小澤メモ|HELLO PANDA|パンダのこと?
16 桜浜と桃浜のこと少し。
逸材とあえて呼びたい双子。
アドベンチャーワールドの双子、桜浜と桃浜。生後齢3ヶ月とか4ヶ月の頃まで、まったく見分けがつかなかった。それほどそっくりな双子の姉妹だったと記憶している。それから、段々と性格や顔の違いや、得意なところと苦手なところとか個性も立ってきて、目の前だったら間違えることはなくなった。パンダはどれも白と黒で、つぶらな目とその周囲が黒くなっている、というわけではない。それはペットの犬だって猫だって、人間だって同じこと。とにかく、2014年12月2日の冬に生まれた双子は、アドベンチャーワールドで初めてのメス同士の双子だった。だからだろうか、ただの双子というより、さらにシンクロニシティがある、言葉は適切ではないかもしれないけれど、知らなかったパンダたちのしぐさを教えてくれる逸材だった。
姉より妹の方がちょっと先行。
姉の桜浜は、パンダのあかちゃんとしては、なかなかのサイズの181グラムで生まれた。その3時間後、妹の桃浜が、姉よりさらに大きい186グラムで生まれた。この体格差が、そのまま成長スピードに反映されたのかどうかはわからないが、なんでも先に覚えるのは、桃浜の方だった。歩くのも、木登りも、妹の後を姉が追いかけていく。あろうことか、桃浜は桜浜に突進していくと、おもむろにマーキングしようとしたこともあった。それでも1歳の誕生日が近づいてくる頃には、それぞれは同じように大きくなって、母親の良浜を真似て、少しずつ竹を食べるようになった。そのため、1歳を待たずして、姉妹は親離れをすることになった。このとき、とくにさみしがる様子はなく、2頭でわちゃわちゃとそれ以降の日々を過ごしていた。
桜桃に出会えてよかった。
1歳の誕生日を迎え、順調に成長していった桜浜と桃浜。この頃から徐々に個性が際立ってきた。特徴といってもいい。耳が広がって大きくみえて、鼻が低く短くて、よく舌をぺろっと出すのが姉の桜浜。妹の桃浜は、耳が小さく整っていて鼻筋も通っている。そして、父譲りの竹を選り好みするグルメなパンダ。思い出すのは、みんなが見とれてしまう子パンダのミルクタイム。大人になるとミルクを飲むことはないので、成長期のわずかな時期だけの貴重なシーンだ。そんなミルクタイムでも個性が出る姉妹だった。マイペースで少し不器用な桜浜は、容器に顔を近づけてペロペロとする。それとは対照的に、桃浜は、がっちりと容器を両手でもって、ゴクゴクと飲んでいく。もう断然に桃浜の方が早く飲み干してしまう。それでも気にせずペロペロやっている姉のミルクに、俄然やる気の妹がちょっかいを出していく。それを慌てて、スタッフが引き離す。この繰り返し。マイペースとシャキシャキって感じだけど、結局はくっついてくつろいでしまう、そんな双子の姉妹による微笑ましいシーン。貴重かつ逸材な、とてつもなくかわいい彼女たちの時間をたくさん眺めることができたこと。それは、本当に得難いものだった。今でも、これからも絶対に忘れないと思う。パンダメンタルの原点。16
(写真は『HELLO PANDA』にも掲載されたミルクタイム/2015年)