幕末エピソード2 映画ヒットして 聖地巡礼してんのかってくらい来る
それでは前回の軽いおさらいを
ペリーちゃん、黒船で日本にやって来る。
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幕府大あわて。
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とりあえず、アメリカからのお手紙受け取る。
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ペリーちゃん「来年またくるよ」宣言。
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みんなから意見聞いて、幕府の力、パワーダウン。
幕末エピソード2です
浦賀に突如現れた黒船。
さんざん振り回された徳川ジャパンは、「また来るよ」と言ったペリーさんに頭を抱えます。
幕府の人「いったんペリー帰ったけど、これからどうすりゃいいんだよ……」
幕府の人「あのー……。眉毛が八の字中、申し訳ありません。今度はロシアが来てますが……」
追い討ちをかけるように、今度はロシアのプチャーチンって人がやって来て、幕府は大いにグズります。
プチャーチン「仲良くしよっか? ねぇー開国しようよ~!」
幕府の人「ロシアもアメリカと同じようなこと言ってきた! これ……どうすんのよ!?」
おもくそテンパる幕府ですが、それに負けじとテンパった人物が、香港にいたペリーさんでした。
ペリー「ヤバいヤバいヤバい! 最初に開国させてこそ、有利になることがいっぱいあるんだ!! 他の国に先を越されちゃまずすぎる……日本行くぞ!」
ペリー部下「えー! 真冬の海渡るのキツーい! ヤダー!」
ペリー「文句言うな! ほれ、タータターンターンターンターン!♫」
ペリー部下「………タータターンターン……」
全員でアメリカ国歌を歌いながら(歌ってないと思います)、予定前倒しで、再び日本にやって来ます。
予告通り、船増えて、7隻で日本到着(あとで追加されて9隻)。
日本側「……次に来るのは春って言ってましたよね? こっちは、将軍様(12代家慶)が亡くなられて1年経ってないんです。バタバタしてるこの時期に来られても……。それに、ここ江戸湾(今の東京湾)すよ。前回浦賀で今回江戸湾……。さすがに江戸に近づきすぎです。あの、浦賀か鎌倉に移動してもらえませんか」
ペリー「ムリです。江戸行くから」
日本側「じゃ横浜」
ペリー「あーね」
話し合いの場所は、横浜村(横浜市だよ)に決定します。
で、移動して早速、
ペリー「お手紙の返答ください」
もう絶対、何らかの答えを出さなきゃダメ。もうちょい待ってよ、なんて言えない状況。
こうなると大事なのは、"譲れない"部分をはっきりしておくことです。
交渉にあたった、林大学頭(はやしだいがくのかみ)さん、ゆずれない願いを抱きしめます。
林大学頭「石炭や食料を提供するとか、難破したら保護するとかはオッケーです」ペリー「マジで!? いいねー!」
林「ただし……"貿易"は無理です!」
ペリー「はにゃ?」
林「鎖国は日本の昔からの法律! 欧米との貿易はその決まりを破ることになる! だから、貿易だけはできない!!」
ペリー「うん、別にいいよー」
ゆずれない願い、抱きしめてもらえました。
貿易をやったら、今まで築き上げた幕府のルールが崩れ、さらには、欧米に侵略される危険性も出てくる……林さん、そこだけは突っぱねたんです。
でも、ペリーさんは貿易以外の要求が通ったことに大満足で、それにオッケーサイン。
ということはつまり……。
200年以上続いていた"制限された交流"が……。
おわりです。
ペリー&林「条約……結ぶぞーーー!!」
ということで、
日米和親条約(にちべいわしんじょうやく)
って名前の条約が結ばれましたとさ(『神奈川条約』って言ったりもするよ)。
主な内容はこんな感じ(全部で12ヶ条ね)。
1、アメリカと日本は、永久に仲良しね。
2、下田港(静岡県)と箱館港(北海道)開いてね。ここでは薪、食料、石炭がもらえることにしまーす。
3、アメリカの船が難破したら、乗ってる人保護してね。
(中略)
