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生活空間の思創(8)「生活ルーティンの場」

シーズン6「生活空間の思創」の最終回です。生活って習慣の場でもあります。家族などの参加メンバー全員の生活ルーティンを束ねる空間とも言えます。最終回なので、まとめっぽく生活ルーティンという視点から試考します。


◼️新奇性と親しみやすさ

まずは、今回の試考のきっかけとなった本の紹介から。人に勧められて「「ふつうの暮らし」を美学する」(光文社新書 :青田 麻未)を読みました。サブタイトルに、家から考える日常美学となってましたので、小生が捏ね回している生活空間のヒントになればという思いで読ませていただいたのでした。

 色々と面白いのですが、その中でも「新奇性と親しみやすさ」という項目が提示されて、興味が刺激されました、ふむ。この辺りを生活思創で拡張させてもらったら結構、新たな見通しがありそうかも?。という流れで、押し込んでみます。


娘「なんか、トーチャンはまた『ふつうの暮らし』とかをネタに普通じゃないような話をしようとしてるのだな」

父「バレとるな。生活思創は生活の切り取り方が命だからな」

娘「包丁一本で勝負しとるのかい」

父「おお、そうよ。きゅうりやキャベツも捌き方で食感も変わるだろう」

娘「でも、素材の良さの方が大切じゃないの? 朝取れたきゅうりや、高原のキャベツとか、やっぱ、風味が違います」

父「それは認める。その通りです。包丁だけではなんともならん世界はあるわな。だから、あなたの生活している姿が生活思創の格好の素材となるのです」

娘「あー、私の不登校の話とかね。鮮度感あるネタでしょ、感謝してね」

父「鮮度感だけじゃなくて、歯応えも凄いからな。もう、包丁だって欠けちゃうよ」


「ふつうの暮らしを美学する」で紹介されていた、アルト・ハアパラの新奇性と親しみやすさ(第4章)を援用して、生活空間を拡張してみます。まずは、この新奇性と親しみやすさについて語っている部分を、生成AIで整理してもらいました。

Arto Haapalaは、フィンランドの哲学者であり、彼の美学における主要な概念の一つに「新奇性(novelty)」と「親しみ(familiarity)」があります。これらの概念は、特に環境美学や日常美学において重要な役割を果たします。以下に、それぞれの概念を具体的にわかりやすく説明します。

新奇性(Novelty)

説明: 新奇性とは、何か新しくて目新しいもの、予期しないものに対する魅力や関心を指します。これは、見慣れないものや経験したことがないものに対して感じる驚きや興奮、興味の感情を含みます。

具体的な事例:旅行: 新しい国や文化を訪れることによって、見慣れない風景や習慣を経験する。例えば、初めて訪れる異国の市場でのカラフルな商品や独特の香りに驚きと興奮を覚えること。
アート: 現代アートの展示会で、今まで見たことがないスタイルの作品に出会う。例えば、インスタレーションアートで、部屋全体が作品の一部となっている展示を初めて見るときの感動。


親しみ(Familiarity)

説明: 親しみとは、既に知っているものや慣れ親しんでいるものに対する安心感や快適さを指します。これは、日常的に接しているものや過去に経験したことがあるものに対して感じる落ち着きや愛着の感情を含みます。

具体的な事例:自宅: 長年住んでいる家の居心地の良さや、特定の家具や装飾に対する愛着。例えば、子供の頃から使っているベッドや家族と過ごしたリビングルームの安心感。
音楽: 何度も聴いているお気に入りの曲やアルバムに対する親しみ。例えば、昔から好きなアーティストの音楽を聴くことで感じる安心感や懐かしさ。


まとめ新奇性(Novelty): 新しくて目新しいものに対する魅力や関心。驚きや興奮、興味を引き起こすもの。
例: 新しい国を訪れること、現代アートの展示会での新しい体験。
親しみ(Familiarity): 知っているものや慣れ親しんでいるものに対する安心感や快適さ。落ち着きや愛着を感じるもの。
例: 自宅の居心地の良さ、お気に入りの音楽に対する愛着。


Arto Haapalaは、この二つの概念がどのように我々の美的体験に影響を与えるかを探求しています。新奇性と親しみのバランスが取れた環境やアートは、私たちにとって特に魅力的であり、深い感動や満足感をもたらすとされています。

