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石畳

毎日、この石畳の上を歩くんだ。

開始点と終着点は毎日同じ。

どこを経由して歩いてもいい。

整然と敷き詰められているようで

時に、どこかで軋むこともある。

きみにはその感覚を忘れないでいて欲しい。

そして毎日、どこで軋んだのかを

終着点で報告して欲しい。

状態を見て、間に合えば修復されよう。

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僕は、言われたとおりにすることを約束して、石畳を歩き始めた。

来る日も来る日も、石畳を色んな経路で歩いた。

最初の頃は、どこから歩こうかなって、よく石畳を観察しながら歩いてた。

歩いてないところの石がほんの少し浮いてるのを見つけて報告したこともあった。

誰もいない終着点で、天に向かって申し上げると、後ろに現れたもう一人の僕がその箇所を点検して直した。

裸足で歩いてみた方が分かりやすいと思って、実際よく気がついたけど、繰り返すと足も痛くなったので次第に敬遠していった。

だんだん得意な気になってきて、足先になんとなく緩んだ感覚が走ったことで報告したこともあった。

雨の日も風の日もあった。

雪の日もあって、しんしんと降りそそぐなか、僕は邪魔くさい思いで石畳を歩いた。

ある日、僕の一歩で石が一枚抜け落ちた。

欠けた穴から覗いてみると、奥に真っ白い空間が広がっていて、石はみるみるうちに小さくなって消えていった。

僕はちょっと怖くなって、足早に今日の終着点に立った。

そこには、先生が待っていた。初めの日以来だった。

先生は教えてくれた。

あの一枚の石が抜け落ちたこと。

確実に僕には防ぐチャンスがあって、

でもきっとどこかが抜け落ちるしかなかったんだ。

僕が毎日元気に歩けるわけもない。

足の感覚も天候もある、僕は石畳の上を隈無く歩くことも出来ない。

出来ないんじゃない、したくないんだ。

見たくないもの、感じたくないもの、飲み込みたくないもの。

僕は見過ごしながら、慣れた経路で石畳を歩いてきたこと。

先生は無言で頷くと、体が風に吹かれた砂粒のようになって姿を消した。

僕は、いなくなった先生に対して、結局正解を言ってくれなかったと思ってた。

でもそれは違ってた。正解なんてなかった。

誰かにどうこうしたほうが良いと言われても、それが正解に限らないということを、先生は教えてくれたのだと思いたい。

みんなが言ったとしても、だ。

僕は間違い続けたら、瓦解した石畳と一緒にあの真っ白い世界に行くだけ。


やっほー、未来の僕へ。

この声、どこで聞いてるかな?

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