小澤メモ|POPCORN MOVIE|映画のこと。
11 映画の中のアウトドア・ライフ。
例えば、好きな映画3作品からテーマを見繕う。
1本目は1986年公開の映画『スタンドバイミー』。原作はスティーブン・キング。監督はロブ・ライナー。オレゴン州キャッスルロックの小さな町を舞台に少年たちの夏休みムービー。恐い先輩や、子ども心を理解しない親など、現代に通じる子どもながらの苦悩も描かれている青春映画だ。2本目は2016年公開の映画『ザ・コンサルタント』。ベン・アフレック主演のアクションもので、主人公クリスチャン・ウルフは野暮ったい会計士で、実は腕利きのスナイパーという設定。3本目は、1993年公開の映画『トゥルーロマンス』。凍てつくデトロイトから、はだけたアロハシャツのロサンゼルスへ。若いカップルが織りなすロードムービー的アクションムービー。クエンティン・タランティーノの脚本によって、それが見事に恋愛映画に仕上がっている。この年代も制作もキャスティングもジャンルもそれぞれ違う3本だけれど、こちらが思う最大公約数がある。それは、アウトドラ・ライフだ。
自分が思うアウトドア・ライフというのはこんな感じ。
秘密基地を作って遊んだ記憶。それは、昭和を知るオッサンたちの中には必ずあるものじゃないだろうか(アーバンな出のひとは、それがイカす親所有のオフィスだったのかもしれないけれど、今はそういう秘密基地のことを言いたいのではない)。とにかく、昭和を知るオッサンたちが大人になっても、隠れ家やアジトを好んだりするのは、その残像があるからかもしれない。自宅(自室)ではなく、ドアの外にそれを求める理由はいろいろだろうが、そのひとつは、映画『スタンドバイミー』のように、親の目を盗んでかわいい悪さをするため。4人の少年たちの元祖ツリーハウスは、すべてがD.I.Y.な感じが面白い。うってかわって、映画『ザ・コンサルタント』では、追われる身となったらすぐに大事なものとともにエスケープできるように、本来はアウトドア・ライフのためのトレーラー・ハウスを秘密基地兼強力な金庫として使っている。ルノワールやポロックの出所を言えない高価な絵画は、こうして保管するしかない。自閉症という役どころの主人公ならではの超個人的アウトドアな環境という風にも映る。
楽しいグランピングから程遠いとこにあるのが自分のアウトドア観。
そして、映画『トゥルーロマンス』では、厄介ごとを持ち込んだ息子カップルと話すデニス・ホッパー演じる父。彼の住まいは、アジトのようなトレーラー・ハウス。アウトドア・キャンピングというよりも、ここしかもう住むところがないという男やもめ感が漂っている。これもまたデトロイトなどの荒廃した郊外のアウトドアだったりする。生活臭が漂いまくっているのだけれど、後に追っ手のマフィアがやってきたとき、自分の最期を覚悟しながらタバコ1本分の最高に皮肉めいた小話をするデニス・ホッパーがとてもイカしている。こんなにまで、寒そうで暗いトレーラー・ハウスは見たことがない。アウトドアじゃなくてアウトサイダーなんだな、やっぱり秘密基地ってやつは。こちらは、なにも人気のアウトドア・ライフを否定したいわけではない。キャンプやBBQが大好きな友人だって多い。ただ、自分の中のフィールドワークは、このような映画たちみたいに、ドアを閉めて隔絶したりドアを開けて飛び出していくという、いわゆるアジトとか基地的な意味のアウトドアになるということ。それっぽいツールやファッションじゃなくて、何らかのワケありでサバイブしている感じ。自然より荒廃とか退廃。ハードボイルドなこの世界でそれでも力のかぎり生きてみる。そんなアウトドア・ライフ。11
(写真はロサンゼル郊外のテントハウスが点在するゲトーなスケートスポット/2018年)