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【SE/米国株銘柄分析】東南アジアを統べる(勢い)のハイパーテックグロース企業「Sea Limited」の概要, ビジネスモデル, 今後の株価見通し(将来性/成長性)を直近決算とオニール流CANSLIMの観点から考察。EC、ゲーム・エンターテイメント、デジタル金融の3本柱でアジアの覇者、そして世界へ。

このマガジンは取り上げた企業の投資を推奨する意図は全くないことを改めて確認いたします。企業の業績チェック、ビジネスモデル、新着ニュースをシンプルに定点観測する読み物です。


東南アジアのグロース企業、シンガポールのEC、ゲーム・エンターテイメント、デジタル金融企業「Sea Limited(シーリミテッド)」を取り上げます。

(最新決算の詳細は以下目次記事に掲載しています↓↓)


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せ!せ!せ!と日本人ホルダーが連呼するのとても好きです。(ティッカーシンボルが「SE」なので「せ」だと勝手に理解)

調べていたら、Garenaの親会社がSea Limitedだったことを知り、驚愕しテンション上がりました。ガレナめっちゃ知ってた(笑)Connectinf the Dots!! コッカラッス!!

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Sea Limitedの「Sea」はSouth East Asiaの略です。ADR銘柄ですね。


ADRとは、American Depositary Receiptの略称で和訳は米国預託証券。「外国企業・外国政府あるいは米国企業の外国法人子会社などが発行する有価証券に対する所有権を示す、米ドル建て記名式譲渡可能預り証書」である。

ADRの預かり対象は、通常は米ドル以外の通貨建ての株式であるが、制度的にはあらゆる種類の外国有価証券でも可能である。1928年のADR創設当初の趣旨は、米国人投資家が外国株式への投資を容易にする仕組みを提供することであり、ドル建てでの売買や配当支払を可能としたことがADRの発展に大きく寄与した。

現在では、当該外国企業に関して米国企業なみのディスクロージャーも求められており、より一般的な投資手段になっている。一方、投資対象となる企業にとっては、米国での知名度向上に加え、資金調達等の経営財務目的のためにも利用される。

(引用:野村證券「証券用語解説集」



Sea Limitedは2017年に上場。コロナショック後に凄まじいリバウンド、そして上昇を見せました。その勢いは今も衰えていません。


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コロナショック時の底値が$35.610。2021年7月18日時点で$267.60。+652%かよ。ADRバブル過ぎる。

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本当にバブルかどうかは中身を見てから言ってみな!

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(`_´ゞラジャ!

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(2021年7月21日時点)

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さて、今回の記事では、「Sea Limited(シーリミテッド)」の会社概要・ビジネスモデルと今後の「株価」の成長性を、直近の決算結果(Q1-2021)、そしてオニールの成長株発掘指標である「CANSLIM」の側面から掘り下げていきます。


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秀次郎(Twitterアカウント)が担当者として随時更新していく予定じゃ。フォローしておいてくだされ。

中身は目次から知りたいところだけジャンプして読むと良いぞよ。全部読むのは大変じゃし、まじで疲れる故に投資を検討した時に「そういえば」的に活用していただけると有難いぞよ。わい自身も活用しておる。

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会社概要


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・企業名:Sea Limited(ティッカーシンボル:SE)
・本社:シンガポール
・設立年月日:2009年
・IPO(上場):2017年10月
・主要事業概要:EC、ゲーム・エンターテイメント、デジタル金融の3本柱(GarenaShopeeSeaMoney)。Garenaは、世界的なオンラインゲームの開発・販売会社。Shopeeは、東南アジアおよび台湾で最大の汎地域的なEコマースプラットフォーム。SeaMoneyは、東南アジアにおけるデジタル決済および金融サービスのリーディングカンパニー。

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以下はSea LimitedのHPトップなのですが、東南アジア感あって良いですよね。ピッコロと悟飯が修行してそうです。

