#4 潮の満ち引き
困ったときのハイボール。昨日の過ちを繰り返さないよう、レモンジュース文字を見て注ぐ。雷の音に驚いたのか、気持ち多めに入れてしまった。
「潮の満ち引きはなぜ起こるか」
4分の動画と1段階の説明だけが書いてある。
急ぎ足でいくつもりのようだ。
日常には一定のリズムが大事だが、探検においては緩急がある方が飽きがこない。
潮の満ち引きとは、専門用語で「潮汐(ちょうせき)」という。
潮=朝のしお、汐=夕方の潮
違いは字を見れば明らかだが、朝夕分けるには何か理由があったのだろうか。
僕が潮の干満を意識するのは、潮干狩りのときくらいだ。高校時代「明日潮干狩りいくか!」と意気揚々と結託したが、仲間の一人が潮の干満スケジュールというものをみんなに見せ、意気消沈したのを覚えている。
とはいえ、行けば少しくらい取れるはず、とたかを括って決行した。
膝のまで海水につかりつつ、お尻は濡れないように腰を高くして海中を覗く。足を動かすたびに跳ね上がる泥が視界を濁らせる。
誰一人貝とまみえることはなかったが、いつの間にかみんなお尻が濡れていた。
次は、潮が干上がるのに合わせてこよう。
そう言って別れた。
だがそれきり、この歳になるまで一度も行けていない。
切ない気分になってしまった。
いつ潮が干上がるのか、高校生の自分に教える気持ちで動画を再生する。
「潮の満ち引きはなぜ起こるか」
月の引力によって、地球表面にある海水が引っ張られる。この時、月に最も近い海水が月に引き寄せられる。月の反対側は引き寄せられる力が最も弱いため膨張する。その結果、海面は月の方向に長い楕円になる。
ある地点が、楕円の長い直径に来た時、潮は上がる。地球の自転は24時間で一回転なので、一日に二回潮が上がるといえる。
さらに、太陽も海面を引っ張る仕事に加担している。
太陽は月に比べてずいぶん遠くに位置しているので、引っ張る力もおよそ月の半分ほどになる。
地球は太陽を1年で周る。
よって、周期の異なる月と太陽が一直線上に並んだとき、最大パワーを発揮して海面を引き上げる。これが、大潮(Spring Tide)となる。
大潮から7日たち、月と太陽の関係が90度になるとき、最も海面の引っぱりいが弱くなる小潮(neap tide)となる。
高校時代の自分に、半月になるまで何日か待て、と言いればよかった。
ざっくりした潮汐の仕組みはわかった。
だが、潮見表をみるともう少し複雑な事情が絡んでいそうだ。毎日同じ幅ずつ干上がったり満ちているわけではないからだ。
教授が言うには、他にも以下のような要素が潮汐に影響するという
・大陸に妨げられる(ケルビン波理論)
・月や地球の自転軸がゆれうごく
潮汐は一朝一夕には理解できないことがわかった。(苦)
だが、潮のうごきを多くの海辺の生物は知っている。ヤドカリの脱皮やカニの産卵など潮汐に合わせているというから、生物には頭が上がらない。
月と海はつながっている。
そういえば、今朝は満月だったらしい。
少しかけた月も、少し低くなった海面も、それくらいがちょうど良い。
今夜は空に想いを馳せて眠ろう。
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