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小澤メモ|NOSTALGIBLUE|思い出は青色くくり。

32 NBAプレイオフ鑑賞メモ その2。

ネット配信の前でひとり、NBAを見る。
審判の笛の問題はこれくらいにしておこう。草バスケの大会なんてもっとひどいし、審判をやりたいと1ミリたりとも思ったことがない人間は、審判をやってくれたり、審判という難しい仕事をやろうとしてくれる人間の気持ちなど永遠に理解できないだろうから。とにかく、サッカーでいうところの”マリーシア”(けしかけて相手の感情を揺さぶったりしてメンタル的に優位に立ってゲームから追い出していく)を、スーパーで最高峰の選手がやったら、鬼に金棒。勝利への執着心がすさまじい。全員が上手くてハイパーで一流なリーグでは、その執着心が強い者でなければチャンピオンリングは手にできないのだろうと思う。ただ、それを、マリーシア的なものを全面に出すかどうかは好みが分かれてもいいはずだ。オッサンは見てて、それが好きじゃないというだけだ。ラスやヒゲが常に感情を昂らせて表現しているのとは違う。カリーやトンプソンとも違う。

ネット配信の前でひとり、NBAを見る。
そして。はっきりとわかったのは、ロケッツは、というかラスやヒゲは、今のままではレブロンには勝てないということだ。スタッツとかの問題ではない。レブロンやロンドが、仕掛けてくる”ゲームから追い出すための駆け引き”にまんまとハマっているようでは、 82試合中の1試合だけならともかく、シリーズ戦のプレイオフではどうあがいても分が悪すぎる。レブロンやロンド、しいては審判のコールにほとばしって対抗心をむき出しにしていては、肝心のゲームやバスケットボールから心棒が遠ざかっていってしまう。見ていて歯がゆい。ロケッツに勝ってほしいだけにたまらなくなるが、やはりこのままでは勝てない。これを凌駕していくのはウォーリャーズのカリーやトンプソン(ドレイモンドはそうではない。だから今もトレードの噂が絶えないのだろうか)、今だったら、クリッパーズのレナード、ヒートのバトラーたちだろうか。レブロンやロンドは、レナードが苦手だろうと思う。同等以上のスキルとメンタルとサイズを持ち合わせながら、マリーシアを一切シカト(表向き)して、自分の勝利への推進力に変えてしまうレナードは無敵かもしれない。

ネット配信の前でひとり、NBAを見る。
ここまで書いてしまうと、ついでにレブロンについての個人的な感想を書いておくけれど、彼はマイケル・ジョーダン引退後のリーグにおいて、NBAやナイキの盟主としての責任や人気を一身に背負っていると思う。その覚悟や野心は素晴らしい。そして、それを裏打ちするだけのプレイヤーとしての勲章はケチのつけようがない。完成度でいったら、マイケル・ジョーダンより上、コービー・ブライアントやウォルト・チェンバレン、シャキール・オニールと同じレベルにある。しかし、オッサン的にしっくりこないのは、プレイじゃないところの彼の仕草とか発言。揚げ足をとりたいわけじゃないけれど、「バブル内では集中するためにSNS系は一切見ない」と言いながら、ツイートとかマメにしてるし(だったらキングは言わなきゃいいだけなのに)、現在のデモや社会の動向に声を上げてアティトゥードを示すと言ったならば(バックスに続いて、プレイオフのボイコットも示した)、ユニフォームにプリントするメッセージを、(バトラーが言い出した真似だとは思わないが)ノーメッセージにするという無言のオピニオンという風にしないで、ラスやドンチッチみたいに自分のメッセージをプリントすればいいのにと思う。それこそ、キングが自らのメッセージで先陣を切ってくれたらいいのにと思う。

ネット配信の前でひとり、NBAを見る。
あご髭をたくわえるのも、ヒゲ(ハーデン)がやり出したけれど、いつのまにかキングの称号になっているし。ヒゲぐらいはハーデンでいいだろうに、なんて思ってしまう。なんかなあ、プレイはすごいしその存在感やアイコンもダントツなんだから、スタイルの部分まで支配欲は必要なのだろうか。バスケがすごく上手くてスーパーだというのはカッコいいことの要素の重大なひとつではあるけれども、バスケがすごく上手くてスーパーだからってカッコいい人間のオジリネーターだとはかぎらないし、スタイルが最高にカッコいいともかぎらない。逆にいえば、そうでなくてもいいじゃないか。レブロンはキングだと称するがゆえに、すべてでトップ、オリジンであろうとするのだろうか。しかし、ヒゲもカリーも、スタークスも、カッコいい選手はカッコいいし、スタイルはオリジナルだ。そういえば、ウォーリャーズにデュラントが移籍したとき、「ビッグ3どころか、スーパースターばかり集めてズルイ」みたいなことをキングは言ったけれども、集めたわけじゃなくて、カリーもトンプソンもドレイモンドも、ウォーリャーズがドラフトでピックした選手(しかもそんなに上位指名ではない)だし、デュラントは自らFAで望んでやってきた。なんなら、キングの方こそ、ヒートでも、キャブスでも、結局はレイカーズでも、ビッグネームを集めたし、集めて使えなきゃブッタ斬ったりしてるし、って思ってしまう。言い訳とか泣き顔みたいな表情とかも気になってしまう。まあ、極東の単なるNBAファンのオッサンが何を感じようと、キングはキングだし、すごい選手だし、スーパーだし、NBAの他の選手もみんなキングを尊敬していると発言しているのだから、それが事実だと思う。ということで、これらはすべてこちら側の単なる感想なだけ。

