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【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章④

 いまの画面を閉じて、「リスト」のフォルダーを開いてください。ご覧のとおり、それぞれの執行役員ごとに五十代の社員を割り当てたリストが作成されています。

 上段のグリーンで色づけた枠に記載された社員は、いまやめられると会社が困る人材としてチョイスされました。プロテクト社員に指定され、希望退職の対象から除外されます。

 下段の枠はイエローになっているでしょう。この四百人がリストラのターゲットです。イエロー社員が希望退職を決断して書類を提出すると、その社員の枠は色がレッドに変わります。
 いかに早く、いかに多く、イエローのリストがレッドに変わるか、みなさん、勝負ですよ。がんばりましょう。

 まず八月末で五十代の二百人にやめてもらうと説明しましたね。それはあくまでも建前です。実際には、八月末でイエロー枠にリストアップされた社員の四百人全員にやめてもらってかまいません。五十代の社員をできるだけ削減することを経営陣が望まれているからです。

 私が冒頭で申し上げた「よんまるさんまる」は、経営陣にもよくご理解していただきました。それでも、今回は四十代をなるべく温存することを経営陣が望まれています。なぜだか、おわかりでしょうか。

 理由は三つあります。
 まず、五十代に加えて四十代もガンガン削ってしまうと、三十代以下の中堅や若手の社員が浮き足立ち、経営に支障をきたしかねないことが懸念されます。
 つぎに、五十代のイエロー社員を情け容赦なく切り捨てれば、四十代の社員は尻に火がつき危機感をもって仕事をするという副次効果が期待できます。
 そしてもう一つは、四十代のイエロー社員を残すことで会社がまたいつでも減量できるように敢えて脂肪を蓄えておくことです。

 どうです? しびれるでしょう。先の先まで計算できなければ会社の経営陣にはなれないってことですよ。みなさん、がんばりましょう。

 話を戻します。五十代のイエロー社員は社内で「働かないおじさん」と煙たがられているはずです。いくら減ったところで中堅や若手の社員は動揺しません。むしろ、「働かないおじさん」が目の前から消えていなくなれば気分がスッキリするんじゃないですか?
 この際、五十代のイエロー社員はガンガン削ってください。がんばりましょう。

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