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パートナー・プロデュース(α版)<その5>個人ブランディングを夫婦に拡張する

◼️手持ちの「個人ブランディング」ツールを夫婦にも適用できるか?

シーズン3「パートナー・プロデュース」の5回目です。今回は「生きがい」「はりあい」の2つをペア生活の中で扱う時に、何かツールはあるかな?という話です。ええ、確かにツールとかいらんかもしれません。ここでのペアって夫婦を想定してますから、「地雷の多い夫婦の会話をこれ以上捏ね回すな!」、そんな戦慄してしまう反応もあるでしょう。

α版とは「個人の落書き」を「さもありなん」調で書きますよ、というぐらいの意味ですから、その辺りを勘案しながら穏やかに眺めていただければ幸いです。

まずは、今回のお題の背景説明から。大きくは2つあります。

・<手持ち未発表原稿>
noteのトップ固定記事にもありますように、2023年2月に「新版ブランディングの基本」という大改訂版(本人的には全面書き直し)を出させていただきました。執筆した原稿が多すぎて、本番で割愛された章立てがあります。「個人ブランディング」という章でして、ページ的には70ページ、チャート的には15枚が積み残されました。人生至る所で積み残しだらけだな。いくらかでも使えたらと、ずっと思ってきたわけですな。

本当はこの新版の中に掲載されるはずだった

・<夫婦の相補性>
もう一つ狙いがあって、「生きがい」と「はりあい」の関係をもっとクリアに見えるようになるといいなと感じておりました。「生きがい」は対象となる事象があります。一方の「はりあい」は対象となる人間関係があります。チャレンジとサポートの話にもつながるのですが、ペアが役割を交換しながら、N極とS極の磁極が入れ替わって引き合うような見立てはありそう。あなたが「生きがい」追求の時には、私は「はりあい」を稼働させて見守る。交代交代みたいな。 個人は単位1、集団は単位2以上。なので、2人単位の夫婦は最小単位の集団とみなせます。もし、個人2つで集団1つの相補性が「生きがい」と「はりあい」だとしたら、一体、どう見えるのかに興味があるのです。


◼️ベースとなるチャートを紹介します

「新版ブランディングの基本」は全ての章で共通のフレームワークを活用する形式になっています。とはいえ、ブランディング1セットに7フレームワークまであります。今回はその中でもキモのフレームになるブランド・ストーリーのフレームワークをベースにします。細部はあまり気にしなくても話は通じるように展開しますので、絵柄の雰囲気だけを読み取ってください。

図表77

価値ラダーとは、価値の交換を提供者と対象者に分けて、順を追って、意味を明文化したものです。図表77は事例として、個人事務所である小生の「ヤスハラ・トモキ」を分解したものです。

以下、4ボックス❶から❹までの解説
言い回しが固いのは、ビジネス書仕様だからです。かったるさを感じたらスキップしてください。



❶提供者の志
フリーランスや副業といった個人での仕事では、あまり気にしてない部分ですが、ブランドのコア・コンセプトを世に訴えようとしていますから、それなりに意志はあるはずです。そもそも個人でリスクをとって自分の旗を掲げるには勇気が必要でしょう。そのエネルギーを言語化します。「もっと面白く仕事をしたい」がぐらいの軽めの抽象的な志も、「湧き上がる好奇心に妥協しないで働く」とか「気持ちよく仕事をすることが真の報酬だ」とか、書き込むことで再定義できます。この時に、独自の価値観になりそうなキーワードが入っていたり、言い回しになっているなら、それはブランド・ストーリーを支えてくれる要素になります。つまり、人に語りたくなる、人が聞きたくなる、に繋がります。ちなみに、個人事業主を企業経営に置き換えると、パーパス(Purpose)に当たります。
 参照事例:ヤスハラの場合は、「全ては部分的に正しく、部分的に間違っているという前提で、多様な意見の矛盾を超える」です。ちょっと思想的ですが、特定の意見に偏ることを良しとしないことに意志を託しています。

