何度聴いても心が震える「22分50秒」の奇跡~小田和正『クリスマスの約束2009』~
私の音楽人生に多大な影響を与えてくれたミュージシャン小田和正。
オフコース時代からソロに至るまで、小田さんの楽曲は常に私のすぐそばに存在していてくれました。時に元気づけてくれて、勇気を与えてくれて、喜びも悲しみも小田さんの楽曲と共にありました。
『クリスマスの約束』は2001年からスタートし、2003年以降は小田さん以外に毎年様々なミュージシャンがゲスト出演して彩りを添えてくれる贅沢な音楽番組です。
一年の最後にこの番組を観て刺激をたくさんもらって、また翌年自分も音楽活動を頑張ろうという気持ちにさせてもらってきました。
どの回も素晴らしいわけですがこの2009年は別格で、まさに「奇跡の神回」でした。これまでもたまに録画を観直してきたのですが、つい先日思うところがあって久しぶりに観てみました。
何度観ても感動で心が震え、自然と涙が溢れてきます。この感動はやっぱり唯一無二。
この年、小田さんが前々から温めてきた企画を実現すべく番組は動き出しました。ざっくり言うと、出演するミュージシャンたち全員の楽曲をメドレーにして全員で歌うというもの。この年は歴代最多の総勢21組34名のゲストが出演しました。
当初小田さんとしては参加者全員によるユニゾンを目論んでいました。ところが番組の『小委員会』メンバー、スターダスト・レビューの根本さん・スキマスイッチの大橋くん&常田くん・いきものがかりの水野くん、彼らとのミーティングを重ねる中で小田さんの理想は様々な意見によって再考せざるを得なくなっていきました。
「全員で一緒に歌う意味が分からない」
「全員で歌うとただの“棒“みたいになってしまうのでは?」
「各自がソロで歌う方がカッコいいに決まっている!」
「カッコよくないことはしたくない」
「クオリティーを上げる時間もそんなにない」
次から次へと出される厳しい意見に、小田さんが吐き出すように言った「簡単なことではなかったんだ…」という言葉はとても印象的でした。
小田さんとしては「今回の企画は実際にやってみないと分からない手探りの要素はあるけれど、みんなで歌うことによって生まれる“何か“の意味が必ずそこにある。目的のためではなく″言葉にできないもの″を形にしたいんだ」という強い想いがありました。
この小田さんの想いを完全には理解できない番組スタッフと激しいぶつかり合いもありました。
何度も何度も話し合いを重ねた結果、ボーカルとコーラスが掛け合う壮大なアレンジの、楽譜13枚にも及ぶメドレーとして実現されることになりました。
年齢もバックグラウンドも異なるミュージシャンたちが、小田和正という大先輩の夢の実現に向けて時間の許す限りリハを重ねました。
そうして迎えた本番のステージ。タイトル「22分50秒」で披露された楽曲は以下の通りです。私は財津さんの「青春の影」で涙腺崩壊でした。
演奏が終わった後、小田さんの目には光るものがありました。会場にいたお客さんからの拍手はしばらくの間鳴り止むことはありませんでした。
小田さんはマイクを握ったものの「何も語りたくない。言葉を失います。これは僕が一生の中で聞く一番長い拍手だったと…。やってよかったと思います。言葉にするとこぼれていってしまうような気がするので何も言わずにおきます」と言葉を絞り出すのが精一杯でした。
その後、出演ミュージシャンたち全員から一言ずつ。中でも藤井フミヤとあれだけ小田さんに毒づいていた大橋くんの言葉が感動的でした。
ミュージシャンたちがステージに立つということはそこに責任も生じるし、常に100%自分が納得いくものをお客さんに披露したいと思うのが当然なわけです。
今回の小田さんの企画は自分一人の力だけでは叶わず、ステージを共にするミュージシャンたちを信頼して同じ想いを共有しながらアウトプットするという非常に難しい作業だったと思います。
でも、歌い終えたすべてのミュージシャンたちの表情はこれまで味わったことのない充実感や感動で満たされ、神々しいくらいの輝きがそこにありました。恐らくこれから先のミュージシャン人生において、こんな経験はもう二度とできないかもしれないと感じていた人もいたはずだと思います。
もちろんそれはお客さん側も同じで、あの空間に一緒にいられたことは一生の宝物になったことでしょう。
小田さんは75歳の今年も、ツアーで全国を駆け回っています。いくつになっても守りに入らず、常に挑戦する気持ちを忘れない小田和正というミュージシャンを心から愛し、尊敬しています。
小田さん好きもそうでない方も、もしまだ聴いたことがなければ『クリスマスの約束2009』の″奇跡のメドレー″をぜひ聴いてみてほしいです。
今何かに悩んだり迷ったりしている人は、きっと背中を押してくれる不思議なパワーをもらえると思います♪
長い文章最後まで読んでくださり、ありがとうございました。