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小澤メモ|HELLO PANDA|パンダのこと?

17 アゴ置き。

ひとりがあたりまえのパンダ。
本能的に独立心が強いパンダ。野生のパンダでは、生まれてから1~2歳くらいまでには親離れするといわれている。子育てするのはお母さんパンダ。お父さんパンダは、子育てどころか出産に立ち会う(居合せる?)こともない。飼育下では、各施設によって差異はあるけれど、拙著『HELLO PANDA』の舞台になったアドベンチャーワールドでは、現在、1歳を過ぎた頃に良浜お母さんから独り立ちすることが多い。1歳くらいまで、親子で暮らすこと。これはとても大きな意味がある。この期間に、おかあさんからたっぷりと愛情を注いでもらい、パンダの本能的な部分、とくに繁殖や子育てに関するものを学習していく。これによって、アドベンチャーワールドで生まれたパンダたちは、立派な親パンダになることが多いといわれ、世界の注目を集めている。

ひとりだちするパンダ。
仲睦まじく、ときには派手なアクションつきで、人々をニンマリとさせるパンダの親子。それをあるときを境に独り立ちさせるというのは、なんだかかわいそうに思える。言葉が通じない、つぶらな瞳のパンダたちだけに、よりかわいそうモードになってしまうかもしれない。引き裂かれてしまったように映るかもしれない。もしかしたら、(あれ? おかあさんは?)とか(あれ? あの子はどこ?)っていう感覚が、パンダにもあるかもしれない。実際に、昨日となにか違う今日、という違和感くらいはあるんじゃないかなと思う。ただ、パンダは本能的に独立心が強い。すぐに適応して、おかあさんから見よう見まねで教わった竹の食べ方や木登りの仕方を実践していく。ということで、飼育下のパンダを見学するときは、(あかちゃんが生まれたとき以外)たいがい1頭でいる場面になる。

双子ならではの仕草がある。
例外となるのが、1歳くらいまでの親子の姿。そして、双子が生まれた場合だ。双子は、親離れした後も、アドベンチャーワールドの場合でいうと3歳過ぎくらいまで、2頭で暮らす。これは、性成熟する(大人になる)のが目安になる。大人になると、それぞれが独立心旺盛になり、縄張り意識も強くなってくるため、双子といえどもいよいよ別々に暮らすことになるのだ。アドベンチャワールドで、2014年に生まれた桜浜と桃浜の双子の姉妹は、2017年まで一緒に暮らしていた。そのときの2頭のワチャワチャしていた姿は、本当にかわいかった。その中でも、個人的にアゴ置きと呼んでいる仕草が最高なので、書いておきたい。これは、同じ2頭というシチュエーションでも、親子の場合は、ありえない仕草だと思われる。なぜなら、サイズ的に違いがありすぎるのと、その母と子という関係性だから。

する方もされる方もかわいい、アゴ置き。
どちらかがもう一方の頭の上にアゴを置く。という、アゴ置きは、同じサイズ感で一緒に暮らすことができるシチュエーション、いわゆる飼育下の双子のパンダにしかできない仕草(中国の成都基地では同じ年のパンダたちがしばらく一緒に暮らすパンダ幼稚園がある)。これは、(ここは私の場所だよ)っていうアピール(マウント取ったぞ!)だと言われている。ただ、こちらには、(お、ちょうどいいアゴ置きがありますね、ここに)というような感じで、寝転がっているところに、スキあり!ってアゴを置こうとしているだけのように見える。ヒートアップすると、アゴの置き合いに発展することがある。そして、しばらくすると、どちらかがあきらめて(他のことに気がいって)、結局はもう1頭のアゴ置きにされるという結末まで見ることができる。これは、双子のパンダならではの、限定的なシーン。もし、双子のベイビーが生まれたと聞いたら、こちらは真っ先にパンダのアゴ置きを想像してニヤけてしまうだろう。17
(写真は姉の桜浜にアゴ置きする妹の桃浜/2017年)

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