臨床試験の探し方と付き合い方
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いま、私は臨床試験(治験)を受けている身です。
私はこれまでに、やりたい治験(自分に効果のありそうな治験)を選んで、何度かセカンドオピニオンを取りに行きました。
最初は、聞きに行って、まだ「(治験の拡大)待ち」の状態であったりとか…
ギリギリまで入れないか条件面で粘ってみたけど、海外の窓口に問い合わせてもらったところ「この治療歴のある人はNG」で断られたりで、なかなか良縁がなかったのですが。
(この時は、国際共同試験で試験担当医も海外に問い合わせないと分からない微妙なラインであり、そういうことも治験では多くあり得るんです)
日本の治療でのガイドラインと、国際的なエビデンスというのは違いますし、日本と諸外国のガイドライン自体も微妙に違います。人種が違うので薬の基準も違いますし、保険制度も全く違うためドラッグラグなど、海外と比べるとキリがないほど日本では不自由を感じることもありますが…
入れなかったら入れなかったで、次(の臨床試験)を探す!ぐらいの鋼のメンタリティと、治療に対してガッツクこと…は体力が有る内には必要かもしれません。
そして、気になったらとにかく、聞いてみることって大事です。
だって、その治療については、先々で聞いてみれば良かったとか、つまらない後悔をしなくて良いんです。
入るとか入れないとかは別にしても、聞きたい事があるなら、聞きに行く。
これ、癌の治療では絶対に大切だと、私は何人か見送って、強く強く感じたことです。聞きに行って、ショックを受けることだってあります。でも、最後の瞬間に考えることが、やらなかった治療のことじゃ、悔しいじゃないですか…?
という経験を踏まえて…気になる治験や臨床試験の見つけ方、を、私なりに書いてみたいなと思います。
***標準治療、というもの***
治験や臨床試験の実施施設に通院されてらっしゃるなら、ある程度は医師の方からも、タイミングが合えば提案を受ける事もあるかもしれませんが…
実施施設以外の病院では、よほど担当医が新しい治療や研究などに興味がなければ、たぶん「待っていても治験の提案はされません」し、実施施設でも、必要のない人に無駄な臨床試験は勧めません。
現代では、標準治療のガイドラインというものが、しっかりしてきています。そのガイドラインの治療をキチンとこなしていくこと。それだって、並大抵の事ではないんです。これが行われているだけでも、まず素晴らしい。病院では、がん診療拠点病院の指定を受けていること、も、がん診療では目安になるかと思います。
抗がん剤を扱うというのは、管理も大変ですし、院内薬剤師や専任看護師、最近では緩和ケア(早期緩和といって、副作用の軽減などに必要です)とのチーム力も必要な治療。いまは通院で化学療法を行うのも当たり前になってきています。それぞれの患者に起こる副作用への対応だって様々で、診察にも時間がかかることも多いです。
それだけ繊細でもあるし、気も使うお仕事だと思います。
そこまでが「標準=スタンダード」であり「最上の治療」です。
***治験や臨床試験が必要な人って?***
それ以外の治療を考える、というのは「標準的な治療を行ったにも関わらず、上手くいかなかった→希少なタイプの癌腫の可能性が高い、症例数が少ない、難治性である」ということが多いです。
そういう時は、そういう治療ができる施設へ連携を求めましょう。できるだけ、早い段階で。
というのも、治験や臨床試験は3相などになってくると「健康状態の良い患者」が優先的に選ばれます。抗がん剤治療を繰り返してしまうと、どうしても骨髄抑制から肺炎を起こしやすくなっていたり(間質性肺炎)、副作用で体力が衰えてしまいがちだからです。そして時々それは治療中に命を落とす危険性をはらんでしまいます。
***自分から行動しよう!***
そのために現代では「セカンドオピニオンに行ってもいいですよ」という医師は増えています。その際に遠慮は要りません。
特に市井の病院では、そんな症例数の少ないタイプに経験はあまりないでしょうし、それに対する治験がどれだけあるか…なんてことよりも、標準治療のカードでどこまで粘るか、を考えるのが市井の医師の役割です。そして、それだって大事なことです。誰に対しても、新薬があるわけではありませんから。
そうしたことを踏まえて、主治医に失礼さえなしければ、2箇所くらい意見を聞きに行っても良いかと思います。
「医者から何かを提案されるのが当たり前」なんていう前時代的な「私待つわ」的感覚は、この際、捨てましょう。ポイです。
***網羅的遺伝子検査、プレジションメディスンのこと***
治験や臨床試験って、実はものすごく沢山あるんです。
その中から、メジャーになるもの(3相まで進むもの)は、ごく僅か。
プレジションメディスンといって、多数の遺伝検査(分子レベルでの病理的な検査)をして、合う薬や治験をデータベースから探す…という仕組みが徐々に出来つつありますが、それが全国の病院の、全ての科で当たり前に行われるようになるのは、もっと先のことでしょう。
この仕組み自体が現在、様々な病院で臨床試験として運用されつつある段階です。
プレジションメディスンの一例:SCRUM-Japan(肺、消化器が対象)、TOP-GEARプロジェクト(固形がん対象)など。
最近、自費でプレジションを行っているクリニックがあるそうですが「自費での診療」は気をつけて下さい。プレジションメディスンのシステム自体は、より早く患者さんと治療薬(治験や臨床試験)を繋ぐシステムです。ですが、現在、原因となる遺伝変異がわかっても、それに対応する治療が必ずしもあるとは限りません。そういったことをきちんと説明でき、臨床試験として提供している病院を選びましょう!
