時間をかける
すぐに簡単にできることが苦手だ。
そして、時間がかかって答えが出にくいことに、心地よさを感じる。
たとえばこれまでメインで発信してきたFacebookで「会ったことのある人だけ」に向けて発信してきたのも、
お互いに顔が見えている安心感を守りたかったこととそれ以上に、
そうした相手に時間をかけて、センジュ出版をゆっくり知ってもらいたかったから。
不必要に急いで人を集めることを目的にはしたくないし、結果として意味がない。
一人ひとりと対話をして、その上でSNS上でもやりとりができたらと思う。
なのでゆっくりゆっくり、一人、また一人と少しずつ、
この会社のこと、この出版社から出ていく本のことを知ってくれる人が増えていった。
刊行のスピード一つとっても、恐ろしいほどにのんびりしている。
目の前のあなたと、そして目に見えないわたしの内側と、本に書かれた、あるいは書かれなかった言葉に、
ただ耳を澄ませたい。
答えを出すでもなく、
生きるって難しいね、ことばってわからないね、心地いいって何だろうね、と
眉毛をハの字にしてお互いの声にならない気持ちを分かち合いたい。
答えなんてすぐ出ない。言葉にもできない。時間はゆっくり過ぎていく。
でも、それが、わたしにとっては心地いい。
目の前の一人だなんて考えず、
たくさんの人の顔の上に数字を載せて、一人ひとりの表情を見ずに、
そうしたのっぺらぼうを集めるほうが、きっと速いし、楽だと思う。
でも、センジュ出版は、あなたの声が聞きたい。
どんな顔しているのか、そっと見たいし、見なかったふりをしたい。
大勢の中でのっぺらぼうでいたい時と、一人で誰かと対峙している時と、
それぞれに心地よさがあることも知っている。
ただ、センジュ出版としては、
大きな声を出さなくて聞こえる関係の中で、
わたしも話したいし、あなたの話も聞きたい。
しずけさの中でユーモアをポケットに入れて、
困ったね、嬉しいね、と笑い合いたい。
明日からの7期目も、6期目までのセンジュ出版と変わらぬ日々が続くだろうか。
同じように、続けられるだろうか。
もし、この会社と同じような心地よさを求めてくれるあなたが元気でいてくれるなら、
これからもこの会社を続けていけるのかもしれない。
あと少しで、7年目が始まる。
深く息を吸って、昨日までと同じことをしよう。
あなたが明日も元気でいてくれることを信じて。
#今日の (正確に言うと昨日の)一冊
#影の縫製機
#ミヒャエル・エンデ
#242 /365