幻想郷吟行記録 #1
氷面鏡地に足つけぬ女童かな
私はどこに来てしまったのかを見失っていた。
いつも通りの帰路を行っていたと思えば、いつの間にか辺りが霧に包まれていた。
寒い。一つ、身震いをする。
立冬を過ぎて厚手のコートまで引っ張りだしたばかりだというのに、ここまで冷え込むはずがない。
一体ここはどこなのか。
不安に駆られる気持ちからか、心臓ごと凍えてしまう感覚すら覚えた。
ふと正面を見据えると、そこには静かな湖面があった。
立ち込める霧の濃さを意に介さないほど、ある一点に目を奪われる。
少女が湖面に立っている。
見えるのはほとんどシルエットだけだが、明らかに子供の身の丈である。
腰から裾までふわりと広がるようなスカートがよく確認できた。
不思議に思い、声をかけようとして思い留まる。
霧が少しずつ風によって流されていく。
少女は氷の上に立っていた。
湖は、まるで彼女を取り囲んでいるかのように凍り付いていた。
東方projectの二次創作です。
これから不定期で書いていこうと思っています。
いわゆる幻想入りを趣向とした作品ですが、句作メインになります。
氷面鏡(ひもかがみ)。冬の季語。読んで字のごとく、氷の面が鏡のように反射している状態を言います。