***臨床試験を探すためのサイト***
最初に記したように、細かい条件の確認は試験の担当医に直接、聞いてみないと分かりません。
臨床試験は、待っていても、あっちからはやってこないです。
*大事なことだから、2回言ってみました!
2、3相くらいだと、ある程度は「流行っている」状態になっているので、癌種だけでも比較的探しやすいんじゃないのかなと思います。
昨年のニボルマブやキートルーダ(免疫チェックポイント阻害薬)なんかがそうですね。あと、乳がん/卵巣癌ではPARP阻害薬。これらは治験も3相、2相がほとんどだと思います。
とりあえず、そうしたものでも良いから、まず当たりを付けてみましょう。
◆初心者向けのオンコロ ☆
治験広告から実施施設に繋げられるようにもなっています。
治験実施施設にも治験広告が最近は載るようになっているようです。アンケートに答えていくような感じらしいですが。
(これはごめんなさい、最後まで使ったことはありません)
こちらのサイトは簡潔に、めぼしい治験や臨床試験(主に2〜3相が多い)をまとめていらっしゃるので、最初に探すならこちらの方が良いかもしれません。
治験や臨床試験の用語や、途中経過、薬の作用機序などの情報も掲載されるので、必要な知識も得やすいと思います。
また話題になっている治療法(プレジションメディスンはそれぞれのシステムに関わる人にインタビューをシリーズで行っていて素晴らしいと思います)の特集など、時代にあった記事が読めるのも、患者やその家族にとって有難いと思います。
1番ボリュームがあるのが「がん情報サービス」→☆
臨床試験について☆のページから、基礎知識☆のページをよく読まれておく事をお勧めします。
トップページから「臨床試験を探す」☆を選びます。
そこから臓器別/地域などを絞って臨床試験情報を探す事が出来ます。
ここからJapic-CTIやUMINなどの元の情報へのリンクもありますし、ある程度分かりやすく対象者などの情報や連絡先なども掲載されています。
だいぶ精度は上がっているのかな…?
(去年はわたし、JapicとかUMINを直接調べてました)
「先進医療A」「先進医療B」「患者申出療養」「主たる治験」「拡大治験」まで、結構なボリュームで検索に引っかかってきますので、自分が調べたい治療がどの区分なのか知っていると少し絞り込みが楽かもしれません。
わたし、先進医療なんて、最初は厚労省のサイトしらみつぶしに見てたのに…(涙)
この1年でだいぶ検索エンジン、良くなった気がします。
固形腫瘍とか悪性腫瘍で登録されてしまっている1相の治験情報も、まとめて出てきてしまいますが…最初はある程度、自分の癌種にあったものを選んで見ていくといいと思います。
* ここで自分の癌の病理検査の結果が細かく分かっている方の場合は、そちらの「陽性」の情報から論文などを探して、めぼしい治療薬の情報を得る…ということが出来なくはないかもしれません。
* 例えば私の場合は、逆にトリプルネガティブでも「CK(サイトケラチン)5/6」というものに陰性で、そこから「EGFR陽性タイプかもしれないなぁ」という当たりを付けていていました。その上で今の主治医にオピニオンでその話もしていました。現在はEGFR抗体ではないけれど、その並びにある「ヒト上皮成長因子受容体」の仲間に陽性であることが分かって、その治療薬を使っています。
また、病院の方で実施している治験情報をホームページに掲載しているケースもあります、各地域がんセンターが多いです。
さて、めぼしい治験が見つかり、実施施設が公開されている場合は、その病院へオピニオンを取りに行きましょう。
オピニオンの取り方は、各病院で「担当の科」なのか「セカンドオピニオン専門」の窓口になるのか…が変わってくると思いますので、それぞれの施設のホームページなどで調べてみてください。分からなければ、総合窓口へ問い合わせ電話されるのも良いと思います。
実施施設が分からない場合は、治験情報の問い合わせ先へ。
ここはたぶん、主治医に連絡を取ってもらう方が良いかもしれません…
わたしの場合はある程度、ここならやってるという病院は分かっていたので、主治医から紹介状を送ってもらって、予約をして、オピニオンに行きました。
また、主治医から製薬会社への問い合わせも、してもらったこともありますヨ。治験実施の開始予定について、でしたが…
その際にも、実施される施設の話は出ていたと思います。
***中核病院、という病院***
実は、ある程度は実施施設(中核病院)って決まっているんですよね。
それなりに対応できる設備のある病院(緊急時に対処できる、入院出来るなどの条件が整っている病院)でないと治験や臨床試験は出来ないので…
なので、厚労省に
臨床研究中核病院、及び、特定機能病院に係る患者申し出療養相談窓口設置状況、一覧表→☆
というページが実はあります。
ここからやってますか?と問い合わせをするのも、ひとつの方法だと思います。
***ちょっとマニアックな選び方:病理を知る***
最近の新薬の治験などは、多くが治験に入る前に「スクリーニング」と言って、その薬とあなたの癌が相性が良いかどうか?の検査があります。
