政策活動費の廃止法案の成立 (変えよう選挙制度!市民の会: 田中久雄)
(1) 法律の内容
「政策活動費」の廃止など政治改革関連3 法案が昨年12月24日に成立しました。
3法案とは、「政治資金規正法一部改正案」、「政治資金規正法等一部改正案」、「政治資金監視委員会等の設置その他の政治資金の透明性を確保するための措置等に関する法案」のことです。
なぜ、一つの法案ではなく、同じような法案がいくつも提出されたかの理由は、各政党がそれぞれ異なる法案を提出したためで、それらが最終的には各党合意の下に、それぞれの修正案が成立した経緯があったからです。
3つの法案の主な改革内容は、次の通りです。
〇 政策活動費の廃止
・全面廃止
〇 第三者機関の設置
・国会に政治資金監視委員会を設置
・両院合同協議会の推薦により委員長・委員を決める。
・任務は国会議員関係政治団体の収支報告書の正確性の監視や政治資金制
度の提言等
〇 外国人のパーティー券の購入禁止
・外国人、外国法人等による寄附の禁止規定に加え、パーティー券購入も
禁止
〇 収支報告書のデジタル化
・政党本部、政治資金団体の収支報告書のオンライン提出の義務化とネッ
トによる公表
・国会議員関係政治団体の収支報告書もネットを通じて公表(個人寄附者
等は除く)
(2) 政策活動費とは何でしょうか
法律上の定義はありませんが、一般的に国会議員本人が政治活動のために支出し、使途を報告する義務がないものを指します
2022年では、朝日新聞の調べでは、政党から政治家本人に渡った政治資金は、1年間で約16億円4千万円に上ったと言われています。最多は、当時の自民党の茂木充幹幹事長で、党から9億7000万円を受領したと報道されています。
なお、選挙期間中の選挙運動に関しては、政治家個人へ政党から寄附された場合には、政治家個人でも選挙運動収支報告書に記載しなければなりません。
(3) 政策活動費のどこが問題だったのでしょうか
政治家本人は、政治資金収支報告書の作成・報告義務がないため、使途が明らかではないことです。
自らの資金管理団体や後援会等政治団体への寄附は合法で、それらの団体側の収支報告書に記載されますが。
それ以外の資金の使途は不透明で、一般に系列の地方議員への寄附、地元のお祭り、冠婚葬祭等の寄附、その他選挙運動関連の経費などに使用されると言われています。
これらのお金の出入りがまったく記載がなく私的な飲食代に使われていても分からないことから、政治不信の原因となっているのです。
(4) 税金から見た政策活動費
寄附された政策活動費は、政治家個人の私的生活のための使用と区別され、課税の対象から外れます。
しかし問題は、その使用が政治活動のためなのか、私的生活の使用のためなのかがあいまいで、経理区分が本人の裁量に任されていることにあります。
そこで、私的に飲み食いなど遊興費につかわれても、チェックが難しいのです。
所得税の課税対象になるか否かは、下記の通りです。
(私的生活のための所得)
所得税の対象内
(政治活動に要する所得)
所得税の対象外
(雑所得:政治活動のための収入が支出を上回った残金)
所得税の対象内
(5) 政治家は政治活動費を、どこから得ているのでしょうか
法律的には、政治家個人への寄附は、政党本部と政党支部だけが可能で、その他の政治団体からは、選挙期間中を除いて禁止されています。
今回、政治家個人の裏金が問題になったのは、政党の派閥(政治団体)が行った政治資金パ^ティーのノルマを超える売り上げ分を政治家個人にキックバックしたもので、違法になります。
(6) 今回の法律改正で、問題は解決されるのでしょうか
今回の改革で、政党や議員関係政治団体から、議員・候補者への政策活動費の渡切りの方法もよっては、禁止されました。
渡切りとは、使いみちを特定せず支給される自由裁量で使うことができる経費のことで、不透明な使用となりやすいものです。
しかし今回禁止されたことは、渡切りの形態で政治家個人に資金が渡ることのみで、個別に特定した政治活動費は含まれていません。
さらに政策活動費がなくなったといって、政治家の日常の政治活動が変わるものではありません。落選すればただの人になりますから、政治家は次の選挙でも当選するために、日頃から系列の地方議員や後援団体や支持者に政治活動費を使ってきたのです。
これからは、政党本部や支部から議員個人に流れてきたお金が、自らの資金管理団体や、そこを経由して関連後援団体等に回り、そこを通じて従来と同じ活動を行うだけです。資金のルートと活動主体が変わっただけです。
ある程度改善されたといえば、資金管理団体をはじめ国会議員関連政治団体の収支報告書に、その使用状況を法律で定められた範囲で、記載・公表しなければならなくなったということです。
(7) 残された課題
お金のかかる政治を変えていくには、その資金源となる企業団体献金や政治資金パーティーの在り方や、さらにいえば政党交付金の在り方まで切り込んでいかなければありません。
しかし、これらは来年以降の宿題となっています。
さらに、新たに設けられる政治資金監視委員会が、政党支部及び資金管理団体の資金と、政治家個人の資金の区分・流用を、どれだけチェックできるかが課題となります。
専門家からなる第三者機関ではない、衆参両院の議員から構成される監視委員会という形態で、しかも調査権限等などがまだ決まっていない状況で、果たして実効性のある役割を果たせるかが問われます。
従来の企業団体献金と、自らの政治資金パーティーの実質的な迂回ルートとは、次の通りです。
(議員・候補者が政党支部長を兼ねる)
企業団体献金 ⇒ 政党支部 ⇒ 政治家個人
(自らの資金管理団体の政治資金パーティー開催)
企業団体がパティー券購入 ⇒ 資金管理団体 ⇒ 政治家個人