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オフィスも自然と調和してていいですねぇ(小並感)。

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会社の歴史

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・2009年5月8日:持株会社であるGarena Interactive Holding Limited(以下、Garena)をケイマン諸島の有限責任会社として設立。デジタルエンタテインメント事業を開始。

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・2012年9月には、インドネシア、台湾、ベトナム、タイ、フィリピン、マレーシア、シンガポールなど、GSEA(ASEAN +台湾)全域に事業を拡大。
・2014年4月:ベトナムでデジタル金融サービスプラットフォーム「SeaMoney」プラットフォームを開始

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・2015年6月:GSEAの全7市場で電子商取引プラットフォーム「Shopee」の提供を開始。

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・同年:世界最大級の年金基金、オンタリオティーチャーズペンションプラン(OTPP)がGarenaに出資(25億米ドル以上)。
・2017年4月8日:社名を「Garena Interactive Holding Limited」から「Sea Limited」に変更。
・2017年10月:IPO(NYSE上場、IPO前のSea Limitedの大株主はテンセントで39.7%の株式を保有)
・2020年1月:Dauntlessの開発元であるバンクーバーのPhoenix Labsを買収。

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とりあえず東南アジア最強のIT企業であり、アメリカで言うアマゾンスクエアPayPal、そしてブリザード・エンターテインメント(World of WarCraftとかディアブロとかのアレです)が合体したような企業ですね。東南アジア最強と(2回目)。

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CEOの経歴


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CEOは、Forrest Li氏です。タンフォード大学ビジネススクールでMBAを取得し、上海交通大学で工学の学士号を取得。


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ウルトラハイスペック人材です。EDBの理事を務めているなんて。シャングリラはあの日本橋にある高級ホテルですね。

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2009年5月の創業以来、SeaグループCEOを務めています。

シンガポール経済開発庁(Singapore Economic Development Board)の理事、シャングリ・ラ アジア リミテッド(Shangri-La Asia Limited)の独立社外取締役を兼任しています。

シンガポール国立大学の評議員、スタンフォード大学ビジネススクールの諮問委員会の委員も務めています。


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アジアのドンファンって感じやね〜。紀州のドンファンとは格が違うけど。

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主要プロダクト(Garena、Shopee、SeaMoney)

Sea Limitedが展開している事業は上記の同社の歴史でも述べましたが、EC、ゲーム・エンターテイメント、デジタル金融の3つです。


■ Garena(ゲーム・エンターテイメント)

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「Garena(ガレナ)」はSea Limitedが最初に始めたゲーム・ソーシャルプラットフォーム事業です。東南アジア諸国と台湾でゲームを配信。Seaの名前も元はGarenaでした。

Garenaの最初の自社開発作品は「Free Fire」スマホ向けバトルロイヤルゲームです(2017年には登録ユーザー数が4.5億人を突破)。


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FREE FIREの他にも「League of Legends」と「Heroes of Newerth」「FIFA Online 3」「爆走ドリフターズ」などが有名です。


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FIFA Onlineもそうだったのか。バトロワゲームだけだと思ってました。

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「Garena Premier League」(GPL)という6ヶ月間のオンラインプロゲームリーグを立ち上げており、100試合以上が行われます。GarenaはeSports領域を牽引する存在といえます。


■ Shopee(E-Comerce)

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Shopeeは東南アジアと東アジア、そしてブラジルやメキシコなどのラテンアメリカのいくつかの国でサービスを提供。

Tech In Asiaに「2015年に見た5つの破壊的なeコマーススタートアップ」の1つと呼ばれました。


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ARKがテスラスクエアに対して使う「Disruptive Innovations」という言葉と近いものがあります。こちらはeコマースに絞られていますけど。

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ShopeeはC to Cマーケットプレイスから始まったサービスです。日本で言えば「メルカリ」と考えれば良いです。現在はB to Cも展開しておりハイブリッドです。メルカリ×アマゾンというイメージです。