生成AI

美学の話なので、アートや音楽からの解説が主体になっています。今回は、これを生活の場へ適用してみます。

やや、マニアックな図解な話になります。
 
新奇性と親しみやすさが相補関係だとして、それを拡張したいので、もう一つの相補性を持ってきましょう。外的と内的の相補な組み合わせはどうかな。個人からは家族は外的な存在ですが、メンバーとして個人の人生と折り合いをつける部分は内的です。これを新奇性と親しみやすさと共に二軸を設定してみました。

※多重共線性を最小にするものを選びますよ。(マニアックな備忘録w)

図表282



◼️生活ルーティンを分類してみる

さて、ここから生活思創を語りたいのだが、もう少し前提を膨らまします。追加のヒントも「ふつうの暮らしを美学する」からもらいます。この本ではルーティンという言葉を暮らしの視点で語っています(第5章)。ルーティンは「一定の頻度で繰り返して行われる行為のことを指します」(P237)とあり、この展開の先にブオラッカのルーティン区分というのが紹介されていますので、この辺りを引用させてもらいましょう。

ブオラッカのルーティン区分

1)生命維持のためのルーティン
2)社会生活を営むためのルーティン
3)最小限の複利のためのルーティン
4)仕事に関わるルーティン
5)趣味に関わるルーティン

「ふつうの暮らしを美学する」(青田麻未)


 これだと家庭を起点の場にしたルーティン以外も入ってきちゃうので、かなり広い一般的なルーティンになりますね。そこで、生活思創で扱えるように「ルーティン一般」から「生活ルーティン」を区別して、家庭内でのルーティンに焦点を絞ります。

 生活ルーティンは行動のリズム感と態度の質感の観点から、以下のような感じに小生が再設定しました。
 新奇性は「慣れ」によって、親しみやすさに進もうとします。一方で、親しみやすさは「成長」(または「退屈))によって、新奇性に進もうとします。ルーティンは行動様式なので、常に環境の中に現れるのが先です。図で言うなら、左上ね。そこから内的な精神へと入ってくと試考します。よって、4つの時計方向の矢印関係が想定できます。

図表283

大きな生活ルーティン:強い新奇性
ライフステージの変化(結婚、子供、転職など)は単発ではルーティンとは言えませんが、人生スケールでそれなりのリズムを持って繰り返されます。ただし、過去の体験や知識がリセットされるのでもっとも生活インパクトのある現象です。でも「次は・・・だろう」とか「そういうライフイベントがあるのが人生」という認識は誰もが持っています。体感したことはないけど、リズムに乗っていく必要を感じているので、これを大きな生活ルーティンとします。

❷細かい生活ルーティン:たくさんの親しみやすさ
家庭運営の効率化は、家庭での家族行動をルーティンにするものです。最もルーティンぽいので、狭義の生活ルーティンとも言えます。起床時間や、朝のルーティンや、家事全般のルーティンや、週末の過ごし方も入るかもしれません。それぞれの行動が暗黙のうちに自動的になされますから、いちいち「次は何するの?、どうやるの?」がスキップされてます。すこぶる家庭内での時間や作業の効率は良いと言えます。
 その分、全く新しいライフステージが入ってくると、これらの細かい生活ルーティンは見直しになることが多々あります。もっと早く起きることをルーティンにする、家事の分担内容を変える必要が出てくる、といったことになると、ルーティン化するまでの試行錯誤と慣れが必要です。一時的とは言え、身体的にも精神的にも負荷がかかります。

❸深い生活ルーティン:深い親しみ
心的リソース効率が高ければ、それぞれの生活ルーティンは「喜んで」行われることになります。学校に子供が元気よく通う、パートナーの仕事には人生がかかっている、などメンバーの生活背景への理解や共感がある時、やらされ仕事のルーティンがサポートを確信したルーティンに変わります。
 もちろん、そこには家族メンバー間の理解し合える能力(子供の年齢も含め)も必要ですし、分かりあうためのコミュニケーション時間も十分に割かれていなければなりません。

❹長い生活ルーティン:ゆっくりとした新奇性
人生信念が変化するというのはルーティンとは言えないかもしれません。でも、生活というものが一生継続するものなら、人生の信念が変わっていくのも人間としての定期的な活動のはずです。かなり長期的な視点に立てば、人生信念が変容することも生活ルーティンに並べることができるのではないでしょうか。「良い学校に行くことが良い人生に貢献する」と刷り込まれていた大人が、不登校の子どもに向き合う生活を長く続けていくことで「今の学びが楽しいかどうかが全て」といった変容を起こす。これは特殊なことではなく、家族のライフステージの変化とともに、必然的に起こるものと見ることができるのです。ライフステージが変わることも生活ルーティンなら、人生信念が変容していくことも生活ルーティンに区分できるわけです。