通常の病理検査は顕微鏡を使う免疫染色ですが、最近は分子レベルでの検査(遺伝検査)が主流になってきています。(私のは免疫染色でしたが…)
先にスクリーニングだけやってもらっておいて、待っている間は別の治療を進めておくということも、出来なくはありません。
そうしたこともふまえて、治験を考えるなら早めに行動することをお勧めします。
定員や、期間もあるものですから…
それと、上記中でも少し触れましたが、ある程度は免疫染色ででも病理の傾向が分かっていて、その特徴から1相の治験を絞り込む…
ということも、出来なくはないかと思います。
わたしの腫瘍は、通院先での症例報告のために、神経内分泌性腫瘍であるかどうかの病理検査が追加で行われていました。
これが、まぁまぁ項目が多かったんです。
その多くに(というか98%ぐらいw)陰性だったことから…
自分の乳がんはおそらくEGFRに陽性かもしれないなぁ、BRCAでもあるし、タキサンで再憎悪したし…
という特徴が分かっていたので。
多少1相のものも調べた上で、私のはEGFRに陽性じゃないかと思うのですが…?という方向でオピニオンを受けていました。
そういう話ができた方が、意外な試験を提案してもらえることもある…かもしれません。
偶然だったのかもしれませんが、私が今やっている試験との出会いが、そういう流れでいただいた話、治療でした。そしてその治験のスクリーニングで私の生検は強陽性だったので、あるプレジションメディスンの「生検標本」として利用されることに同意をしています。
これはマニアックな人向けの提案なので…
本来は、そこまで調べていく必要性はないと思います(笑)比較的メジャーな治験狙いで、オピニオンを取りに行く、というので良いのかなと。
***まとめ***
とにかく、まず自分からアクションを起こす、ということ。
それが1番大事なことだと思います。
あと、ちょっとの事で挫けない。
交渉では粘り強さも、あるといいかな?相手の凡ミスを逆手に取るくらいの強かさとかも、あって良いと思います。
入れないものに無理やり入ることは、当然出来ませんが…
切り替えて、似た治験や臨床試験の可能性を探る、という意味での根気はあった方がいいです。
***オマケ***
スクリーニングは「治療標的」と関係無い場合もあり…
治験と並行して「バイオマーカー(治療に対する薬理学的な反応の指標として客観的に測定・評価される項目)」を研究しながら試験が進む事もあります。
実は乳がんではキイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬は、当初考えられていたよりも、結果はかんばしくありませんでした。
というのも、乳がんの場合「どういう特徴(バイオマーカー)のある腫瘍に効くか」が今ひとつ掴みきれていなかったようなんですね。どうやら最近になって「TILs」(腫瘍浸潤リンパ球)に鍵があるのではないか、と言われ始めてきています。もしそれがハッキリすれば、乳がんでもキイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬の有効性は高くなるのではないでしょうか。
こうやって、治験や臨床試験の結果や途中経過などが出てくると、ほんとに日々、がん治療を取り巻く環境は変わっていくし、それをキャッチアップしながら患者をリードしてくださっているお医者先生の方々には、ほんとうに頭が下がる思いです。
なので、今の私ができることは、きちんと不調は報告して、ちゃんと副作用の対策も一緒に作り上げること。そして、なるべく笑顔で楽しく診察を受けること!かな(笑)
***不安なあなたへ、私の病院との付き合い方***
臨床試験や治験は、時にヒトで使うのが初めてであったり、予期せぬ副作用があったりもします。治療場所を変えるという不安もあります。わたしも臨床試験に切り替える前、とても悩みました。
よほど主治医と仲違いでもしていなければ、それが普通だと思います。
なので、必ずしもお勧めする、というものではありません。ましてや標準治療が上手くいっているヒトならなおさらです。
ですが、治療困難になったとき、少しでも気になるなら、話を聞きに行くだけでも聞いてみてください。そして、転院に対して不安があるなら、元々の主治医に経過観察に来たいですと伝えてみてください。
私自身は元の病院(地元で家から近い)へ月1程度で報告へ行っています。
2クール目の際に風邪をもらってきてしまったらしく、嘔吐がひどくなり、そのままでは熱中症も併発しそうだったので、使ってはいけない薬などを治験先の病院へ確認し、輸液だけ地元の病院でやってもらってことなきを得る、ということもありました。
地元の病院に行けなければ、救急車で1時間以上、県を跨ぎ運ばれていたと思います。たかが熱中症(意識有り)で。
そういうことも起こるので…よほど非協力的な病院でなければ、地域の病院ともしっかり仲良くしておくこと。特にがんセンターなどの専門病院では普通の風邪などは診察できませんので、かかりつけ医も持つこと、などは是非お勧めしたいなと思います。
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