9、今後もし、日本が他の国ともっといい条件で条約結ぶとするよね。そしたらその条件は自動的にアメリカにもあてはまることにしてー("最恵国待遇(さいけいこくたいぐう)"っていうよ)。
11、下田に、外交官の人おかせてね(これ、後でポイントになってくる項目)。
このあと、場所を下田に移して話し合いが続き、細かい条約が決定します(『下田条約』ってんだ)。
海外への窓を少しだけ開けた日本。
しかし、これから続く、異国との新鮮すぎる交流は、この後あっと驚く大ハプニングを続々箱買いしていくようなもん(間違えがちだけど、この時点じゃ"完全に開国"してないよ。貿易オッケーしてないんで)。
さて、ペリーさん再来日からの条約で、「これまで以上に外国に備えるぞ」と、決心を固めたのが、
「もっと改革だーー!!」
と、幕府の中心で改革を叫ぶ阿部正弘。
諸藩がデケー船造るのを解禁したり(禁止されてたのよ)、
人材を育てるため、いろんな施設を作り上げたりします(講武所(こうぶしょ)、長崎海軍伝習所(ながさきかいぐんでんしゅうじょ)、蕃書調所(ばんしょしらべしょ)っての作るよ。蕃書調所は東京大学の元になった1つっす)。
前回からの色とりどりの改革をまとめて、
安静の改革
って言うんですが、気になったら気にしといてください。
そんなこんなで、外国がやって来ることに備えてたら……来るんですね、条約の噂を聞きつけたみなさんが。
イギリス「聞いたよぉ。アメリカと条約結んだんだってぇ?」
日本「な、なんですかあなたは! 急に来て……!」
イギリス「ずるいなぁ、アメリカとだけ楽しいことして……オレとも条約結んでくれよぉ」
日本「な、なにを言ってるんですか……そんなことできるわけな……」
イギリス「いいじゃねーかよ!」
日本「きゃっ!」
日英和親条約締結。
ロシア「オレもだ!」
日本「きゃっ!」
日露和親条約締結。
オランダ「こっちもだよ!」
日本「きゃっ!」
日蘭和親条約締結。
結んだというか、結ばされたというか、こんなに連続で結ぶ? ってくらい結んじゃう幕府。
結んで(条約)、開いて(開国)、手をうって(合意して)、結んで(条約)。 また開いて(開国)、手をうって(合意して)、その手を上に(お手上げ状態)……
(房野オリジナル『むすんでひらいて 幕末ver.』でした)
結んで開き疲れた幕府……ですが、欧米のみなさんはまったく休憩をくれません。
開国ダ・カーポをかまして、またもや、Aメロアメリカの登場。
条約の中にあった『11、下田に、外交官の人おかせてね』の約束通り、初代駐日領事(はじめて日本に住む外交官)、
タウンゼント・ハリス
が、どんぶらこやってきます。
ハリス「おじゃましまーす」
日本側「ちょちょちょちょちょちょちょ。あの……聞いてないです」
ハリス「え? 条約にあったでしょ」
日本側「あったけど、『両国(日本とアメリカ)政府が話しあってオッケーなら』って、なってましたよ。まだ何にも話し合ってないですよね?」
ハリス「違いますよ、『両国政府の”どちらか"が、オッケーなら』ですよ。で、アメリカがオッケーなんで、上がらせてもらいます。多分ですけど、通訳するときに行き違いがあったんでしょう。どっちの言い分が正しいかなんて、お互いの政府レベルで話し合う事。私の知ったこっちゃありません。ですので絶対上がります」
日本側「止めてもムダ感がすごい」
結局、ハリスさん上陸。
で、ソッコー
ハリス「江戸に行って、将軍に会いたいです」
幕府「将軍に!!?」
幕府のみなさんの心臓が、「ヒャっ!」て声と共に、"キュっ!" となります。
そのときの日本人からすれば、外国人が日本の中心地へ入ってくるなんて、ましてや我らが将軍様に直接会うだなんて、考えられない……。
前例がない。アメリカ人得体が知れない。大事な人に、よくわかんないヤツを会わせたくない。イヤだイヤだイヤだ。
幕府側のみなさんは、ハリスさんの要望をのらりくらりかわして、なんとか下田に押しとどめようと頭をひねります。
下田奉行「ハリスさん、下田でお話ししましょ? ね? ここはいいところでしょ? 下田でお話ししましょ!」
ハリス「下田でねぇ……じゃ、ちょいと条約でも結びますか」
下田奉行「じょ、ジョウヤク?」
ハリス「日米和親条約を、チョコっと補う感じのやつを結びませんか?」
