アンダーマイニング効果の盲点 効果的なご褒美の活用
▷アンダーマイニング効果研究
1970年代Deciによる研究に端を発する。
そこでは、
課題実施後に報酬が与えられる報酬群と
与えられない統制群が用意された。
ここでの課題はパズルで
報酬はパズル1つを解くと1ドルもらえるというものだった。
実験の基本的なデザインは以下の通りであった。
Session1 Session2 Session3
統制群 報酬なし 報酬なし 報酬なし
報酬群 報酬なし 報酬あり 報酬なし
Session3において、
参加者が自発的に課題に取り組んでいたら
それを内発的動機付けと解釈した。
さらに、報酬群に対して
Session3の前に課題に取り組んでもこれ以上の報酬はないことが伝えられた。
結果、Session3において
報酬群の方が統制群より、
課題に従事する者が少なかった。
→金銭的報酬によって
内発的動機付けが低下することが実証され、
アンダーマイニング効果と名付けられた。
▷アンダーマイニング効果が実証された背景には、
・“報酬がない”と明示した直後の行動を観測したこと
・課題がパズルという、参加者がこれまでの経験から
内発的に動機づけられている課題かどうかは
定かではないということ
・統制群と報酬群がどのような人物で
構成されていたのか定かでないこと
などがあることを考慮する必要がある。
▷一方で、別の研究によっては、
報酬が予期されることによってパフォーマンスが向上する
とされている。
さらに、報酬が継続的に与えられても
内発的動機づけとパフォーマンスとの関連は残ることも
明らかにされている。
ただし、報酬が必ずもらえるとわかる場合、
その関連が弱まり、
アンダーマイニング効果が生じることが支持されている。
→今のところ、報酬と動機づけの関係は
「条件次第」ということになる。
⇒報酬を活用して動機づけを高め
行動を引き出すことは有効である。
一方で、考えなしで報酬を使ってしまうと
その効果は持続しない…
よって、報酬の内容や量、提示するタイミングなどを
計画的に用いることが重要である。
~参考・引用文献~
上淵寿・大芦治.(2019).新・動機づけ研究の最前線.北大路書房.