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「理論と現実の往復運動」 これが私の信念【商学部 藤原先生】
記:2019年3月18日
経営戦略。響きは格好いいが、実際に何を学んでいるのか、いまいち掴めない分野ではないだろうか。そんな学生のモヤモヤに対して、「組織の論理に飲み込まれないために、経営戦略は必要なフレームワーク」と藤原先生はいう。
今回は、2005年一橋大学大学院商学研究科 博士後期謀程を修了し、京都産業大学講師・准教授、コペンハーゲンビジネススクール客員研究員を経て2018年より一橋大学経営管理研究科 准教授として、経営戦略を教えている藤原先生に「学者を志したきっかけ」「ゼミで大切にしていること」「経営戦略を学ぶ意義」についてインタビューした。
■新たなフィールドへの挑戦
ーー本日はインタビューよろしくお願いします。早速ですが、先生の学生時代について教えてください。
学部時代は1年生から4年生まで、ボート部に所属していました。合宿所でずっと暮らしていて、泊まり込みで練習していましたね。
ーーボート部に入ったきっかけはなんでしょうか?
大学では、今までの経験が生きないスポーツがしたかったんですよね。サッカーとか陸上は、高校からやっていた人の方が有利じゃないですか。それが嫌で。高校時代、私はバドミントンをやっていたんですけど、続けようとは思わなかったですね。なにか新しいことがしたかったんです。
ーーなるほど。では、「特にボートがしたかった」というわけではないんですね。
たまたま、初めに声をかけてくれたのがボート部だっただけで、ボートがすごくやりたかったというよりは、同じスタートラインから始められるスポーツがしたかったんですよ。それに、体型的にアメフトやラグビーは向いてないと思ったので(笑)
ーーサークルではなく、あえて厳しいボート部に入ったのはどうしてでしょうか?
4年間あるので、ひとつのものに打ち込みたかったので、サークルとかは考えなかったなぁ
ーーボート部ともなるとさぞ忙しかったと思うのですが、勉学との両立はどのようにしていましたか?
ボート部では合宿所でみんな一緒に暮らしていましたから、情報共有などして協力してましたね。それはボート部のメリットだったと思います。
その反面、朝早くから練習をしていたので、やはり1限に出るのは大変でしたね。みんな、履修する授業が限られていたと思います。
ーー先生の学生らしい一面が聞けて、少し安心しました。
ただ、最近はボート部の学生は真面目になってる気がします。私が教えている授業でも、ボート部の学生が前の席に座ってたんですよ。部内でもそういう風潮が高まってきてるのかな?
■知的好奇心を刺激された伊丹ゼミ
ーー先生が3年生になる際、ゼミ選びはどのように行いましたか?
いわゆる「シビア系」に行きたかったんですよ。何か1つのことに打ち込みたい、という考えはゼミにも言えますね。正直、高校から卒業してすぐに打ち込める科目を見つけられる人って、殆んどいないと思うんです。僕も大学2年間過ごして、だんだん経営学の全体観が分かってきました。
ゼミ選択の時期に、「自分がやりたいことは何だろう」と改めて考えたんです。そうしたらシビア系で、かつ、経営戦略のゼミが1番楽しそうだと思ったんですよね。
それで、倍率1倍(笑)の壁を見事突破して、伊丹ゼミに入ることが決まりました。当時からシビアで有名なゼミだったので志望者はそれほど多くはなかったんですよ。
ーーそうなんですね。ところで、シビアって一橋生特有の用語ですし、けっこう基準が曖昧だと思うのですが、先生はどのようにお考えですか?
シビアかぁ、、僕の中ではまず課題がしっかり出ること。あとはゼミの場で発言が求められることですかね。
ー発言が求められるというのは?
先生と発表者の1:1のコミュニケーションで終わらない環境。伊丹ゼミは議論が自然に生まれる雰囲気がありましたね。それに、ゼミ生はシビアな環境を求めてる人が多かったので刺激を受けてました。
ーーゼミではどんな本を読まれていましたか?
まず初めにミクロ経済の本、次に経営戦略、夏合宿では通商白書を読みました。そして、3年の秋冬学期にアルバート・ハーシュマンの書いた『Exit, Voice, and Loyalty』という本を読んだんですけど、この本は興味深かったですよ。
ーどのような内容の本なんでしょうか?
