見出し画像

【リストラ小説】会社棄民              ーある日、会社があなたの敵になるー   第一章⑦

 相手の答えがNOの場合、ここからが勝負です。
 いいですか? この面談は相手に勝つか負けるかです。執行役員ともなれば、ビジネスの勝負は勝たなければ意味がないことをよくご存じですよね。   
 勝ちを重ねることにより、会社への貢献度が高まり、自らの役職が上がっていく。そうして、みなさんは執行役員まで上がってきたわけですよね。リストラ面談でも勝ちを積み重ねていきましょう。

 勝てば勝つほどスペックが上がります。経営陣の評価が高まります。今回のリストラは、会社のために非情に徹して成し遂げねばならないミッションだからこそ、取締役に昇進して経営に携わる資質があるかどうかが問われるのです。がんばりましょう。

 答えがNOの面談相手には、こう宣告してください。
「あなたには社外でのご活躍を強くおすすめします」

 なんだかピンときませんよね。これ、お前は会社をやめろって意味なんです。まだるっこしい言い方でしょう。どこかの国では、テレビ番組で「お前はクビだ」の決めぜりふを言い放って人気者になり、大統領にまでなった実業家がいます。

 でも、日本の会社では「お前はクビだ」とストレートに言えないんです。解雇権の濫用とみなされて法的に許されません。

 それはさておき、抵抗するイエロー社員には「あなたは会社に必要ない」と思い知らせてやることが面談のポイントです。
 面談では一貫して「会社から出ていきなさい」と言い聞かせましょう。
 会社にしがみついたところでろくなことはない。きっと後悔する。倒産の可能性もあるのだから、あなたは割増退職金がもらえるうちにやめるほうが得だと説き伏せてください。

 マニュアルは、どんな会話になろうとも、「あなたはやめるのが得策」という結論に導けるように作られています。マニュアルにしたがって繰り返し言いましょう。
 悪いことは言わないからやめなさい。あなたのためだからやめなさい。とにかくやめなさい。やめたほうがいい。やめるべきだ。
 何度も何度も宣告してください。

ここから先は

1,566字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?