"Shopee Guarantee "と呼ばれる安全に支払い取引が行われる仕組み(エスクロー口座活用)を構築しています。東南アジアなどで展開するにあたり取引の安全性は特に重視されそうですよね。また配送のピックアップサービスも充実させています。これらの仕組みが非常に各方面で賞賛されています。

インドネシアでは地場企業のTokopediaを上回るGMV(流通量総額)142億米ドルでトップに立っています。

Shopee pulls ahead of Tokopedia in Indonesia as e-commerce thrives

ちなみに、Shopeeは2018年にYGグループとのパートナーシップの一環として、Blackpinkを初の地域ブランド・アンバサダーに任命しています。


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世界のブラピンをアンバサダーに...!!(ごくり

ちなみに彼女らはYouTubeのチャンネル登録者数は女性音楽アーティストとして世界No.1の大物グループです。(BTSは世界的権威であるビルボード200で1位取るし韓国のエンタメはヤヴァイです)

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■ SeaMoney(Airpay、デジタル金融)

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SeaMoneyは、電子ウォレットサービス、決済処理、クレジット関連のデジタル金融商品、その他の金融商品を提供。PayPalのVenmoのように、様々なサービスブランド(AirPay、ShopeePay、ShopeePayLater)があります。

SeaMoneyは、ほぼ全ての市場においてShopeeに対して決済処理サービスを提供。収益は第3者加盟店への手数料徴収、信販事業における借り手からの利息収入。


業績(Q1/2021決算)


「Sea Limited」は、上記で見てきた通り、EC、ゲーム・エンターテイメント、デジタル金融の3本柱で事業を行なっております。


さて、企業決算分析をする上で、最優先で見なければならないのは、「実績(売上高・EPS・来期予想ガイダンス)」が決算前のアナリスト予想をしっかり上回っているかどうかです(ガイダンスを出さない企業もあるので注意)。

Sea Limitedの2021年第1四半期決算(2021年5月18日)は以下の通りの結果でした。

Q1-2021:Sea Limited First Quarter 2021 Results


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□ 2021年第1四半期決算結果:

※YoY = year over year(前年同期比)

・売上:$1.76B、YoY+147%(アナリスト予想:$1.81B)→×
・EPS:-$0.62、(アナリスト予想:-$0.46)→×

□ Digital Entertainment

・Bookings: $1.1B、YoY+117%
・GAAP売上高: $781.3M、YoY+111%
・四半期ユーザ数: 648.8M、YoY+61%
・四半期課金ユーザ: 79.8M、YoY+124%


□ E-commerce

・GAAP売上高: $922.3M、YoY+250%
・注文数: 1.1B、YoY+153%
・GMV: $12.6B、YoY+103%


□ Digital Financial Services


・GAAP売上高:$51.3M、YoY+396%
・Monile Wallet:$3.4B〜(総支払額)
・四半期課金ユーザ:26.1M〜

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実績はアナリスト予想を超えていません。決算はミスしているのですが、それでも株価が伸びるのは、あまりにも期待が大きすぎる面、または内容が非常に良いことが推察できます。

それでは詳細を見ていきましょう。因みに次回の決算は2021年8月24日に予定されています。


■ Revenue(売上高)


Q1-2021:$1.76B、YoY+147%(アナリスト予想:$1.81B)

市場予想を超えられず。素直に決算を外しています。


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以下は過去の売上推移です。成長率はまさに「ハイパーグロース」という水準です。アナリストの予想が高すぎるようも見えてしまいます(失敗は失敗です。サプライズが大事です)。

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※YoY = year over year(前年同期比)

Q1-2018:$0.16
Q2-2018:$0.18
Q3-2018:$0.20
Q4-2018:$0.28
Q1-2019:$0.35B(YoY+118.8%)
Q2-2019:$0.44B(YoY+144.4%)
Q3-2019:$0.61B(YoY+205%)
Q4-2019:$0.78B(YoY+178.6%)
Q1-2020:$0.71B(YoY+102.9%)
Q2-2020:$0.88B (YoY+100%)
Q3-2020:$1.21B(YoY+98.4%)
Q4-2020:$1.56B(YoY+100%)
Q1-2021:$1.76B(YoY+147%)←New!!

