小澤メモ|POPCORN MOVIE|映画のこと。
10 口説きのパッション入りダイナー。
旅と映画のマスターピース系。
ダイナーっていう響きだけで空想旅に出発できる。アメリカ映画のプロップスというか舞台装置に、ダイナーは欠かせない。それは、ドライブ・インみたいなのでもいいし、モーテルに隣接したやつでも、個人的にはダイナーとして見ている。カフェとかレストランではなく、ダイナー。しかし、それはどこがどう違うというのか。ダイナーのシーンを見ると、それだけでまた旅に出たくなる。それなのに、ダイナーの定義については考えたことがなかった。カウンターがあって深夜営業は当たり前。料理は幅広くアメリカンな食べ物。そんなところだろうか。タイトルもそのままズバリなケビン・ベーコンやミッキー・ロークが主演していた映画『ダイナー』を見れば、ダイナーについて流暢に説明ができるようになるかといえば、そうでもなかったりする。奥が深いな(かなり感覚的でいいのではないか)ダイナー。
夜更けが効いてくる系。
ミッドナイトに物語は進行し、ミッドナイトにこちらはそんな映画をソファに埋もれて見る。夜更けのダイナーだったら、ノラ・ジョーンズ主演の『マイ・ブルーベリー・ナイツ』とか、整形する前のメグ・ライアンとビリー・クリスタルの名作『恋人たちの予感』とか。『恋人たちの予感』では、ニューヨークのカッツ・デリカテッセンがあまりにも有名だけれど、個人的にはニューヨークへのロードトリップの途中に寄る、深夜の名もなきダイナーにピントがあってますから。って感じ。そういえば、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』はウォン・カーファイ監督(恋する惑星!)、『恋人たちの予感』はロブ・ライナー監督(スタンドバイミー!)と、どちらもかなり好きな監督。そんな2人がダイナーを舞台にするので、かなり贔屓目に見てしまう。そして、ダイナーで忘れてならないのが『イコライザー』と、『トレーニング デイ』だ。
期待しない。ただ、いつもドアは開いている。それがいい。
夜更けのダイナー『イコライザー』と、朝のダイナー『トレーニング デイ』。このどちらにも主演しているのは、デンゼル・ワシントン主演。イコライザーでは、現在はイリーガルな身ながら弱いものを助ける良い男マッコールとして、ダイナーで読書する。トレーニング デイでは、リーガルの現職デカの身ながら悪事に手を染めるホッケー・テンパー野郎アロンゾとして、ダイナーで新人にカマす。そんな対照的なダイナーのシーンだけれど、どちらもソソられる。それでわかったことがある。ダイナーのはっきりとした定義はわからないけれど、こちらが思うのは、テーブルマナーよりも、何はなくともダイナーに来てしまったぜ感が重要。美味しいのかまずいのかよくわからない料理が、期待していない分、どんどん口に入ってしまう感じ。割安な感じ。そして、うるさくしようが、冴えない孤独感を醸し出そうが、コーヒーを何杯もお代わりしようが、とにかくチップだけはしっかりと置けばいいぜって感じ。それがいい。旅の最中はとくにそんな感じがちょうどいい。それで思い出した。映画『フランキー&ジョニー』のダイナーなんか、出所したてのアル・パチーノがウエイトレス役のミシェル・ファイファーを口説きながら、てきとうにスクランブルエッグとか作ってた。そんなカジュアルさ(日本ならクレームか)が好き。大事なのは、作り置きとか、電子レンジでチンじゃないってとこ。味や盛り付けより、すぐ近くで火が通っている。そこが大事。10
(写真はロサンゼルスのダイナー、まさかのカウンター激混み/2016年)