 
❷提供者のシーズ

「商品・サービス」ブランディングにあるシーズに近いものです。個人となると、もっと複雑で、いくつものシーズがあるのが普通です。「最新のMBAで学んでいます」、「老舗料亭での料理提供歴が長いです」、「アウトプットが実務に適用できる研修ができます」などなど、資格だったり、経験値だったりするでしょう。もちろん、間違ってはないのですが、対象者から利用する時に納得感を与えられるもの、共感を感じてもらうものに引き伸ばす必要があります。独自性を伝えられる単語が入っているのが理想です。これは「他の人を当たっても見つからなさそうだな」価値観違に価値を感じてもらえるところは何なのか?を考えることでもあります。ただし、独自性を追求すると、専門的になりやすく「よくわからないなあ」という反応になります。明瞭性を失う危険性も持っています。、特に個人は一人で考え抜かねばならず、この独自性と明瞭性のバランスがどこにあるか迷子になることも多々あるでしょう。書いたら身近な人に語ってみて意見を聞くのが早道です。ちなみに、個人事業主を企業経営に置き換えると、ここはバリュー(Value)が最も近いものに当たります。
 参照事例:ヤスハラの場合は、「すべての意見を一旦、正しいとして扱うことで、心理的な安全性をベースとしたファシリテーションのスタイル」としています。
 
 
❸対象者のニーズ
相手へのメリットの話です。マーケティング的な価値訴求ポイントに近く、対象者や企業が買いたくなる「売り」の部分です。これを一言で、キャッチーに言い切るのがマーケティング思考なら、ブランディングは共感を伴った納得に繋げられるように、他の要素(3ボックス)との繋がりを重視します。重なっていますが、絞り方・広げ方がことなるのです。P2Bは企業などの組織単位のニーズを語り、P2Cは人単位のニーズを語ることになります。複数のニーズを満たすため、候補がいくつも出ます。料理研究家が満たすニーズには「料理を極めたい」「料理を簡単にしたい」「新しい料理を紹介してほしい」など多種多様のものが存在します。ここでは優先順位をつけることになります。本業の中でも長期的に一貫性を保て、かつ、独自性を発揮できるにはどのニーズを満たすのがストーリー的に典型的な自分ブランドになるかを考えることになります。この段階では複数案持ったままにして、自分が応えたい相手のニーズに優先順位をつけておきます。業務が進行していくことで、手応えから絞り込みます。
個人事業主を企業経営に置き換えると、ここはミッション(Mission)に当たります。
参照事例:ヤスハラの場合は「自分たちの仕事でのモヤモヤする課題や答えが見えない悩みを、一緒に考え、腑に落ちる納得感ですっきりさせたい」としています。あまりここでの独自性は感じさせませんね。それでも他の要素でオリジナリティを出せれば、対象者に納得と共感のあるブランド・ストーリーになると考えています。
 
 
❹対象者の仕事環境
相手との交換、ここで言うとフリーランスや副業者と対象企業や対象者との交換を通じて、最終的に目指したい世間の姿が入ります。一人の人間が理想の世間を語るのはちょっと高邁すぎて気恥ずかしいところがあります。しかし、一人だからこそストーリーが自由に語れるのです。「最終的にこの仕事を通じて世の中がこんな感じになると、私もあなたもより仕事や生活をしやすい環境になると信じているんですけどね」、そんな話から人々は「本気さ」を嗅ぎ取ってくれます。同時に忘れ難い物語になっていきます。もちろん、SDGsがどうのこうのや、世界を変えていく的な大きな話にまでなると、信じるのは難しくなってくるかもしれません。ストーリー全体のリアリティには留意ながら、理想を言語化しておきます。
これも個人事業主を企業経営に置き換えると、ビジョン(Vision)が相当します。
参照事例:ヤスハラの場合「誰も知らない未知の仕事に取り組むメタ視点の方法を誰もが必要とし、使いこなす世界へ」を掲げています。やや気取っていますが、「未知の課題には未知のやり方が必要じゃないですか?」と、メンバーでの課題解決のワークをファシリテーションする場面でよく口にするので、現場で提示できるリアリティのあるビジョンです。


