12/19 tue. 命の順番
昨日から始まった大掃除。とは名ばかりで、単に溜まった家事を片付けて、不用品を整理していただけなのだけど。
本棚を整理していると、読まずにただ整列させていた本が目に止まったり、使い所のない文具が顔を出したり、思い出の品を見て感傷的になったりと、なかなか労力がいるものだ。
それでも、昨日は何故か「今日のうちに身の回りを整えておかねば」と、面倒な口座入金や、資源ごみの分別と廃棄、いよいよ寒くなったので衣替えも兼ねた大量の洗濯物も済ませた。久々に作った、だし巻き卵は失敗した。
すべてを終えてもなお落ち着かない夜、祖父が亡くなったと連絡がきた。入退院を繰り返していて高齢だったので、ついにきたか、と言った感じで覚悟はできていた。なのであまり実感もわかず、むしろ繁忙期で葬儀にきちんと出席できるか、とスケジュールを確認したりして、やはり自分は感情というか、人として何か欠落した薄情な人間かもしれないと軽く絶望した。
そんな中、私は昨夜ピアノを弾いた。黙々と弾いた。子供のころ、祖父が買ってくれたピアノだ。ピアノの練習を言い訳に、夕飯作りの手伝いをさぼっている私の唯一の味方は祖父であった。
「ちえりはピアニストになるんだから、料理なんかするんじゃない、怪我したら弾けないだろう」と甘やかされたおかげで、私はたいした料理もできない大人になってしまった上、ピアニストにもなれなかった。ろくでもない孫である。
それでも、私は今もピアノを弾く。有名にはなれなかったが、音楽を続けたことで仲間もできたし、家族や友人、大切な人達に聴いてもらえたらそれで良い。
そんな祖父は音楽に特に興味はなく、野球ばかり観て、畑で野菜を作って、庭木の手入れをして、口うるさい祖母とたまに喧嘩をして、それでも、静かに、ただ静かにそこにいた。それがもう居ないのだ。これが命の順番か。
だから、私はまたピアノを弾く。料理をさぼった分、少しは上手くなったから聴いてよ、じいちゃん。
2023.12.19.tue
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