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井上トートと山内ルドルフ



タイトルとは違う始まり方になってしまう事、そして長文になってしまうが、ぜひ、読んで頂きたい。
今から約20年前、私は母親から半強制的に見せられた「ベルサイユのばら2001」でアンドレ役を演じた香寿たつきさんのファンに親子共々なった。
ちょうど、香寿さんが退団するタイミングで、男役としての舞台は見れず、まだ運営側のDVD化があまり普及してなかったため、いわゆる「退団記念」的な内容のビデオを買い、入団から退団する時までの公演を収めたものを見ていた。
1996年、劇団として初演された雪組「エリザベート」に、香寿さんはルドルフ役で出演していた。
その「エリザベート」の場面の中で、一番有名なシーンと言っても過言では無い、一路真輝さんの死神トートと、皇帝ルドルフが歌い上げる「闇が広がる」のシーンがそのビデオの中に入っていた。
私は一気に「闇が広がる」の虜となり、大好きな曲になった。
当時はまだまだ、動画サイトや携帯電話などでは見れる環境ではなく、かなりアナログだが、PHSの録音機能を使って、テレビから出てくる音を録音して、毎日のように聞いていた。
それから20年が経ち今に至るが、先日BS-TBSで、2022年9月に行われた、天童よしみさん、井上芳雄さん、山内惠介さんの異色コラボSPコンサートの模様が放送された。
私は、今年の春から山内惠介さんのファンになり、放送当日に新聞の番組欄でそれを知って、ふと、2022年の頃を思い出していた。
「あれ?これって、井上芳雄さんのラジオで話していたコンサートか?」
2年前にまた遡るが、その頃、日曜日の22時からTBSラジオで放送している「井上芳雄 By Myself」を毎週聞いていた。
それに気がついてから、一気に私の記憶が蘇って来たのだ。
確かに、井上さんのラジオで話されていた事は記憶にあるが、まだ山内さんのファンでは無く、どちらかと言えば、天童さんの印象が残っていたため、コンサートの内容などは、よく分かっていなかった。
とにかく、見なくてはと思い、視聴予約をして、時を待った。
いろいろ思い出していくうちに、山内さんのラジオで、井上さんの曲が流れた事も蘇って来た。
聞いていた時は、何気なく「どうして井上芳雄さんなんだろう?」とは思ったが、深くは考えなかった。
コンサートの放送が近づいてくる中で、ある事がふと頭をよぎった。
もちろん、コンサートのセットリストは知らなかったし、調べる事もしなかった。
「これ、井上さんと山内さんのコラボで「闇が広がる」をやったら私、絶対昇天する……。」と……。
コンサート放送の時間が来て、ハイライトシーンが流れ出した瞬間、頭をよぎった勘が見事に的中してしまったのだ……。
井上トートと山内ルドルフ、ミュージカル界の貴公子と、演歌界の貴公子、まさに異色の貴公子コラボだった。
今までいろいろな方々の「闇が広がる」を見て来たが、一路さんと香寿さんの「闇が広がる」が私の中では、No.1だった。
サビの香寿さんのハモリは難しいし、正直に言うと、山内さんはどうなんだろうか?と余計な心配をしてしまった。
いざ、「闇が広がる」のシーンになり、私は惹き込まれるように見入った。
井上さんはやはり本家だけあって、さすがだった。
どこか、楽しみながら歌っているような、嬉しそうな雰囲気も感じられた。
私の余計な心配など吹き消すかのように、山内さんも緊張している雰囲気ではあったが、完全にルドルフになりきっていた。
ルドルフパートの「我慢出来ない」「王座!」も、上手すぎるぐらい良かったし、サビのハモリもキレイに歌い上げていた。
大サビでは、山内さんの横顔がアップで映し出されていたが、今まで見た事が無かった表情になっており、ルドルフが乗り移っていたかのようだった。
そして、私は案の定、昇天した……。
20年前のご贔屓であった香寿さんのルドルフから、今の推しである山内さんのルドルフに繋がってしまった。
こんな事が、普通に考えてあるのだろうか?と、昇天しながら思った。
そして、2年前、井上さんのラジオを聞いていなかったら、このコンサートの存在も、全く知らなかったわけで、それもそれで、タイミングが重なった結果である。
この文章を書きながら、私は本当に幸せ者だと実感している。
20年の間は、辛い事も、人を傷つけてしまった事も、たくさん迷惑をかけてしまっている……。
本当に申し訳ない……。
このコンサートを見て、ただひとつだけ、「生きていて良かった」と思えた事がいちばんの幸せなんだと、噛み締めている。
未だに、興奮が治まらずではあるが、これをまた糧に、人生を歩んでいこうと感じている。

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