文次の手紙#18
政次様
拝啓 残暑も過ぎ、天空高く馬肥ゆる秋冷の候となった事と思います。近頃色々の事で便りができず、長らくご無沙汰致しました。家も変わりなくまた仕事もいよいよ本格的に忙しくなりつつある事と推察しています。
僕も替わりなく益々元気に奮闘しています。何とぞご安心ください。当地も朝晩はかなりしのぎ良くなりましたが、日中はいまだ相当な暑さです。
8月21日付の手紙の中に足を痛めてうんぬんと書いてありましたが、足を痛めたわけではなく、足に(田虫)のような皮膚病ができていたので薬を送ってくださいと書いていたのを間違えて、あんな事が書いてあった事と思いますが、これは大した事はなく当地は非常に暑いやら水が悪い関係上、大部分の者が皮膚病ができています。しかし僕はもう早くから完全に治っておりました。何も心配することはありません。
○○候補教育も戦地の事ゆえ移動その他、色々の事で期間は短かったけれど僕も全力を尽くして勉励し、ひとまず集合教育は終了しました。いよいよ今月末には無事○○学校に入校するはずです。約6か月くらいの教育を経てまた隊に復帰するとの事です。
先般○○島にてはからずして日町の上田幸男さんと会うことができました。幸男さんも変わりなく元気で奮闘されています。船上にて色々語り合うこともできました。○○市付近には津屋崎出身の者も多数いるとの事でした。また近頃内地より派遣された兵隊も来ました。甚一郎さんも近くにいます。和白村の太田上等兵という人が今回満期になって帰還されましたが、その人は○○教育の助手をしておられた人で津屋崎にも知人がいて、行くこともあるだろうと言っておられたので家に訪ねて来られたらその人が僕たちの事は一番よく知っておられます。多分家を訪ねてくれるでしょう。
7月19日日に送ったと書いてあった慰問袋はまだ着いておりません。途中で間違ったんだろうと思います。その前まで(3回目)のは受け取っています。昨日は古賀の叔父さんから大きな慰問袋が届きました。家からもよろしく御礼を言ってください。
軍の防諜上くわしい近況を知らせる事ができず、甚だ残念に思いますが、とにかく益々張り切って軍務に勉励致していますれば何とぞご休心ください。母上にもよろしくお伝えください。みなさまの健康を祈っています。
文次
今度慰問袋を送ってくださるなら左記のものを入れてください。洗面袋、ランニング、ふんどし(2つ3つ)、手帳(ポケット用)タオル一つ。剣術着
山笠のハッピのようなもので買ってもあると思いますが、丈夫な布で家で作ってもらってもよい
昭和15年10月5日(10月25日到着)
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