災い転じてなんになる?
乗った電車は乗客がまばらだった。昨今のご時世を気にしてか、乗客はまるで定められたかのように座席の端に座っている。その等間隔がずっと続く。
まるで鴨川のようだ。
私はふと思った。そういえば母が昔、鴨川のカップル等間隔法則を見ると卵を投げたい衝動に刈られたといってたっけ。
次の駅に着いても乗客は降りないし、乗ってこない。ほんの少し前とは変わってしまった。ある意味異世界のようなものかもしれない。
一定の間隔で異世界転生の小説やマンガ、アニメがの波がくる。この冬のアニメも異世界転生ものがあったなあ。異世界転生ものは、現実世界で人生に絶望した人(絶望していない人もいる)が、転生後の世界で現実世界の記憶を持ち合わせ活躍するという話。若干転生後の方が主人公にとって、楽だったり楽しかったりする。あと特殊能力持ちが多い。
現実世界に絶望した人々が異世界転生ものの主人公とリンクするのだろうか。この世界から消えたいと思う人の心に刺さるからこの分野は流行るのだろうか。
かくいう私もそんなことを心の奥にうっすら宿したことはあったが、まあ実現なんて夢のまた夢。11歳の時に入学許可証が届かなかったんだからどだい無理な話だ。
ただ輪廻があるのならば、次は人間以外になりたい。まあ今までで徳を積んでないので、もう一回人間は難しいだろう。
思考ゲームをしていると電車が駅のホームについた。私は荷物の忘れ物がないか確認し電車を降りる。
やはりだれも降りなかった。
薄暗い長いホームに一人だけ私はいた。