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■ EPS(1株当たりの当期純利益)


Q1-2021:-$0.62、(アナリスト予想:-$0.46)

EPSも予想を越えられずシンプルに外しています。今まで銘柄分析をした中でここまで華麗に外している成長株企業、且つ株価が伸びている企業は見たことがありません(笑)


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EPS予想は「Yahoo Finance」で取れます。アナリストは保守的に予想を出すため、決算企業はこれを超えなければ市場から好感されません。


Sea limitedの過去EPS(non-GAAP)の推移は以下の通りです。


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Q1-2018:-$0.61
Q2-2018:-$0.59
Q3-2018:-$0.70
Q4-2018:-$0.95
Q1-2019:-$0.64
Q2-2019:-$0.48
Q3-2019:-$0.38
Q4-2019:-$0.53(N/A)
Q1-2020:-$0.52(N/A)
Q2-2020:-$0.68(N/A)
Q3-2020:-$0.69(N/A)
Q4-2020:-$0.87(N/A)
Q1-2021:-$0.62(N/A)

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ずっとマイナスです。U字回復を目指すベンチャーにはありがちなEPSですが、このような場合マイナスだからダメな会社、と見るのではなく、売り上げの成長率、市場予想を上回る決算を出せるかに注目します(Seaは下回っているのですが...)


企業KPI

■ Digital Entertainment

□ Bookings


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※DE=デジタルエンタテイメント
※DE Bookings=DE事業のGAAPベースの売上高に、DE事業の繰延収益の変動を加えたもの(会計上まだ収益認識されないものも加算、未来予測が立てやすい)。

Q1-2021:$1.1B、YoY+117%と前年比2倍以上。

来期の決算も強い成長がこの時点である程度見込めます。


□ GAAP売上高


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※DE GAAP Revenue=デジタルエンタテインメントのGAAP収益

Q1-2021:$781.3M、YoY+111%。

デジタルエンタテイメント事業がSea Limitedの収益の約半数を占めていることがわかりますね。


□ ユーザー数


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Q1-2021:アクティブユーザーの増加率はYoY+61%、課金ユーザーはYoY+124%です。

毎四半期、お金を落とすユーザー数が加速しています。Sea Limitedのビジネスセンスを感じますね。


■ E-commerce

□ GAAP売上高


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Q1-2021:$922.3M、YoY+250%。EC事業が圧倒的な収益を支えています。


□ 注文数・GMV


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Q1-2021:注文数:1.1B、YoY+153%

Q1-2021:GMV:$12.6B、YoY+103%


■ Digital Financial Services

□ GAAP売上高


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Q1-2021:$51.3M、YoY+398%


□ モバイルウォレット総支払額


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 Q1-2021:>$3.4B、YoY+200%以上

□ 四半期課金ユーザ


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Q1-2021:>26.1M、YoY+145%以上


財務状況(資本配分/自社株買い/M&A)

■ 資本配分

直近では、2020年12月に公募増資(11,000,000〜13,200,000のClass A 米国預託株式(ADS)を販売)。一株あたり$195。公募増資の価格は今は大幅に上回っています。

Sea Limited Announces Proposed Offering of American Depositary Shares

公募増資は企業の資金調達であり、健全な施作です。テスラの記事で説明しましたが、At The Market Offeringをする企業は投資家に嫌われます。


■ M&A

2020年1月:Dauntlessの開発元であるバンクーバーのPhoenix Labsを買収。

ゲーム事業の強化ですね。


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SEのCANSLIM考察


「CANSLIM」は成長株発掘法の著者、ウィリアム・オニール氏の成長株の見極めに用いられる判断指標です。


オニール氏の理念は以下です。

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・CANSLIMを満たすかどうかで真の成長株かどうかを見極める。
・株価チャートで売買のタイミングを測り大きな利益の獲得を狙う。

