NHK『のど自慢』の演奏が生バンドからカラオケにリニューアルされた理由になるほど納得です!

NHK『のど自慢』の演奏が生バンドからカラオケに変更された理由についてあれこれ想像していましたが、このチーフ・プロデューサーの話を読めばなるほど納得でした。

結構長い文章なので、以下話の内容のポイントをまとめてみました。

●放送開始から77年経ち、サステナブル(持続可能)な番組にするための手直しが必要
●若い世代の視聴者が欲しい
●10代、20代の応募者の歌いたい楽曲は手弾きで再現が難しい曲も多くなった(”打ち込み”主流のため)
●演奏するバンドマンの世代によっては演奏不可能な楽曲もあり得る(米津玄師の『KICK BACK』など)
●バンド演奏用にアレンジし直しすると原曲とは違う雰囲気になってしまい、応募者が歌う時に困惑することもある
●東京はまだしも、地方のバンドメンバーの人材不足
●初見で生演奏ができるミュージシャンの絶対数が減っている

この中で私自身そりゃそうだと一番感じるのは、近頃流行りの楽曲たちの圧倒的な難易度の高さです。アップテンポで歌詞の言葉数が多い上にメロディーラインもリズムも結構複雑。使用されている声域もかなり幅広い。

YOASOBI・Ado・King Gnu・ヒゲダン・米津・・・思い浮かぶアーティストたちの楽曲はヴォーカルが歌うのも大変だけれど、演奏するバンド側も相当テクニックが必要とされる楽曲ばかりだと思われます。

私自身歌を教える仕事もしているのですが、数年前まではレッスンをする際に生徒の歌う課題曲の「楽譜」を準備することはあまりしてきませんでした。自分が知らない曲でも何度か聴けばある程度メロディーラインが頭に入るし、自分自身もすぐに歌えるようになっていたからです。「楽譜」がなくても教える時にそれほど困ることはなかったわけです。

ところがここ数年は「こりゃ楽譜を準備した方が手っ取り早いわ!」という状況に陥ることが多くなり「楽譜」を購入する機会も増えました。それだけ楽曲を覚えるまでに時間がかかってしまう複雑な曲が増えた証拠ですよね。こちらとしてもまずは正確にメロデイーラインを歌えるようにさせなければならないので、近頃流行りの楽曲たちは「楽譜」が非常にありがたい存在になりつつあります。

教える立場としては少々情けなさを感じることもありますが(笑)、これもまた時代の流れというやつなんでしょう。

それから、カラオケでしか歌ったことがない人たちは生バンドや生ピアノの演奏で歌うと逆に戸惑ってしまうという人も多いのかもしれません。バンドの人たちがヴォーカリストに合わせてくれるというメリットもありますが、恐らく機械的な伴奏でしか歌っていない人にとってはバンドの生み出す独特のグルーヴを感じながら歌うということが難しい面もあると思われます。経験を積めば問題ない話ですが・・・。

まあそれにしても、今の10代、20代はそんな難曲たちを難曲とも感じない”つわもの揃い”と言いますか、”怖い物知らず”と言いますか・・・。自分の歌唱レベルは完全無視で、聴いて気に入った楽曲を歌いたい願望がかなり強く平気でYOASOBIやAdoやヒゲダンを課題曲に持ってきます(笑)。

声域がどの程度あるか?地声・裏声・MIXを上手く歌い分けられるか?表現力は?などなど。歌いこなせるという領域までたどり着ける着けないの差はもちろんありますが、今時の若者たちは「耳は肥えている」というか「複雑なメロディーラインを覚える力」は実はそれなりに持っている子が多いように感じます。当たり前のように言葉数の多い楽曲たちを耳にしてきているので、何の抵抗感もなく自然にそれを受け入れられるのでしょう。だから、きちんと声さえ鍛えてあげられれば、案外凄いヴォーカリストがジャンジャン生まれてくるかもしれませんね!

話は少々逸れましたが、そんなこんなで「歌を歌う側」と「演奏する側」とのもろもろの諸事情でNHK『のど自慢』が生バンドからカラオケにリニューアルされたことには心から納得した私です。




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