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オルタナティブ試考<外伝>

◼️オルタナティブって何?を考えてみる

今回はオルタナティブ試考と銘打って、オルタナティブ=代替性についてコネてみます。

<シーズン2:親のファシズム・子のアナキズム>はまだまだ続きそうであり、かつ、マニアックさが増してきております。もう、誰もついてこれてないのではないかと危惧しておりますが、このnoteで展開している<Whole parents>は個人的なヨタ研究ですので、書いている本人のスケッチブックだと思うと、ますますマニアックに行く所存でございます。

とはいえ、たまに一呼吸入れたい気持ちもあります。今回は一息のためのお話。オルタナティブってなんだろう?を押し込んでみようと思います。
 生活思創は、日々の過ぎゆく生活に別の視点を与えるのが役割です。日々過ぎゆくものに竿をさすわけですから、流されない工夫が必要となります。そのための視点が「メインストリーム=現状」に対して「オルタナティブ=埋もれている可能性」を見えるようにすることだと捉えております。

これは生活思創のベースとなるものなのですが、不登校の話にしても、今回の家族の政治学にしてもメインストリームに対して、一旦、引いてものを眺めてみる必要があります。なぜなら、今、どっぷり使っている流れに気がつけない自分がいるからです。そこで、少しでもハッとさせるためにはやや刺激物になるもの、つまり、オルタナティブが必要になると考えます。試考のスタイルです。
 
となると、自分が使っているメインストリームに自覚的にならねば始まりません。ここでのメインストリーム(主流派、多くの人々の共通して現れる社会・文化・生活に関する信念と行動規範)とは、「私」を取り巻く人との関係が作る環境と思ってください。


図表38

図表38:環境の要素があって、まずは自分が含まれている環境にいる集団としての人々があります。そこを集合とします。集合は人々の信念や行動規範によって、大きく括れそうな共通の行動特性、パターンが見て取れます。量的な差が大きいのですが、人数的に主流となる人々がマジョリティで大きいい順に並べることができます。(もちろん観察できたらの話)そうなると、今度は少数派もできてきます。小さい順に並べてみて、グループとしてカウントできそうな規模になったらマイノリティーです。ですから、個人は単体ではマイノリティに入らない区分も存在します。中央図のマトリューシュカ的な入れ子の◯は最終的には最小単位の個人なので、どんな社会にも掬い取ることのできない個人がいます。ここも重要な話です。しかし、オルタナティブを扱える単位としては、やはり、あるグループ単位になっているマイノリティとなります。マイノリティでさえ、その下部にもマイノリティの概念があるのですが、今日は記述で止めておきましょう。
 本当はね、マイノリティも、もちろん、マジョリティーも幻想なんすけどね。幻想同士の戦いは、次から次へとマイノリティーが現れるので、常に果てないのだった・・・。
 さて、マジョリティができると、ここは初めてメインストリームが現れます。マジョリティ≠メインストリームであることに留意してください。
 所属の集団に自覚的になる、「私は・・・グループ」とポロッと言った瞬間に、マジョリティーの枠の中にメインストリームが感覚として現れます。集合の枠に「私」という意識が入ったら最後、アーラ不思議、マジョリティーの中に、みんなが進むベクトルが見えてきます。国、企業、推し、LGBT・・・どんな集合の中にも「私」さえあれば、自分が従っている集団圧に気づけます。圧力とはグループがメンバーに対して要求し合う諸条件であり、ここまでならメンバー、ここまでこれないならメンバー外みたいなレベル感です。典型的な人物像が想定できたら、そこにメインストリームは浮かび上がってきます
 「私」がマジョリティの一員なのか、外側にいるマイノリティの1人なのかは関係ないです。何もないところに、境界線を引いて二分した「私」を意識してしまったことが重要なのです。

