脊髄小脳変性症とは?主に運動失調症に対して経過や症状、治療について解説
みなさんは「脊髄小脳変性症」という病気を聞いたことがあるでしょうか。
本日は、脊髄小脳変性症について解説します。
この病気に関して知っていただければ幸いです。
脊髄小脳変性症とは
脊髄小脳変性症(SCD)は原因不明の小脳から脊髄にかけての神経が変性する疾患の総称のことをいいます。
「まっすぐ歩けない」、「手がふるえる」などの「運動失調症」と呼ばれる症状が出現します。
脊髄小脳変性症は国の難病にも指定されており、40歳から65歳未満(第2号被保険者)でも介護保険を使うことができます。
脊髄小脳変性症の患者さんは全国でも約4万人といわれており、遺伝歴のない孤発性と遺伝性とに分けられます。
孤発性と遺伝性がある
遺伝歴のない孤発性SCDは全体の約7割を占め、「多系統萎縮症(MSA)」と「皮質性小脳萎縮症(CCA)」に分類されます。
その中でも、大多数が多系統萎縮症のため、多系統萎縮症は指定難病でも脊髄小脳変性症から外れて、単独で認定されています。
多系統萎縮症では主に以下の3つに分類されます。
線条体黒質変性症(SND)パーキンソニズムが主体
オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)
シャイドレガー症候群(SDS)自律神経症状が主体
遺伝性SCDは全体の約3割で、
マシャド・ジョセフ病(SCA3)
SCA6
歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPA)
が特に多くみられます。
経過と症状
脊髄小脳変性症の経過は、個人差があり、病気の進行速度も人によって異なるのです。
病気は緩やかに進行し、進行に合わせて症状も徐々に悪化していきます。
脊髄小脳変性症は、病気のタイプによっても出現する症状が異なりますが、運動障害が主な症状の一つであり、その中でも「運動失調症」という症状が見られます。
運動失調症とは、人が体を動かすとき、無意識に複数の筋肉をバランスよく協調させて動かすのですが、この協調性が失われてうまく、円滑に動かすことができなくなります。この運動に関わっているのが、大脳の後下方にある小脳が担っているのです。
主には
筋肉の緊張の低下
協調運動障害
バランスや歩行の障害
認知や言語の障害
筋肉の筋緊張の低下により、筋肉の硬さや張りが低下して関節が柔らかくなるような状態です。
協調運動障害では、手のふるえが出現したり、物にうまく到達できないなどの症状があります。
バランスや歩行の障害では、立っている時や歩いている時にバランスを崩しやすく、転倒の危険性があります。
呼吸や声帯、口腔運動の協調問題により、音量や抑揚、速度、リズム、一息での発話の長さに支障を生じます。
実際の日常生活には、これらの症状や筋力低下が組み合わさって出現し、日常生活動作に支障をきたします。
治療
脊髄小脳変性症の治療として、現状では病気を完全に治す根治療法はないといわれています。しかし、適切な治療やケアによって、症状を軽減することはできるのです。
そのため、症状の緩和や病気の進行を緩やかにするための対症療法として、薬物療法やリハビリテーションがあり、早期から行うことで運動機能や認知機能の維持、日常生活の質の維持を図ることが可能です。
薬物療法
運動失調の症状を改善する薬物療法には、TRHアナログ製剤の注射薬と経口薬が症状改善効果を認め、保険適用となっています。また、起立性低血圧や便秘などの自律神経症状やパーキンソン症状についての薬物療法も有効なことがあるといわれています。
リハビリテーション
根治療法が存在しないため、薬物療法と併せ、運動失調症などの機能障害に対するリハビリテーションが重要となってきます。リハビリテーションでは、主に症状に対する介入や能力低下に対する代償手段の導入、環境設定が行われます。
・運動失調に対して
運動失調を主体とする、脊髄小脳変性症に対して、バランスや歩行に対するリハを集中的(1回1〜2時間を週3〜7回)に行うと、運動失調や歩行の改善効果があるといわれています。また在宅などでの自主練習(1回20分を週4〜6回)によっても、歩行が改善したとの報告もあります。
具体的には、静的や動的バランス、転倒防止のためのステップによるバランス練習、平地や凹凸地、階段上り下りなどの歩行練習、腕や足、体幹などの協調運動が行われます。
・言語の障害対して
話す際に安定した姿勢をとる、ゆっくり話す、リズムや声の高低を整える練習があります。発声のための呼吸調整には、ストローを使ってコップの水に息を一定の強さで出す練習があります。構音機能の改善には、舌や口唇をゆっくり正確に動かす練習があります。
・日常生活に対して
運動の障害に併せて、日常生活に支障が出る傾向が強いため、日常生活に関連した動作練習や環境調整をすることも大切です。
トイレに関しては、トイレの動作を自立するために、手すりの導入や使用、便座の補高による環境調整や動作練習です。
食事に関しては、滑り止めシートや太めの柄のスプーンなどの使用です。
パソコンを使用する場合、手のふるえによるタイプミスを防止するためにキーボードガードの使用、トラックボールの使用などが役立つ場合があります。
言語の障害により聞き取りが困難な場合には、文字盤やスイッチ、意思伝達装置などのコミュニケーション補助手段の導入も検討する必要があります。
これらの治療に加え、ご本人の生活習慣の改善や、家族や周囲の理解と支援も必要です。
理学療法士や作業療法士などの専門技術者の介護者への指導も介護負担を軽減する上で重要です。
まとめ
本日は、脊髄小脳変性症という病気に関して
・脊髄小脳変性症とは
・経過と症状
・治療
について順に解説しました。
脊髄小脳変性症という病気について知っていただければ幸いです。
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