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学びの両輪として求められる二つの力をゼミで養う 【法学部 秋山先生】
記:2019年3月8日
法学部 秋山信将先生
国際政治を学ぶ上で、ニュースで耳にするような時事的なネタは私たち学生にとって、扱いやすい。また、コミュニケーション能力が重視される現代において、語学においては「話す」「聞く」といった技能の評価が高まっている。
しかし、秋山先生は知的基礎体力として、学生に養って欲しいのは、むしろ、日本語、英語での読み書きの力だという。
今回は、一橋大学法学部、コーネル大学大学院を卒業後、一橋大学から博士号を取得し、現在は一橋大学国際・公共政策大学院に所属し、法学部の後期ゼミを担当されている秋山信将先生から、「理論を学ぶ意義」「英語における読み書きの大切さ」を伺った。
■ゼミで身につけて欲しいのは「知的基礎体力」
ーー本日はよろしくおねがいします。
はい、お願いします。
ーー今日は、先生のゼミでの学びについて伺っていきたいと思います。ゼミでは国際関係という広いテーマで扱っているのですか。
そうですね。僕のゼミで軍縮だけとかいったら、誰もこないと思うので(笑)テーマは広く扱っています。でも三年生ではやっぱり国際政治の理論をやろうと思ってるんですよ。
ーー理論というと、退屈に感じてしまします。
時事的なネタをやるのってその場その場では楽しいのだろうけど、情報は常に古くなっていきます。学生が身につけるべきものってそのような時事的な情報ではなく、どのように情報を分析し、処理していくのかっていう理解のための枠組みや分析能力で、それは「知的基礎体力」だと思うんですよ。
ーー正しく情報を処理していくには何が必要なのでしょうか。
現代の複雑な国際政治は情報が氾濫しています。この雑多な情報を処理し、活用するための知的基礎体力には二つの軸があります。
一つは、ある事象を見るときに、英語力。そして二つ目は、ある事象を見るときにどのように枠組みを構築するのかです。
■国際機関勤務で感じた、英語力における読み書きの大切さ
ーー知的基礎体力に英語力が含まれているということは、ゼミではやはり洋書を取り扱うのですか。
三年生のゼミでは文献は全部英語で、毎週100ページずつ読んできてもらっています。
ーーそれはなかなかきつそうですね。
厳しいと思います。しかし、そこで英語への抵抗感を取り除き、読むことに慣れることが非常に重要だと思っています。
ーー英語への抵抗感というと、日本人は読み書きよりも、話すことが苦手でそっちに必死なイメージですが…
ウィーンにいた時も感じたけど、みんな英語っていうとプレゼンなどで話す能力を重視しがちだけど、違うんですよね。一番重要なのは読み書きだと思うんですよ。
ーーなぜそう思うのですか。
仕事してみるとすぐわかるよ。内容がなければどんなに言葉がうまくても、すぐに議論や交渉の中心からは外れてしまう。
政策作りをやっているときに重要なのは、文書の行間を読むのは当たり前、もっと言えばそこに書かれていない裏を読めるのが重要。そうなるには、ただ単にその言葉を知っているということだけではなくて、どれだけ「読む力」があるか、が試される。
ーー国際機関での勤務でもやはり感じましたか。
まさにそうですね。国際的な交渉の場では、会議の場で読まれる文書のたたき台を誰が作ったかってすごく重要になってきます。それは、原稿を作成した人は絶対議論では中心になれるからで、そうなると、英語上手い下手よりも、その人が何考えているのかが重要になってきます。
国際的な場でどれだけ自分の意見を反映させるかには、読み書きをどれだけ一生懸命やるかにかかってると言っても言い過ぎではないと思います。
ーー英語力で読み書きこそが重要といった考え方は新鮮でした。
コミュニケーションで人に何を伝えるかって、思考を整理する必要があるでしょ。マルチな交渉とかで、やっぱりアメリカ人とかってプレゼンが上手いと思います。しかし、彼らの意見が最終的に通りやすいわけでもないんです。プレゼンはスキルよりも、コンテンツですから。
外交では、表の議論とは別に、裏でデマルシュ(説得)して回るんですけど、そのとき相手の利益と自分の利益がいかに整合性があるか整理して話す必要があるわけです。それって、文章を正確に読み込んで整理し、形にしていく力だと思うんです。熱く語ってしまいましたね(笑)
ーーゼミではそのために読み書きや思考の整理を重点的に学ぶんですね。
そういったことができる一助としてやってます。たぶん、僕のゼミの卒業生は大変だったって言うと思うけど、その分今はその経験が役に立っていると思います。
■理論を学ぶことは、抽象的な問題を扱うためのトレーニングである
ーー先生のいう「知的基礎体力」でのもう片方の軸について伺いたいです。
ある事象について思考するときに理論って大事で、授業の冒頭でもこういった話をよくするんです。
物事を理解する時って、おそらくみんな無意識に一般化・抽象化して理解しようとしますよね。一般化・抽象化するには、何らかの分析の枠組みが必要ですが、理論を学ぶというのは、そうした分析の枠組みを意識して使うことができるようになることで、結論に至るまでの思考の経路を自覚できるようになるということです。演繹的な理論の蓄積によって、ある事象が将来どう展開していくのかが論理的に推測できるし(それがいつも正しいとは限りませんが)、頭の中で整理できてきます。
その能力が自分で自分の考えを構築するときに、役に立つと思うんです。
ーー学生からすると理論って取っつきづらいイメージですが、そこに意味があるんですね。
人間ってどうしても抽象的なことを考えるのって苦手じゃないですか。
そこで、理論って抽象的な概念を理解しようとすることによって、思考の方法がトレーニングされるようになるんです。
ーー確かに独学では学びづらいとこを、ゼミで鍛えてくれるのはありがたいです。
あとは応用問題は、普段のゼミで扱うというよりは合同ゼミで扱います。
■豊富な合同ゼミで、応用力を養う
ーーちなみに合同ゼミはどこの大学とですか。
GLPでケンブリッジ大学へ行ったり、四大学の慶応・京大・同志社・一橋でやってる合同ゼミにも参加しています。また防衛大学校で行われるシンポジウムにも準備して参加しています。
ーー国内外と豊富に知識を応用する機会が用意されていますね。
それが応用問題ですよね。普段のゼミでは、語学や理論などの基礎的な面でのみっちりと体力つけてもらいます。その二本立てで、僕のゼミの三年生には学習を進めてもらいます。
ーーちなみに四年生や留学生はどういった学びをゼミではされるんですか。
四年生では関心が多様なので、それぞれの卒論のテーマに沿って進めていってもらう感じです。また、僕のゼミでは5人留学にいっていますね。ゼミで何するかは本人次第で合わせています。四年で卒業するかどうかも本人のキャリア次第ですね。
ーー最後に一橋生に何かメッセージはありますか。
やっぱり、メッセージは変わらなくて、知的基礎体力をつけて欲しい。
能力の面でも、習慣の面でも、本を読んだり分析をしたり論文書いたり、そういった基礎体力を大学の時につけておくと、絶対に役に立つ。ゼミで文献を読み込んだり、みんなでディスカッションすることで身につく力って大きいと思うんです。そういう実力をつける機会として、ゼミを真面目にやってもいいんじゃないかなって思います。
ーーゼミでの勉強の意義が見えてきました。本日はお忙しい中ありがとうございました。
ありがとうございました。
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インタビューした人
柏木悠登(かしわぎ ゆうと)
国際部ディスカッション所属
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