◼️具体的な事例に落としてみる

二軸と4区分の中に、具体的な事例を入れてみました。生活思創的には記号接地を高める作業です。

 全ての起点は左上の、ライフステージの変化からにしてます。ライフステージの変化は、家族の生活変化がクリアなイベントなので、生活ルーティンの確立と変更が最も説明しやすいからです。もちろん、実際の生活ルーティンの起点は4区分のどこでもOKです。


図表284


 事例には「子供の進学」「親の転職」「家族での引越し」「メンバー誰かの怪我や病気」を入れてみました。これは外的変容であり、インパクトのある新奇性が家族に訪れたことになります。まずは、これらに親しもうとすることで、新しい現象に対する生活ルーティンを組み立てようとするわけです。この時、家族全員が同期する必要があります。「同期する」の意味ですけど、ちょっと調子が変わったリズムに、もう一度、新たな調子を取っていくってことですな。

 新たな生活ルーティンは物理的な理由で始まります。「なぜ、このような生活習慣になるの?」の奥底にはお互いの共感と理解が求められます。他者への共感と理解が深まっていく工程って、最も家族の絆らしきものを感じる部分になります。心的な変化は、見えない生活ルーティンなのです。 結局、私たちはこうやって普段の生活から他者への共感や理解の習慣を身につけていくのでしょう。
 
 そして、家庭内という原初的な人間関係から発生する「新奇性と親しみやすさの波」は、学び続けることや、働き方や、別の地域に住むことや、思いもかけない病とその治療に時間を割くことに対して、メタ視点を醸成します。もちろん、メタ視点の取得には時間が長くかかります。発達心理学では、意識の変容には最低でも5年くらいはかかると言われています。それでも、もし遠くから自分を含めた家族の人生を眺めることができるなら、メタ視点自体も周期的に変化する長期的な生活ルーティンです。


まとめてみると図表285にように表現できると試考します。

図表285


❶大きな生活ルーティンは、心身的な人生変容
❷細かい生活ルーティンは、身体的な生活変容
❸深い生活ルーティンは、精神的な生活変容
❹長い生活ルーティンは、精神的な人生変容

つまり、日々の生活ルーティンは人生そのものってことだな。


◼️もう一度、新奇性と親しみやすさに戻って眺め直す

4区分は均等に見えるけど、実際には外的な部分のライフステージの変化と、家庭運営効率化だけで回してることが多いように思える。信念の変更までいかず、世間の作ったライフステージという名の「多くの人々がやっているから」とか、「あなたも、そうやるのが良いはず」で生活ルーティンを回してしまっている感じ。

図表286

 上記図にある「一般化された新奇性と親しみやすさ」は、周囲からの情報収集で対応できる気がするし、誰もがそうやっているなら我慢できそうになるのだ。つまり、図286左側2つの外側だけの生活ルーティンでも、表面的にはOKなのです。でもです。もし、4区分全てを生活ルーティンだと思って、家族全員が意識を傾注する習慣を持つなら、きっとずいぶん異なった家族になるだろうな。

 家族の誰かが病や怪我で長期療養することだって、家族全員が人生のメタ視点を取得するきっかけになるはずなのだ。小生も長く生きていると、シリアスな病気を抱える家族がやけに明るく、生き生きしているという人たちに遭遇することがあります。そんな時、この爽やかな明るさってどこからくるのか訝しく思うこともありました。きっとそこには、深い生活ルーティンと長い生活ルーティンへの意識があるからなのだろう、という説明もできるかもしれない。


父「不登校がきっかけになって、あなたを図書館に毎週連れていく習慣とかができたけど、これも生活ルーティンといえそうだね」

娘「ちょっと図書館に行かない日が続くと、なんかストレス感じるもん」

父「トーチャンは、あなたが家でたくさんの借りた本を貪るように読む姿を見て、『学びって何かな』って考え直すようになったよ」

娘「そう!、学校の勉強は学びじゃないんだ」

父「そこまでは言わないけどさ、テストとセットの学びとは距離を置いた方が良さそうだとは思うようになりました」

娘「とても良い回答だと思います。100点!」


これでシーズン6「生活空間の思創」も区切りにします。家庭のイベントが盛りだくさんなので、ラボも間引き運転だけど、まあ、ダラダラやらせていただきます。夏休みに突入すると、在宅の子どもたちに合わせた生活ルーティンが求められるからなーw

Go with the flow.


 

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