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アブラゼミ

サンダルをはいて、玄関の扉を開ける。日差しと喧騒が一斉に襲いかかる。

鳴き声を聞くと今年はアブラゼミが多いように思う。大声でぐわんぐわん鳴くクマゼミと違って、シャワーで浴びせるように鳴くアブラゼミ。そういや新潟の親戚が大阪に来た時、クマゼミをみて驚いていたなと思い出しながら鍵を掛ける。

日差しが背中を襲う。暑い。これは外に出てはいけない暑さだ。

家の横の小道を通って商店街へ向かう。いつもならたくさんの歩こう同好会なる観光客が通る時期だが、今年は誰もいない。

道中、紫色の朝顔の群生がすでにしおれていた。朝に咲いて昼にはしおれる姿ははかない。しかしその横には新たなつぼみが今か今かと咲き誇ることを待ちわびている。その待っている姿が一番美しいかもしれない。

朝顔を横目でみながら小道を抜け、道路をわたり神社に入る。木陰が気持ちいい。暑さが大分和らぐ。参道を歩きながらふと下をみるとセミの羽が一枚落ちていた。

茶色で黒の網目が入った羽。拾い上げた羽は虹色に輝く。一枚だけ羽を落としていったセミはどこにいったのだろう。時にうるさい声を響かせどこかで鳴いていることを願います。

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