養護老人ホームと軽費老人ホームって、どんな施設?
高齢者施設で「特別養護老人ホーム」や「有料老人ホーム」はよく聞くけれど「養護老人ホーム」や「軽費老人ホーム」はあまり馴染みがない、という人は多いでしょう。
この記事では、養護老人ホームや軽費老人ホームはどんな施設なのか、入所するにあたっての注意点などについて、お伝えしていきます。
養護老人ホームの特徴
養護老人ホームは、生活環境上の理由や経済的に困窮した65歳以上の高齢者が「措置」によって入所する施設です。「措置」とは、行政が福祉サービスの必要性や種類、入所施設を権限で決定することです。養護老人ホームへ入所できるかどうかは、市町村が必要性を判断して決定します。
入所の条件として、身の回りのことを自分でできる人が対象の為、介護サービスは原則ありません。しかし「外部サービス利用型特定施設入居者生活施設」として、施設が契約する介護サービス事業者により介護サービスが受けられる施設もあります。
軽費老人ホームの特徴
軽費老人ホームは、無料または低額な料金で入居できる、自立した人向けの公共タイプ高齢者施設です。「60歳以上の高齢者」または「夫婦のどちらかが60歳以上」が原則としてあり、それに加えて所得の上限や共同生活に適応できるかも考慮されます。
軽費老人ホームは老人福祉法や社会福祉法に基づいた施設で、下記の3つの種類があります。
A型:食事サービスや生活相談、緊急対応等
B型:食事は自炊が原則。賃貸付属型の施設
ケアハウス:介護型と一般型があり、介護型では食事サービスや車椅子対応程度であっても生活できるような建築設備条件を備えている。
軽費老人ホームに関しては、2008年にケアハウスに一元化され、A型やB型については少数の既存施設のみ、運営が継続されています。また、原則自分で生活できる人を対象としているので、食事の介助などの介護サービスは提供されません。しかし、A型やケアハウスでは、外部の事業者によるサービスを利用することにより、家事援助や入浴介助などの介護サービスを受けることができます。
養護老人ホームと軽費老人ホームのどちらにも共通していることは「外部からの介護保険サービスを受けることができる」という点です。介護保険制度には「特定施設入居者生活介護」に分類される施設があります。
この位置づけにあるのは
介護付き有料老人ホーム
養護老人ホーム
軽費老人ホーム
上記3つは「施設」ではありますが、法律上は「介護保険施設」ではなく「居宅」扱いになります。その為「居宅」として外部からの介護保険サービスを受けることができるのです。
民間事業者が参入している軽費老人ホーム
養護老人ホームと軽費老人ホームを設置できるのは、原則
国や地方公共団体
社会福祉法人
に限られています。しかし、東京都では民間事業者も参入できる「都市型軽費老人ホーム」の整備が2010年より進められています。
背景として、2009年3月に群馬県で起こった、無届けホームでの火災事故です。その事故で負傷者が1名、死者は10名でした。なぜ東京都が問題になったかと言うと、その施設東京都内の生活保護受給者が多く入居していたからです。東京都は地価が高く、生活保護受給者が入居できる施設が少なかった為、県外の施設に入居せざるを得ないことが、問題として取り上げられました。
この事故をきっかけに、独自に居住面積や人員配置の基準を緩和し、利用料金をより低額に抑えた、低所得者向けの高齢者施設を創設することになりました。
地価の高い東京都では、この都市型軽費老人ホーム設置を推進するために、社会福祉法人以外の民間事業者も公募できるようになっています。
養護老人ホームや軽費老人ホームにおける注意点
養護老人ホームや軽費老人ホームを利用するにあたって気をつけて欲しいことは「介護が必要になった場合、退去しなければならない」という点です。
上記でも挙げましたが、介護サービスを必要とする場合、外部の介護サービスを利用するという方法があります。しかし「医療的処置」や「看取り」等は対応していません。その為、介護度が進行したり認知症を発症した場合は退去して、特別養護老人ホームや要介護型の有料老人ホームに移る必要があるのです。
まとめ
いかがでしょうか。この記事では、以下のことについてお伝えしてきました。
養護老人ホームは、環境的・経済的に困窮した高齢者が「措置」で入ることができる施設
軽費老人ホームは、低所得者向けの高齢者施設。食事を提供してくれる施設もあるが、原則介護サービスを受けることができない。
介護度が重くなったり、認知症を発症した場合は、退去しなければならない。
高齢者の中には、安定した生活を送りたくても、経済的な面から十分な食事や住居を確保できないという人もいます。養護老人ホームや軽費老人ホームというのは、そんな高齢者の、セーフティーネットとしての役割を果たしているのです。
一人で生活するのが困難な人や、身内に経済的に困窮しているけれど、遠方にいて支援ができないという人は、是非住んでいる地域の地域包括支援センター等に相談してみてください。