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CANSLIMとは以下の頭文字です。これら全てを満たすと「大化け株」となります。(満たしていなくても有望銘柄として売買はOK、投資家の技量が試される)


■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

・C(=Current Quarterly Earnings=当四半期のEPSと売上)
・A(=Annual Earnings Increase=年間EPSの増加、高いROE水準)
・N(=New Products, New Management, New Highs=新興企業、新製品、新経営陣、正しい株価ベースを抜けて新高値)
・S(=Supply and Demand=株式の需要と供給)
・L(=Leader or Laggard=主導銘柄か、停滞銘柄か)
・I(=Institutional Sponsorship=機関投資家による保有)
・M(=Marker Direction=株式市場の方向)

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


また短期投資・中長期投資などと投資手法を分けず、「正しい銘柄を正しいタイミングで売買する」としています。

短期投資か長期投資かという選択はほぼないはずだ、ということです。

良い銘柄はそもそも売り時を与えてくれず、そのまま何倍株になると言っています。


まずは、CANSLIMを通して、Sea Limitedはオニールが定義する「大化け株」と言えるのかどうかを見ていきましょう。

筆者がSea Limitedで行った2021年7月22日時点の判定結果は以下の通りでした。

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C:×
A:×
N:◯
S:△
L:◯
I:◯
M:△

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はっきりとした大化け株ではなく、しかも決算もしくじっている(笑)Sea Limitedですが、株価の動きは有望銘柄そのものです。

値動きの趨勢が上を向いた時を狙い澄まして、投資をしていっても良い銘柄として筆者自身は捉えています。それでは各項目の詳細を見ていきましょう。


■ C(=当四半期のEPSと売上) X

C(=Current Quarterly Earnings)を見ていきます。

ここでは以下の2つを判定します。


■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

⑴ 当四半期のEPSが前年同期比で25〜30%以上か?
⑵ 売上が25%(または直近3四半期で伸び率が加速)以上伸びているか?

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


⑴ 当四半期のEPSが前年同期比で25〜30%以上か?

当四半期のEPSが前年同期比で大きな伸び率を示しているかどうかを見ます。最低目標は25〜30%です。より保守的に見るのであれば40〜500%です。

Sea LimitedのQ1-21のEPSは-$0.62とマイナスです。YoYは計測できず、「×」の判定になります。


⑵ 売上が25%(または直近3四半期で伸び率が加速)以上伸びているか?


次に売上の伸びを見ていきます。直近3四半期で25%以上伸びていますので、こちらも余裕でクリアですね。確認しなくてもわかります。


■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

※YoY = year over year(前年同期比)

Q1-2018:$0.16
Q2-2018:$0.18
Q3-2018:$0.20
Q4-2018:$0.28
Q1-2019:$0.35B(YoY+118.8%)
Q2-2019:$0.44B(YoY+144.4%)
Q3-2019:$0.61B(YoY+205%)
Q4-2019:$0.78B(YoY+178.6%)
Q1-2020:$0.71B(YoY+102.9%)
Q2-2020:$0.88B (YoY+100%)
Q3-2020:$1.21B(YoY+98.4%)
Q4-2020:$1.56B(YoY+100%)
Q1-2021:$1.76B(YoY+147%)←New!!

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


⑴EPSは「×」、⑵売上は「◯」です。

C(=Current Quarterly Earnings)はEPSがマイナスはインパクト大きく、厳しめに「×」でしょうか? 


■ A(=年間EPSの増加、高いROE水準) X


ここでは以下の2つを判定します。

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

⑴ 年間EPSが過去3年連続で増加しているか?
⑵ 企業のROEが最低でも17%を超えているか?

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


⑴ 年間EPSが過去3年連続で増加しているか?


