幸せが幸せじゃなくなる日。
子供の頃、早く大人になって好きなことができたら幸せだと思っていた。
結婚する前は、好きな人と結婚できたら幸せだと思っていた。
子供ができる前は、子供がいてくれたら幸せだと思っていた。
全部叶ったのに、当たり前になると幸せだという実感が薄れていく。
ずっと行ってみたいと思っていた素敵なレストラン。行ってみて美味しかったー幸せだと思うけれど、その幸せは日常によってかき消され、そう長くは続かない。
ホームベーカリーから焼き立てのパンの匂いがするだけで、幸せを感じていた。フワッフワの湯気が立ち上る焼き立てのパンを食べられるだけで、幸せだと思っていた。
でも、今はいい匂いだと思っていても、ホームベーカリーを買った最初のころの大きな喜びまでにはならない。
人間て贅沢だ。
でもね、決して忘れない。
ホームベーカリーで焼いた湯気の立つパンを、子供とほおばった。
運動会でゴールテープを切る我が子に、声を張り上げて歓声をあげた。
家族で旅行をしてきれいな夕陽を見て感動した。
そんな日々があったから、今があることを。
幸せが幸せじゃなくなったのではなく、幸せを積み重ねて、重なっているからその幸せが見えなくなっているだけ。積み重なっていることを忘れないで。