最後に全体のまとめ

<フリーランス>:「ヤスハラ・トモキ」のブランド・ストーリー

ヤスハラ・トモキ(個人事務所:ヤスハラ・マーケティング・オフィス)は、全ては部分的に正しく、部分的に間違っているという前提で、多様な意見の矛盾を超えるために、すべての意見を一旦、正しいとして、心理的な安全性をベースとしたファシリテーションのスタイルで、コンサルティングをします。それを通じて、自分たちの仕事でのモヤモヤする課題や答えが見えない悩みを、一緒に考え、そして、腑に落ちる納得感を提供します。最終的には、誰も知らない未知の仕事に取り組むメタ視点の方法を誰もが使いこなす世界の実現に貢献しようとしています。

一つの文章にまとめたもの


◼️<転換その1>チャートをビジネス用から個人用に変換します


では、パートナー・プロデュース用に、ボックスの意味合いを転換します。

  先ずは個人用に転換。ついていけなくても大丈夫、語りたいことはフレームワークじゃないので、ビジネス用が家庭用にメタモルフォーゼしていく姿を「ふーん」って眺めててください。

記入されている参照事例は現時点での小生のものです。
人生積み残しを解消する「生きがい」についてのストーリー化です。生活思創もその一つなので、これをヤスハラの第二のブランド・ストーリーとしてみました。 図表78

※ちなみに、第一ブランドはコンサルティング・ビジネスのヤスハラです。


図表78

・テーマ名称:現時点での人生ストーリー
(↑「ブランド・ストーリー」から転換)
左側のまとめのボックスは、現時点で語る「生きがい」についてのストーリーという意味になります。
参照事例:人生の積み残しを解消する安原の第二ブランド

①人生の志(現在)
(↑「提供者の志」からの転換)
人生ストーリーは流転が常態です。なので、人生ストーリーに向き合う時が書き換えのタイミングとなるので、現在の志を描くことになります。
参照事例:生活思創を世に問うてみる

②人生の生きがいシーズ(Seeds)
手持ちの能力(才能や行動スタイルなど)や生活リソース(時間的、経済的、身体的なもの)で、気が晴れるために活用したいオリジナリティ性が高い項目群
参照事例:コンサルティングで培った能力を組み合わせた生活思創の方法論(記号接地・カテゴリー越境・対称性・相補性の統合した活用)

人生の生きがいニーズ(Needs)
環境が欲しているものの中で、自分の生きがいシーズを生かすことで満たせると想定しているもの
参照事例:家庭生活が、人生の生きがいの場、ハイライの場になるような生活思創(見通しの良い生活選択の基準)の提供

④人生の気が済む生活環境
将来、生きがいが成立している時の生活周辺の様子
参照事例:生活思創家なる職業らしきもので、気が済む人生が送れている

まずはこんな感じでしょうか。


◼️<転換その2>パートナー・プロデュース用に2人分を組み合わせる

次に、夫婦でワンセットの見立てにしてみました。図表79 ハシゴっぽかったのを楕円形にしました。夫婦が「生きがい」へチャレンジしていくと、自ずから家庭が円形(円満?・・・昭和表現w)になる隠喩もありますね。


図表79


夫側にも妻側にも「生きがい」のストーリーが4ボックスで成立してます。縦の矢印方向です。ただし、相互に反対向きに並べています。これは単独の個人ワークになります。

図表80

さて、同じチャートに横の矢印で「はりあい」の関係を示してみました。サポートする方向を意味しています。
図表80

・「はりあい」の夫版
夫の人生の志の中に、妻の人生の「気が済む」生活環境が組み込まれることになります。正確には、共通項を見つけるってことですかね

・「はりあい」の妻版
今度は真反対。妻の人生の志の中に、夫の人生の「気が済む」生活環境が組み込まれることになります。


図表81

まずは、小生の家庭の場合を想定し、記号接地してみますね。パートナー・プロデュースとは、それぞれの独立した「生きがい」の追求に対して、「はりあい」を持って相手をサポートすること、という言い方ができます。
 図表81には、志と生活環境の2つの掛け算から、それを「はりあい」に昇華していくためには、どういうことが言えそうかが記入されています。遠く継続的な活動なので消失点と呼称してみました。