 そして、メインストリームは、マジョリティの枠内の人々が「私」に自覚的になった時にできるのです。特質としては、メインストリームはベクトル(方向性)平均像(中心)を持ちます。ベクトルとはマジョリティを束ねる信念であり、メンバーが参照する行動規範なので、「望ましい方向はこっち」みたいな方向性があります。また、同時に平均像ができます。「典型的なメンバーはこんな感じ」みたいなイメージです。モデルが登場するのです。

 会社があって、組織のピラミッドの一員としての社員であることに自覚的になると、メインストリームが立ち上がります。出世ルートですね。政治家も、党の一員としてマジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)に自覚的になった時にマジョリティの中に派閥(メンストリーム志望)ができます。きっと、子供の学校の教室にもあるのでしょう。スクールカーストなんかも、マジョリティのメインストリーム化のように見えます。

図表38ー再掲

小生が関心の高い、子供の不登校と学校の関係も同様です。「マジョリティ=義務」、を前提で学校を組んでますから、マイノリティの存在を否定的にみています。最近は、風向きが変わってきたけど、マイノリティーへと溢れていくマジョリティーをあの手この手でメインストリームに取り込むことが前提で運営されています。すると、「メインストリーム=学校カリキュラムに沿った学習」は、ますますマイノリティと軋轢を生み、耐えきれない人々は不登校になります。
 まあ、オルタナティブ教育というのが存在するのですが、このオルタナティブにもレベル差があって、マイノリティまでカバーするかどうかは別の話になっています。ここがオルタナティブ試考のポイントでもあるんだけど。


・メンインストリームの特徴


1)中心がある=平均像の存在
2)方向がある=圧のかかる望ましい像の存在


つまり、2つの架空の存在が特徴になっていて、メンバーを束ねるための「メインストリームを感じてしまう」幻想基盤ができています。勝手にできちゃうんですよ。「子供はこうあるべきらしい」、「この会社の社員なら、こうしなければいけないらしい」、もっと拡張すると「日本人は、こうするらしい」ですね。それぞれのピアプレッシャー(同調圧力)が生まれていきます。メインストリームを意識すればすることで自主的に感じてしまうのがピアプレッシャーです。環境的な背景は、主に以下の3つ。

<ピアプレッシャー(同調圧力)>
社会的規範:すでにある振る舞いの踏襲。つまり、今までしているものをとりあえず従っておくという態度。

情報の不確かさ:メインストリームは情報が断片的だからこそ、まずはこれでよしと言える。他が間違っていると言っても、反対する情報が乏しい

社会的比較:周囲との比較のしやすさ。よく目に入るので違いを指摘し合いやすい。マジョリティ内であれば頻度の高さが体感される

メインストリームは上記の3要素のうち、特に二番目の「情報の不確かさ」を支えます。これって、鳥の群れの構成要素と似てますね。鳥が群れを作るときのシンプルなルールです。これも主に以下の3つです。情報が少なくても大丈夫になってます。

<鳥の群れ>
1. 近隣の個体との距離を飛ぶ: 個の鳥は、周囲の他の鳥と一定の距離を飛ぶ。

2. 近隣の個体の動きに合わせる: 鳥は、周囲の鳥の動きに合わせて自分の動きを調整する。このため、一つの個体の動きに他の鳥たちに影響を与え、連携した取り組み起こります。

3. 集まり全体の中心を維持する: 鳥の集まりは、個々の鳥が集まり全体の中心に向かうような行動をすることで、全体が安定した形をとります。


◼️オルタナティブの主要展開

 今回のお題はオルタナティブです。メインストリームはオルタナティブを生み出す前提です。ここからは実用編になります。
 もし、あなたがある枠組みの中でのメインストリームに意義や違和感を持ったなら、代案を提案することになります。「反対するなら代案を出せ!」って、組織の中での決め台詞ですけど、オルタナティブは広義の代案でもあります。ただし、オルタナティブにはレベル差があり、かつ、その差が大きいので、どのくらいメインストリームを置き換えるのかは留意しておかないと、現実的な代案だがインパクトなし、理想に走りすぎた妄想で実現性なし、みたいなことが起きます。