年間EPSが過去3年連続で増加しているかどうか、増加率が25〜50%以上の銘柄かを見ていきます。2年目のEPSが下がっている銘柄は除外されます。

Sea Limitedの過去の年間EPSを見ていきます。


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2018:-$2.85
2019:-$2.03
2020:-$2.76

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Sea Limitedはまだまだ成長のステージにあり黒字にはなっておらず、成長率が測れる段階にありませんね。

売上については2020年は余りある成長をしており、2021年もその好調さは継続している点をどのように捉えていくかが肝要ですね。ここではひとまず「×」とします。


⑵ 企業のROEが最低でも17%を超えているか?


ROEが最低でも17%を超えているかどうかをチェックします。

Sea Limitedはそもそも赤字なのでROEは測れません。ここでもひとまず「×」とします。


⑴⑵合わせて、ここではA(=年間EPSの増加、高いROE水準)は「×」とします。


■ N(=新興企業、新製品、新経営陣、正しい株価ベースを抜けて新高値) ◯



N(=New Products, New Management, New Highs)を見ていきます。

株価が驚くような上昇を見せるには何か新しいもの(収益増加率を加速的に伸ばす原動力)が必要です。


Sea Limitedのゲーム・エンターテイメント事業は今後ますます盛り上がりを見せるeSports分野です。

株式会社KADOKAWA Game Linkageの「グローバルeスポーツマーケットレポート2020」によると、2020年の世界のeスポーツの市場規模は約9億7390万ドル(前年比+1.7%)。同レポートでは、eスポーツ市場は今後も拡大を続け、2023年には15億9820万ドルに達するとの予想を発表しています。

<参考>世界のeスポーツ収入源の内訳(2020年)

・スポンサーシップ:5億8410万ドル(前年比+7.5%)
・メディア権:1億6330万ドル(同+3.3%)
・パブリッシャー提供資金:1億890万ドル(同-11.6%)
・グッズ&チケット:7620万ドル(同-27.9%)
・デジタル:2150万ドル(同+60.9万ドル)
・ストリーミング:1990万ドル(同+44.9%)

(引用:市場規模9.7億ドル超!拡大し続けるeスポーツ市場


EC事業のShopeeは注文数がYoY+153%、GMVがYoY+103%と東南アジアのアマゾン×メルカリとして快進撃を続けています。この事業は目新しさこそありません。

しかし、まだまだインフラが整っておらず安心して取引ができない東南アジアで事業を拡大している点は、「オンラインショップ」というインフラ整備をしているに近いイメージなのではないかと考察できます。


デジタル金融事業はPayPalやSquareと同様の見方ができます。キャッシュレス社会を東南アジア諸国で事業を通じて実現する点は、タイムマシン経営を彷彿とさせます。

上記3事業を考えると、「◯」と考えても良さそうです。


さて、N(=New Products, New Management, New Highs)は正しい株価ベースを抜けて最高値であるという条件も加わります。チャートを確認しましょう。

以下は7月21日時点のチャートです。

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新値を抜けては下落、を繰り返しています。ここでもう一段、強い出来高が欲しいところですね。抜けていけば青空天井です。


結論、現時点でSea LimitedのN(=New Products, New Management, New Highs)は「◯」でしょうか。


■ S(=株式の需要と供給) △


S(=Supply and Demand)を見ていきます。


Sは以下の複数項目があります。一つずつチェックしていきます。

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⑴ 浮動株比率(大企業(米国基準で時価総額100億ドル以上)であれば経営陣が1-3%、中小企業であればそれ以上が望ましい)
⑵ 自社株買いをしている企業かどうか。
⑶ 企業の負債比率が低く推移しているかどうか。
⑷ 直近の出来高(機関の大きい買いが確認できるか)

■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■


⑴ 浮動株比率(大企業(米国基準で時価総額100億ドル以上)であれば経営陣が1-3%、中小企業であればそれ以上が望ましい)


