センジュ出版の文章講座
2016年から「文章てらこや。」という名前の文章講座を毎月開催している。
まさか自分が人に文章について話す立場になるだなんて、会社を立ち上げてからもずっと思っていなかったし、
正確に言えば今も思っていない。
初めたきっかけは二つ。
一つには(これが大きな、主な理由)、出版という原価がかかりすぎる商売を継続させるために、原価のかからない商品を生み出す必要があったこと。
もう一つには(これは小さな理由。でも、やってみようと思わせてくれた理由)、ブックカフェに「原稿を見てほしい」「本を出したい」「企画書の書き方を教えてほしい」とおっしゃるお客様が続いていたこと。
カフェ営業中のご対応には、他のお客様もいらっしゃると時間に限りがあるし、
何しろ原稿用紙100枚くらいあるものを突然持ってこられて「どう思います?」と聞かれることも多かったので、
いくつかの意味で、なんとかしなければと思っていたのはたしかだった。
「そうしたご相談は一切受け付けません」
とすれば悩まなくていいのだろうけれど、そういうことではない。
わざわざ無名なセンジュ出版を見つけて、足を運んで、時間を割いてくれる人の中には(びっくりするほど自己中心的な人もいたけれど)、
背中を押したいと思わせることばを持った方が何人もいらした。
求められていることであれば、より丁寧に応えよう。
そうして、「文章てらこや。」をスタートさせた。
てらこやの場所は、ちゃぶ台の置かれた6畳のブックカフェ店内。
ここに北海道から鹿児島まで、10代から60代まで、さまざまな受講生がやって来てくださった。
月に一度の2日制(どちらか1日のみの参加も可能)。
各日4時間半、自分の内側のことばをただただ探り当てていく時間。
しずかで、ときに(人によっては)酷で、ときに(人によっては)おだやかな時間。
私にとってはある意味、かなり体力、精神力を消耗する時間。
最初の頃はなかなか慣れずに、終わってからどっと疲れが出て畳の上にしばらく寝転がっていたこともあった。
今では体こそ慣れたものの、それでも心はあまり慣れることがない。
初めて会う方、初めて読ませていただく文章にその場で正直なお返事を戻すのは、さながらボクシングのようだ。
(このボクシングはいま、オーダーメイド版や出張版などで場外乱闘も繰り広げられているから始末が悪い)
センジュ出版の「文章てらこや。」は、
・文章が上手くなりたい人
・お金をたくさん稼ぐための文章術を知りたい人
・人をたくさん集めるための文章の書き方を身につけたい人
・読ませる、泣かせるような文章のコツをつかみたい人
にはまったくおすすめしない。正直私はどれも、一切当てはまらない。
一方で、
・自分にしか書けない文章を知りたい人
・自分の個性や強みをことばにしたい人
・正直な気持ちを、誰かにたしかに届けたい人
には自信をもっておすすめできる。
これまでこの講座を受けてくださった方が、そう教えてくれたからだ。
私は常々、このてらこやで、
「こう書いたら嫌われるんじゃないかとか、
こう書いたら引かれるんじゃないかとか、
気持ちはわかりますけど、あなたの本音を書いてあなたを嫌いになったり
引いたりするような人はそもそも、あなたの本当の友達じゃない。
自分の本当を書いたら、そのことばでごくわずかな人と
必ずつながることができる。
『書いてくれてありがとう』と言われる。
私は著者がそう言われるのを何度も見てきた。
だから、正直に、あなたにしか書けない、あなただからこそ書ける文章を
書きましょう」
と伝え続けてきた。
そして、今年になって気づいた。
これは、自分に言っていたのだ。
『しずけさとユーモアを 下町のちいさな出版社センジュ出版』というタイトルで私の本をエイ出版社さんが出してくださった今、
ここに書いたわたしのことばがいま、
一人、またひとりと、センジュ出版を必要としてくださる方、
そしてセンジュ出版が必要としている方を呼んでくれている。
弊社刊『ロバート・ツルッパゲとの対話』の著者、ワタナベアニさんは、余計なものを書かない文章表現について、「必然を残す」とおっしゃった。
自分のことばを削りとることの重要性を説いているこのてらこやも、たしかにその人の必然を書いてほしいという願いからのことだった。
正直に書いた『しずけさとユーモアを』を介して、出会うことが必然だったと感じられる仲間と、
これから小さくてたしかな対話を重ねていけたら嬉しい。
今日もカフェでは先程まで、「文章てらこや。」の2日目の受講生の方が、
しずかな中で原稿用紙に鉛筆を滑らせていた。
あなたにしか生きることのできない人生が、たしかなことばになりますように。
今日の1冊 003:『縦横無尽の文章レッスン』(村田喜代子著 朝日文庫新刊)
私にとってこの本のある本棚の場所:センジュ出版事務所側の本棚
この本を選んだ理由:
「文章てらこや。」で推薦図書としている数冊の本の中の1冊。
芥川賞受賞作家が大学で生徒に文章を教える。
その教材に何を選んだか。
エッセイの形をとり、著者の日常が映し出される中で、
授業に取り上げられた名文がいくつも紹介されている。
読み物として楽しみながらも、文章の磨き方に触れることができる一冊。
もしよければ、このどこかでもつながってください。
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