こちらの勝手な言い分なのだけどね。
結局は、何が言いたいかっていうと、スターウォーズのダース・ベーダー(シス皇帝はまた別か)のようにレブロンが最強であればあるほど、手強いし、どうにもならないけれども、オッサンが感情移入してしまう逆サイドの選手たちが、そのレブロンをプレイオフ(レギュラーシーズンの1試合じゃなくてね)で倒したとき、本当に最高峰のバスケットボールの勝利を見た気がして、グッとくるということ。今回でいうと、それは、スモールラインナップというロケッツとか、チーム力のセルティックスやラプターズ、そしてドラフト外や下位指名の選手たちが成り上がってきたヒート、そして必殺仕事人のレナードあたりだろうか。そして、熱心に見入ってしまうほど、レブロンはアンチも巻き込んでNBAのプレイオフを盛り上げてくれるキングだということだろう。それは間違いない。ちなみに、イースタン・カンファレンスのセミファイナル、セルティックス対ラプターズ。この第7戦までもつれこんだ大接戦シリーズは、感動した。シリーズ中に、屈指のブルーワーカー、タフなディフェンダーのスマートと(昨年の優勝までずっとポストシーズンに勝負弱いと揶揄されてきた)ラウリーのやり合い。しかもフラッピングやマリーシアな感じもなく、ディスりあうこともなく、転んだらお互いに手を差し伸べあい(それを勝負にあまちゃんということはなく)、ガチガチやりあってた姿。最終戦のクラッチタイムにいたるまで、ルーズに一緒に転んで、それでも手を差し伸べ合う光景。これこそ、本当のラブ・ゲーム。勝ち負けとバスケットボールとゲームと敵味方すべてゲームに関わるすべてをラブして楽しんでこだわっている光景を見た気がした。口だけでなく、後づけで言いわけがましく正統ぶるわけでもなく、今この瞬間にみなぎるラブ感。素晴らしかった。しかも最高峰のプレイで。これだよ、これ。これができるんだから、最高のNBAのプレイオフの舞台で。キングがいなくても、ラブゲーマーたちが、すごいことをしてくれていた。最高だな。と言いつつも、レブロンやレイカーズ・ファンからしたら、ラスやヒゲはうざいんだろうし、レナードは実績的にもキングと比べるのに値しない選手なのかもしれない。それはそれでいいと思うし、当然。とにかく、どっち側からもNBAを楽しむことができる。それは間違いない。

追伸。
ロケッツのスモールラインナップは今回で解体だろうなあ。ダニエル・ハウスJr.は、チームどころかリーグにももしかしたら来季はいないかもしれない。バブルにはパーティじゃなくて戦いに来たはずなのに。ダントーニはナッシュとのサンズでも、アマレとのニックスでも、そして今回もリングに届かずで解任なのかな。今のところ、それはないというチーム側の報道だけれど(続報では解任ではなく辞任を表明し、来季はロケッツの指揮をとらないことが確定。残念)。すさまじい運動能力でビンビン系のラスは、フリースローやセットジャンパーなどバスケ的ファンダメンタルが審判の笛並みに不安定なので、加齢とともにやってくる筋肉系のケガの増加が心配だ。本当に残念だ。なによりも、プレイオフでのレイカーズ戦。それまでずっとセンターのスタメンで使っていたマギーと、そのローテーションを担っていたハワードを一切使わずに、デイビスを5番にして仕掛けてきたレイカーズ。レブロンもデイビスもモリスもサイズは大きい中で、ローテーションのクーズマも同じで、みんなスリーポイントが打てて、セカンドチャンス・ポイントも取れる。そして、デカイ。こうなると、ロケッツがわざわざスモール・ラインナップにした哲学すら破壊されてしまう。スリーポイントのラッシュからラスのアイソレーションからのペネイトレイトを効果的にした戦術も、ラスをレブロンが止め切ってしまうと、ラスが確率の低いスリーポイントを打つことに仕向けられていった。こうなると本末転倒。すべてが裏目になっていく。さらにこちらにトドメをさしたのは、ロケッツを攻略する上で発見したレイカーズのスモール・ラインナップを、キング自身が、「これはスモール・ラインナップではない」と、ロケッツの戦術を否定し、オリジンであるとコメントしたことだった。ここにおいても、常に自分がオリジナル、すべてで長けている、オピニオンリーダーであるという自負を突きつけられた気がした。徹底ぶり。ひたすらぶり。この鬼がつくひたすらなキングへの執着が、こちらを萎えさせる。これはすごい。ここまでひたすらでないと、ラスやヒゲに勝つ見込みはないのだろう。悔しさが残るプレイオフだった。面白かったけれど。とにかく、ロケッツの稀代の、逃げ道も言い訳も捨てたロースターからフルのスモールラインナップにはとてつもなく夢を見させてもらった。ワクワクしたし、のめり込めた。ラスにもヒゲにも、賛否両論あるがGMのダリル・モーリーの”オピニオン”にも、ありがとう、だ! そして、マリーシアに乗っかってはいけない。これは人生の鉄則。32

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