例えば、発行済株式数が5,000万株ほどの比較的供給量の少ない銘柄ならある程度の買いが入ります(その分リスクも隣り合わせです)。

Sea Limitedの総発行株式は524.43百万株です。

(2021年7月21日時点データ)

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Sea Limitedの浮動株の数を見ていきます。

大企業(米国基準で時価総額100億ドル以上)であれば経営陣が1-3%、中小企業であればそれ以上が望ましいです。企業として株価上昇に対する努力への期待度を示します。


■□━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□■

・Shares Outstanding(総発行済株式数):524.43百万株
・Float:(浮動株式数):289.98百万株
・浮動株比率:55.2%

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Sea Limitedの時価総額は2021年7月21日時点で1,540億ドル(約15兆円)なので「大企業」です。


簡易的ではありますが、同社の浮動株比率は55.2%(つまり残りは45%)。経営陣が保有している株式比率が1-3%を大きく上回っています。こちらは「◯」です。


⑵ 自社株買いをしている企業かどうか。


上記「財務状況」の項目でも触れましたが、オニール流の「自社株買いをしている企業が望ましい」という点については、 Sea Limitedは満たしていません。アップルやペイパルのように積極的な自社株買いを行う方針は出していません。

「×」です。


⑶ 企業の負債比率が低く推移しているかどうか。


次に、総資本に対する負債比率の低い企業かどうかを見ていきます。

過去2-3年で負債比率が減少していれば、利息支払い費用が削減されEPS向上が見込まれます。


特にIPOしたばかりのグロース株は収益が小さいため、この利息費用のインパクトが大企業に比べて大きいので、しっかり見ておく必要があります。


(Balance Sheet)

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December 31, 2020/2019

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December 31, 2018



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■ 2020年12月31日

総資本:10,455 million
負債:7,035 million
負債比率:67%

■ 2019年12月31日

総資本:5,224 million
負債:4,052 million
負債比率:77.5%

■ 2018年12月31日

総資本:2,193 million
負債:2,432 million

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2018年時点で累損を抱えまくっていて度肝を抜かれました。その意味では2020年まで改善を続けています。資金調達と負債でキャッシュを回し大勝負に出ている企業であることが数字からひしひしと伝わってきます。


負債比率は年々下降しているので、機械的に判断するのであればこの項目は「◯」です。資金をぶん回して企業成長も実際にしています。


⑷ 直近の出来高(機関の大きい買いが確認できるか)

最後に、直近の出来高についてです。

(見難いのでクリックして拡大推奨)

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5月10-13日に売り込まれ、5月20日に株価前日比+8.6%と大きな出来高を伴い回復しました。しかし、その後あまりにも音沙汰のない出来高推移です。3ヶ月の平均出来高は3.14M、直近一週間は特に出来高が少ないですね。


こんな中で株価は上昇を続けてしまっています。

スクリーンショット 2021-07-22 12.05.22


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これはキナ臭いですね。もうちょっと分厚い胸板...じゃなくて「出来高」が欲しいです。ちょっとしたインパクトで強めの下落になってしまいます。

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⑷は上昇に伴う出来高の増加が確認できるかですが、厳しめに「×」でいきます。


⑴「◯」⑵「×」⑶「◯」⑷「×」でS(=Supply and Demand)は「△」とします。


■ L(=主導銘柄か、停滞銘柄か) ◯


業界内で最高の業績を記録しているかどうかを測る「L(=Leader or Laggard)」を見ていきましょう。

ここでは業界内上位2-3銘柄に入っているかどうかを判断します。


これは、レラティブストレングス指数が80〜90台かどうかで判断をします。

レラティブストレングス指数とは、ある特定の銘柄の値動きを市場の残りの銘柄の値動きと過去五二週間にわたり比較するものです。 各銘柄に1~99の数値が割り当てられ、高ければ評価が良いと判断されます。


