ペンとノートとイチとゼロ
「別に。言いたいことなんてない」
「そう。聞きたいことがあったけど、その機会を逃しちゃったみたいだ。でも、その気持だけでも伝えてくれてありがとう。」
「どうして。そんな風に言われたのは、初めて」
「人間はロボットじゃない。だから自分の心に嘘をつかせてまで効率的に会話を進めることはしたくないんだ。それよりも、途中で湧き出てきた消化しなければならない気持ちにも向き合ってこそ、誠実なんじゃないかな」
「すごく良いこと言ってるみたいだけど、その理屈っぽさがロボットみたいね」
「なるほど。こっちも初めてだから緊張しているからかもしれないな」
「どういうことかしら?」
「目の前の人の気持ちを、とにかく大切にしたいと思ったこと」
「まあ、如何にも巧妙で軽薄な感じ」
「でも顔は満更でもなさそうだ」
「そういえば、さっきまでの本当の言いたかったこと」
「うん。教えてくれるの?」
「ええ、また今度お会いしたときに」