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頭のおかしいシリアルと 優しいオートミールの話

「頭のおかしいシリアルが食べたい」最近、時々そんな話をする。「何それ?」と聞かれるので、「海外のシリアル!パステル系のレインボー色で、牛乳に入れると、不思議な色になるの」と私は説明する。

頭のおかしい という表現を私が使ってるのは、初めて見た時に そう感じたから。

多分、幼稚園生くらいの時。ママが仕事の土曜日。早朝に起こされて、友達の家に預けられた私は、友達のお母さんに「せなちゃん。眠いでしょう 寝ていいよ」と言われたのに甘えて、友達の隣で眠った。一瞬起きた友達は、目を擦りながらぬいぐるみをよけて、私のそばに枕を置いてくれた。

次に起きたのは確か8時頃。
アメリカ人の両親を持つ友達の家は、おうちとは違う香りがする。

友達に「おはよう」を言って 子供部屋のドアを開けると良い香りがした。不思議な優しい香り。

起き抜けの頭で ぼんやりしながらも緊張して キッチンを眺めていると「せなちゃんは どっちを食べますか?Oatmeal? Cereal?」と聞かれる。分からなくて決められずにいると 両方を見せてくれた。 
鍋でぐつぐつと湯気を立てているオートミール。友達が箱からボウルに入れてるシリアル。箱の中身を知りたくて覗き込むと、見たことないカラフルな色。それを見た瞬間、私は 初めて見る味を知りたくなった。
色がついてるお菓子は体に良くないから駄目 と教えられていた私は「おかしい色…」と思ったのと同時に、魅せられていた。ピンク、ブルー、グリーン、イエロー・・・パステル色の小さな輪っかは可愛い。

私はシリアルを指さした。

ミルクを注いで、シリアルがふにゃふにゃになる前に急いで、でも慎重にスプーンを口に入れる。甘い。次はブルーの輪っか、甘い。色が溶けだしてミルクが不思議な色になってる。ミルクを飲む。甘い。「美味しい?」と聞かれて「うん」と頷く。当時の私の気持ちを一言で表すなら ”満面の笑み" だと思う。どの色も同じ味で甘くて、何も考えずにサクサク食べて混ぜてミルクを飲む。

それが私にとっては特別だった。

また別の日、友達の隣で起きて 子供部屋のドアを開けると、覚えのある良い香りがした。不思議な温かい香り。今回もやっぱり、ぼんやりしながら緊張していると「せなちゃんは どっちを食べますか?Oatmeal?Cereal?」と聞かれる。私が迷っていると、友達のお母さんはスプーンを取って 鍋から1口すくうと差し出してくれた。ふぅふぅ冷まして恐る恐る口に入れる。甘くて あたたかくて優しい。
「好き?」と聞かれた私は頷いて、鍋を指すと「これにしたいです」と言った。少し深さのあるお皿に、とろみのあるオートミールを入れてもらう。初めて食べる甘くて優しい味が 私は大好きになった。

それからは、 オートミールを選ぶようになった。

シリアルは時々。友達はいつもシリアルを選ぶ。多分、子供はシリアルなのだろうなと 幼い頭で思った。

それでも毎回「せなちゃんはどっちにする?」と聞いてもらえるのが嬉しかった。私が選んで良いという事が嬉しかった。どちらを選んでも特別な反応が無いことが嬉しかった。


今でも私は時々、オートミールを作る。大人になった私は、ブラウンシュガーやバターは使わないし、牛乳じゃなくて豆乳を使う。でも、鍋で ぐつぐつして、蜂蜜やメープルシロップをかけただけの それが、私にはいつだって優しい。

そして やっぱり、あの頭のおかしいシリアルを食べたくなる。毎回選ぶほどでは無かったのに。もう大人になったのに、やっぱり あのカラフルな色合いは嬉しさをくれる。

優しさや嬉しさで満たしてくれる食べ物は、それが一瞬だとしても、いつだって大切だと思う。

そんな食べ物が君にもあるといいな。
まだ見つけてなかったら私が作ってあげる。任せて…っ。笑

Sena.

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