下田奉行「補う…条約…………あー、ですね! 結びましょ結びましょ! いやー、結びたいな! もう三度の飯より結びが好きです! あ、これだとおむすびが好きみたいで、『おい! それも飯だろ!』って言われちゃいますね……? ハハハハハハハ! さ、結びましょー!」
ハリス「………………はい」
日米追加条約(下田協約)ってのが結ばれます。
ハリスさんに満足してもらった下田奉行や幕府は、とりあえずひと安心。「よかった〜」と胸を撫で下ろしている幕府に対して、ハリスさんは言います。
ハリス「で、将軍に会えるのはいつですか?」
それとこれとは別ハリス。
条約結んだら、満足するのかと思ったけど関係なかった。
ただただ条約を追加されただけ……やってしまった…。
これで幕府の心がポキっ……。
幕府「…………わーーかりましたよ!! じゃ、もう江戸に来てください!!」
ハリスさんの江戸行き、将軍との会見、決定。
そして、何万という見物人が騒ぐ中、花のお江戸にハリス見参。
ついに、13代将軍・徳川家定(いえさだ)との会見。
ハリス「ずっとお友達でいましょ! これ大統領のお手紙です」
家定「手紙ありがとう。お友達でいましょ!」
おわり。淡白。イェイ(ギュッとまとめるとこんな感じ)。
しかし、本当の目的はここからです。
ハリスが江戸に来た理由はただ一つ……
"貿易"
の約束を取り付けるためなんですから。
そのための交渉相手は、リアルに政治を動かしてるやつ。
ハリスさんのターゲットは、老中首座(総理みてーなやつ)のバトンを阿部正弘さんから引き継いだ、
堀田正睦(ほったまさよし)
さんて人でした。
将軍との会見から数日後、ハリスっちは、堀田っちへ言います。
ハリス「ねぇねぇ。今度堀田っちの家行っていい?」
堀田正睦「うん! いいよー!」
ハリス「じゃみんなに声かけといてー!」
というアポがとられ(かわいいね、こんなんだったら)、堀田正睦邸に、ハリスと幕メン(幕府のメンバー)が集合します。
しかし、集まった幕メンは、ハリスにとんでもねー武器でぶん殴られることに……。
その武器の名前は、"スピーチ"。
ハリス「いいですか、蒸気機関などの登場により、世界はガラリと変化しました。この国も今のやり方を捨てなければならない。しかし、あなたたちの器用さと勤勉さがあれば、日本は偉大で強い国になる! そのためには!」
幕メン「(ビクッ!)」
ハリス「いいですか………我々との貿易です」
幕メン「(ゴクリッ)」
ハリス「貿易は日本に大きな収益をもたらしそれによって立派な海軍を持つこともできる! そして………ここからは忠告です」
幕府メン「(ドックン……)」
ハリス「日本は今、(ゆっくりと喋り出す……)いろんな国から狙われています」幕メン「(ドキッ!)」
ハリス「(ここからまくしたてるように)もう少ししたら艦隊を率いて、無理やり開国を迫りに来るでしょう。それを断れば戦争の可能性もある! 他の国が出す条件は、私たちのように穏やかなものじゃありません。イギリスやフランスは、今はまだ清(中国)との戦争で忙しいので、日本を訪れてないだけだ! そっちの戦争が終われば必ずくる!(そしてゆっくりと……)これは…必ずです」
幕メン「(ブルブル……)」
ハリス「さらに言うとロシアも来ます!」
幕メン「(ブルブルブルブル……)」
ハリス「そして、過酷な条件を突きつけてくるでしょう。ただし! 我々アメリカと平和な通商条約を結んでおけば、他の外国に口をきいてあげることが出来る。(囁くように)『アメリカと一緒の条約にしようじゃないか』……と」
幕メン「!」
ハリス「アメリカは日本の盾となって、あなたたちを守りたい!」
幕メン「(うるうる……)」
ハリス「いいですか……私は、あくまで平和的に日本と交渉します。この国に迫る危険を回避して、強力で……幸せな国になる方法を説明しているまでです」
幕メン「(しゃべるの……うまい……)」
2時間以上の大演説を繰り広げたハリスさん。
心を掴み、脳に直接語りかけるような、スピーチ&プレゼンを聞いた幕メンは、
幕メン「刺さるわー!!」
と、ハリスさんの言葉に、感心して、嘆いて、心を持っていかれたのでした。
ハリスの説得により、『貿易』という二文字がよぎりまくる幕メン。
日本、決断しちゃうのか?
でもここから、「いや〜実に日本っぽい!」って展開になるので、ある意味ご期待ください!