妻の「はりあい」の消失点:「気がかり」への取り組みをミニマムにすることがサポートになります。具体的にはお金、健康、人間関係を妻なりの視点で夫の行動が手薄な部分に意識を向けましょう、ってな感じ

夫の「はりあい」の消失点:「気が晴れる」ためには、コミュニティ作っていくことになりそうなので、場所とか運営方法とか拠点が課題になりそうだ。どのようなところに住み続ける、新しく住み替えていくのかといった課題をサポート視点で意識的になりましょう、ってなことは言えそう

まずは、実験的にここまで押し込んでみました。このnoteは生活思創の公開ラボみたいなものなので、全てが実験なのだった。でも、ツールβ版への「見通しの良さ」を感じる(ご家庭からのニーズは全く感じないが・・・)


◼️円形フレームを拡張して試考してみる

 「生きがい」と「はりあい」を同一のフレームで説明できそうなので、パートナー・プロデュースの番地作りに移ります。個人ブランディングから離れて、思いっきりカテゴリー越境したらどんな意味合いを持つか?試考してみます。


図表82

そもそも夫婦は相補性です。陰陽図そのものっす。陰陽の元は男と女ですからね。そこで、陰陽の太極図に「生きがい」と「はりあい」を載せてみたのが図表82です。「生きがい」が縦の力で「はりあい」が横の力と見ると、陰陽の円が回転するイメージも浮かんで来ようというものです。


引き続き拡張します。今度は「気が済む」について思いっきりズームアウトしてみちゃったのが図表83です。

図表83

 「生きがい」と「はりあい」で陰陽関係、つまり、相補性が成立していると考えるなら、もっと遠いところとも繋げてみたらどうなるでしょうか?
 人生の気が済むかどうかの話は生活レベルですが、思いっきり宗教レベルまで視座を引きにしていくと、キリスト教のエロスとアガペー、ヒンドゥー教のアートマンとカルマ、仏教の智慧と慈悲まで、それぞれに細い道が続いてますな。
 細い道とは「一人分の道幅しかない」という意味で使っております。生きがいを追求するにしても、よしんば、悟りにまで行き着けるにしても、孤高の歩みしか許されてないってことですw。

この一連の話は新しいものではありません。「生きがい」、「はりあい」のキーワードは神谷美津子「生きがいについて」からの援用なので、彼女の生い立ちから考えると、そこにはキリスト教のエロスとアガペーの投影があるでしょう。すでに細い道には行き来があったのです。

 小生がここに加えようとしている話とは、細道の拡幅です。この流れで見るなら、きっと家庭は小さな霊場だということ、そして、パートナー・プロデュースとは家庭という小さな霊場で起こりうる祈りの行動ではないか、ということです。


<小ネタ:はじめ>
かなり大昔になりますが、小生は若かりし頃に食品会社でサラリーマンをやっておりました。昭和の後期、バブル前ぐらいの話だったように記憶してます。
 
 当時の会社の大先輩が、大学時代の同期会に行った時の話を聞かされたんですな。同期の中に上級国家公務員のエリートがいたそうで、「俺は仕事で天下国家を語ってるんだ」と語り、暗に他の参加者のポジションを揶揄したと言ってました。まあ、マウントの取り合いの一つなので、言動を額面通りは受け取れませんけど(実際に天下国家語ってるかもどうかも分からんしw)。ただ、ここには、より大きな組織運営にコミットすることが「生きがい」になるという信念が横行していたことが推察されます。

 今になって、この話を思い出すのです。それは「天下国家の前に家庭を語ってほしいな」って、ますます感じるからです。マーケティング・コンサルタントになって20年以上も多くの家庭・家族を眺めてきて、ついに自ら家庭を回す身になってしまっています。そこで問が浮かぶのです。
 集団のミニマム単位(N=2、夫婦、親子)の場で「生きがい」や「はりあい」に向き合えてないのに、どうして、大多数の集団(N=10の何乗、天下国家を含む)のビジョンやら組織理念やらに血を通わすことができるのだろうか? 素朴な疑問だな。

<小ネタ:おわり>


シーズン3「パートナー・プロデュース」は、まだまだ続くのだった。

Go with the flow.


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