で、オルタナティブの幅を考えます。少なくとも幅の違いに対応したパターンが3つあると試考します。図表39と図表40に沿って説明します。図表は集合全体の中にあるマジョリティとメインストリームに対して、オルタナティブの位置関係を明示したものです。方向と中心がレベル差を決めます。

図表39


図表40


・パターンA:メインストリームに対して並行移動したもの
従来のものと相似してますから、インパクトは少ないですが、実現可能性が高いやつです
例えば、教育制度で言うと「AIを取り込んだPCでの自主学習」なんかは、従来のコンテンツに新しい方法論を足したものなので、中心も方向もそのままです。

・パターンB:メインストリームに対して軸回転したもの
多くの人の持っている信念を変えていくものです。全体の方向を変えるものなのでインパクトはあります、ただ、基盤は従来のものですから代替できそうな可能性を感じてもらえます
例えば、教育で言うなら「探究学習」や「STEAM教育」がここに該当します。量的な学習主体から質的な学習主体への転換です。主体の変更ですが、平均像を持っているという点はそのままに、学びの方針は量から質への方角違いを持ったものです

・パターンC:メインストリームを多極拡張で解体していくもの
メインストリームは一つの存在ですが、これに対して、複数のグループに複数の参加を可能にすることを想定します。実質はメインストリームの解体です。マイノリティが存在する基盤を拡張して、マジョリティの人々も求めるメリットを活用できるようにします。
例えば、教育で言うなら、通信教育やフリースクールなど可能な限り多くの学びの場面を教育カリキュラムの代替とみなして、同じ人が自由に組み合わせて選択できる制度のような案です。ここでは平均像は消え、方向もなくなります。

どのオルタナティブで押していくのか? 所属する集合はどの程度の変革まで許容できそうか? この辺りの目配せをすることで、「どのくらい強くオルタナティブを推していけばいいのか?」、むしろ、「いつまでここに所属するのか?」までのヒント(実は人生選択の覚悟)になります。

 ※不登校の話のブログなので、教育の事例押しできましたが、企業の新規事業開発の時の新しさレベルを測るフレームの適用(アダプティングってやつね)です。


<小ネタ:はじめ>
せっかくなのでマーケティング・リサーチとオルタナティブ策定の関係について触れておきます。市場調査で消費者の意識・行動のマス・サーベイをした時、既存市場が安定しているとメインストリームでの人々の特徴(でもグラフィック・意識・行動など)が特定できます。この時、オルタナティブは集計方法を変えることで、比較的容易にその仮説を見つけることができます。
 メインストリームには主軸となる相関の強い軸があります。例えば、ある市場では年齢の高さと利用の頻度に強い相関があるとします。これがメインストリームを説明する一つだった場合です。

 この時、リサーチの分析を拡張して、メインストリームでは説明がつかない層「年齢が低いのに、頻度が高い」「年齢が高いのに、頻度が低い」の2つをもってきて、その中に流れているかもしれないメインストリーム(小さなメインストリーム仮説)を探ります。ただし、ここからは定性調査が必要です。質問紙に書かれてない要素に、何か潮流らしきものを探しにいくからですね。

 例えば、その先に半業務的な活動をしていて利用頻度が高いとか、頻度が少なくても季節的に必要な周期性のある生活があるとか。こういったマイノリティの中のメインストリーム、メインストリームで切り落としたマジョリティから、集合全体の構造の再考をすると、別の仮説群が現れたりするのです。ここまでのリサーチの仕事は基本ルーチンです。小生もリサーチ実務で先輩や外部のプロの方々に教えてもらったものですから、だれでも活用できる小ネタでした。「リサーチは二次、三次が大切なのだ」(伝承)
<小ネタ:おわり>


次回は、Get back on the track.


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