2021年7月21日時点のSea LimitedのRS Rateは92でした。

スクリーンショット 2021-07-22 12.05.22


銘柄検討を実施する大前提となる80の数字を上回っています。Sea LimitedののL(=Leader or Laggard)は「◯」です。


■ I(=機関投資家による保有) ◯


I(=Institutional Sponsorship)を見ていきます。

株価を押し上げるには大きな需要が必要です。投資信託、年金基金、ヘッジファンド、保険会社など。機関投資家に保有されている銘柄であるかどうかが非常に重要になります。


また、その機関投資家は高いリターンを出す優秀な組織体(ファンド)なのか?という点も大切です。

見極め方として、最近の四半期で保有する機関投資家の数が着実に増加しているか、株主数が著しく増加しているか。


また株主となった機関投資家は誰なのかまで詳しく調べます。

「優秀なファンドが大人買いしているか」を満たさなければならないのでかなり高度な判定です。

まずはSea Limitedの機関投資家保有株数の直近の動きです。2021年3月末までの動きを見ていきたいところです。


スクリーンショット 2021-07-22 12.41.57


年末にかけて非常に投資家が増えたことがわかります。過去よりズンズン来ていますね。投資家の期待がよくわかります。


以下はMarketSmithで確認できる、Sea Limitedに投資をしている機関投資家(ファンド)の数です。こちらも増加傾向にあることが確認できます。

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Sep-20:860
Dec-20:1152
Mar-21:1322
June-21:1527

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但し、ファンド数が増えても、優秀なファンドが買っていなければ、その銘柄は有望ではありません。


直近の株主は以下の通りです(Yahoo Finance:Holders)。名だたる投資ファンドがSea Limited株を保有し続けています。


Top Institutional Holders(機関投資家保有上位)

画像60


Top Mutual Fund Holders(投資信託(ファンド)保有上位)

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ベンチマークを超えるリターンを超えることが使命とされるのがアクティブファンドです。


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Sea Limitedなのですが、一流ファンドに投資されすぎて驚嘆の一言でした。東南アジアのテックグロース企業といえばここしかない!ということなのでしょうか?控えめに言ってやばすぎます。

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□ ファンド名(保有数量順)・・・10year Average Performance(Before Tax)

Price (T.Rowe) Blue Chip Growth Fund Inc. ・・・18.32%
Price (T.Rowe) Growth Stock Fund Inc.・・・ 17.96%
Artisan Developing World Fund・・・26.29%(5y)
Franklin Custodian Funds-Dynatech Fund・・・19.32%
New Perspective Fund Inc・・・12.67%
Price (T.Rowe) Global Technology Fund・・・24.28%
Fidelity Advisor Growth Opportunities Fund・・・21.87%
JP Morgan Emerging Markets Equity Fund・・・126.7%

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直近四半期で機関投資家の保有数量も上昇、現在の上位株主から、優秀なファンドにも購入されていることが確認できます。I(=Institutional Sponsorship)は「◯」という判定になります。


■ M(=株式市場の方向) △


M=Marker DirectionはSea Limitedに関わらず全銘柄に関わることです。

「強気相場」であればハイパーグロース株を積極的に買っていっても良いとされています。2021年7月21日現在は「上昇相場頭打ち」です。警戒しつつ、値運びが軽く強い業績を叩き出している企業のみ投資をして良い段階です。


その根拠は週刊レポートで確認してください(毎週末に定期更新)。

米国株式市場:今週の合戦の振り返り!


2021年7月21日時点の株価チャート

スクリーンショット 2021-07-22 12.05.22


2021年2月に天井をつけ、3月〜4月の大型調整後(ハイパーグロース全般のマルチプルコンストラクション)で大きく一度下げました。その後5月に再調整し、5月20日大きく出来高を伴った株価上昇を記録しました。

しかし、その後は株価はふわふわ上昇しているものの、出来高が薄く少し不安を感じるチャートです。チャート的には買い場です。しかし、大きな出来高がコツンと入ったところで漸く安心して保有できそうですね。



-完-

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