても、きっと「???」だろうなー。笑
何十年も前にもらった、中学生のときのハンカチを使い続けているなんて、ひいちゃうかもしれないな。
でも、使うときはダヤンがいるかどうか確認するし、まだそこにいてほしいなと思っています。
それにしても、交換日記は時代だわー。
楽しかったな。