
まだ、出られない。
僕はいま、見えている苦悩の真ん中にいる。
それは、出られないこと。
同じ繰り返しのような通勤でも、微妙に違うところを見たり、同じような景色でも微妙に違う気持ちで見ていたり。
その全てが書くことへの原動力になっていたことを。
僕の頭の中で絶えず働いていた言葉を生んでは流れていく機構が静止した。
外から受けるエネルギーを変換して動いていたのだった。それはもちろん、薄々気付いてはいても、大部分を占めているなんて思わなかった。
あの時より前の自分が、今ほど別人に見え、そして今ほど書けなくなったことはなかった。
ちょっと違った、書くかどうかではない。発想自体が生まれなくなったの方が正しい。
いまここに書けているのも、とても不思議な気分で、無理をしているような、リハビリ気分だ。
自分で自分の処方箋を書いて。でも本当に書きたいことは記憶の中で石になってしまった。
もっと、書きたいんですよ。気持ちを取り戻そうとすればするほど。
でも言葉が追いつかない。思考の霧が晴れない。
でも贅沢な悩みです。
普通に生活は出来るんですもの。フルリモートの仕事以外はゲーム三昧で、買い物以外の外出はなし。
書くことをサボっているような気持ちでいたのは最初のうちだけ。
書けなくなってしまったことを、今の生活で満たそうと必死になっていただけだった。
もっと晴れやかに皮肉を綴りたい。
ぬるくてバカなダジャレを書きたい。
思い出を楽しく振り返りたい。
新しい自分を捜すような。
前の自分を取り戻すような。
そのどちらでもないような、止まった時間。
僕よ、僕を見つけるのだ。