ラストメッセージ
これで大丈夫
友達が裏返しになっただけで済んだテーブルをドアに立てかけた
これじゃあ足りないよ
僕はスツールを二つ持ってテーブルの手前に寄せる
その上に鉄筋が剥き出したコンクリートをなんとか拾って乗せた
部屋があんな風に吹き飛んだというのに
僕らは擦り傷で済んだだけでも奇跡だった
これ以上の奇跡が望めるほど楽観的に生きてこなかった僕たちなのに
バリケードを張って一縷の望みに賭けた
カーペットにはガラス片が散らばっている
友達は脚のなくなったスツールの天板を二枚瓦礫の中から掘り当てた
椅子にするか枕にするか
僕は受け取って天板の上に腰掛けた
友達はまた瓦礫を漁ろうとしたのを見てあることに気がついた僕はそれを制した
この高さがちょうど良いなって思った
天板を瓦礫の側に持ってきてもう一度座るとしっくり来た
ここなら書ける
友達が肩を竦める
こんな時でも言葉ですか
まあこんな時だからですかね
私は理解不能ですけどね
そう言って友達は別の瓦礫を少しずつ平らにならして天板を枕にして横になった
静寂に包まれた部屋の中で僕は胸ポケットのペンを取りだしてワイシャツを脱いだ
ワイシャツを瓦礫の机に敷いて
もう最後だと思って言葉を綴った
この部屋で起きた僕たちの最後のやり取り
ここで生きた証を