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みまわり
去年の暮れに、会社でもらったミニひまわりの種(と土と、土に還るバイオな鉢)。
家に持ち帰って付属のメモを読んだ。適正温度見てみると、これは冬に育て始めるべきではないとすぐに分かった。
こうして、僕のひまわりブームは終わりを告げた。
洗面台の天板の上にちょうど乗りそうな幅があったので、未開封のまま置いておいた。
時は流れて、4月の中旬から僕はテレワーカーになった。そして、この家にはその二週間前からのテレワーカー先輩である彼女もいた。
そして、この生活様式になってから数日経った頃、彼女はあのひまわりを育てようと言ってきた。
「ちゃんとお世話してくれるなら、いいよ」
ブームが終わった僕にまだ春の報せは届いていない。(意訳:冷たい)
彼女が喜んで了承したため、僕は彼女には手の届かない高さに置いてある鉢を取りに行ってあげた。一体誰がこんなところに置いたのだろうか。
改めて付属メモを読んだ。双葉が何本も出たら2~3本だけにしてあげるらしい。適正温度もこれからなら合う。
次の日から僕の当番は、特にない。
けれど、毎日「ひまわり水やった?」がルーティンになった。
それから何日か経って、毎日僕に言われながら水やりするのもうるさいだろうと思い、黙っていると、なかなかひまわりに水をやらなくて困ったことがあった。
僕が言うと思い出したかのように水をやって、事なきを得ているという感じだった。
僕は最初から毎日見ていた。ひまわりの土を。
(乾いている、まだ大丈夫そう。もう少ししたらあげてもよさそう。)
無事に双葉がいくつか出たのを二人で見て、僕は土からいくつかの苗を抜いた。
それから日が経って、彼女は朝から出社して、家は僕一人になった。黙々と仕事をして、お昼頃に何の気なしにひまわりを見た。
僕はすぐに水をやった。
そしてその夜は軽く叱った。
その一件から僕はお世話正式メンバーになった。
第二次ひまわりブームの幕開けだ。
二人で世話するとなると、どこかで穴が空きがちだ。ある朝、本葉も育って10センチくらいになっていたひまわりちゃんが、「しおっしお」になってた。
その朝は二人で大ショックだった。ごめんって思った。それ以上に「やってしまった感」がベランダに充満していた。これから仕事なのに。
僕は初めてひまわりちゃんの育て方をネットで調べた。まだ水を飲めば間に合うかもしれないらしい。
命を預かっているのに、らしいらしいで育てられているひまわりちゃんが少し可哀想だった。
だから、せめて一生懸命育てるんだって、決心した。
それから数時間後、ひまわりちゃんはみるみる元気になった。本当に良かった。
気がつけば、僕が率先してひまわりちゃんを育てていた。家も出ないのに、天気予報を気にするし、一日に何回も様子を見る。
今では画像の通り、20センチくらいの高さになって、そろそろ花も咲きそうな勢いだ。
全て正しく育てられているかなんて、胸を張っては言えない。
それでも、うちのひまわりは僕がいないと生きてはいけない。
花は、咲くのかな。
きっと咲いたとき、何を思うのかな。
全てが咲き終わったら、何を思うのかな。
そんな、ひまわりちゃんのみまわり。