簡単に言うと、組織が逸脱あるいは劣化しかかった時にそれをどう立て直し、回復させるのかのメカニズムについて考えた本です。この本に刺激を受けて、大学院でもっと勉強しようと思いましたね。まぁ詳しくは読んでください(笑)
ーー読んでみます(笑)その他にゼミの中で刺激になったことはありますか?
先ほども言いましたけど、他のゼミ生には刺激を受けましたね。この代のゼミ生は少し特殊で、学者が3人出たんですよ。
知的な刺激をお互い与えあっていたゼミでした。
ーー僕もいままでのゼミから、一緒に学ぶ人の重要性を感じつつあります。
そうですよね。お互いに刺激し合う場があるかどうかが、将来の方向性やキャリアを決める際の意思決定に影響していると思います。
ーー大学院に進まれてから学者になるまで、どのような経緯があったのでしょうか?
もう少し勉強したいと思って修士に上がり、そのまま知的好奇心にあおられ、今に至った感じですね。そして、大学院時代の指導教官からの勧めもあって、戦略論の分野で学者になる道に進みました。。
■理論と現実の往復運動
ーー次は、現在の先生のゼミについてお聞かせください。先生のゼミにはどんな生徒がいらっしゃいますか?
うちのゼミ生は就職先見るとほとんど被らないんですよ。多分それぞれの価値観がかなり違う人たちが集まってるんですよね。卒業論文も見てみても、そのアプローチは様々です。
ーー卒業論文は毎年どのようなテーマなんですか?
テーマは毎年「不思議な問いを、オリジナルなデータで分析する」ということだけです。
ーー「不思議な問い」とは?
すぐに答えのでないもの。ある現象について、「それってこれだからでしょ」、とは簡単に片づけられないものです。オリジナルとはデータは、例えば現場に行ってお客さんの流れを観察して、何を買って何に目を向けているかなど、実際のデータを取りに行くことです。
ーー現場に行って、データを取りにいく意義とは何でしょう?
それは重要なところで、現場行くといわゆる「常識」のウソが分かるんですよ。現場を見ることで、我々の中にあるステレオタイプ的な情報のウソを見破ることができます。
さらに現場に行くと理論のフレームワークでは読み解ききれない現象に出会うことがある。それがまた新たに現象を理解するフレームワークを作るきっかけになるんですよね。
ー先生のゼミでも、ゼミ合宿で実際にトヨタの工場を見学したとお聞きしたのですが、そのことと関係があるのでしょうか?
そうですね。今って学生の間でインターンシップが流行っていますよね。
そのおかげで現場へのアクセスはしやすくはなっていると思うのですけど、それだとオフィスで与えられた課題をやるだけになってしまうんですよ。工場見学などを通して、私は現場のもう一つの側面を見てほしいと思っています。
ーーもう一つの側面とは具体的に何ですか?
本を読むだけでは分からない、現場の人の考えや感じ方、見方を知ることです。
ゼミで理論を学んだ上で、実際の現場と照らし合わせるといった「理論と現実の往復運動」が必要であると私は信じていますし、伊丹先生のゼミでもそう教わってきました。
ーー伊丹先生のゼミで学んだことが、今の先生の考え方に通じているんですね。
そうですね。今の学生も理論と現実の往復運動を濃密にできるだけ多く繰り返してほしい。かけがえのない4年間を有効に使ってほしいですね。理論を学び、概念のレンズを通して現象を解釈する。そして、その時の見通しの良さを感じてほしいです。
ーー日常の中で、理論と現実の往復運動を経験することはできますか?
私の場合、本の中では理論と共に実際の事例が多く紹介されていたし、伊丹ゼミの課題でも、本の内容に適合した事例を探してくるというのもあったので、そこで経験する機会はありましたね。
理論の視点から現象を探してくるトレーニングをしてしました。これは一種の理論と現実の往復運動でしたね。
■企業を導くフレームワーク
ーー最後にずばり、経営戦略を学ぶ意義は何でしょうか?
いざ会社に属するとつい組織の中だけの論理、内輪の論理に流されて会社の意思決定をしてしまうこと多々あります。
戦略のフレームワークも持っていると、客観的な視点から正しい意志決定する際に大きな役割を持つと思いますし、企業が競争にさらされる中で、生き残っていくためには、戦略の考えがないとすぐ他者に飲み込まれて行ってしまいます。近年、競争が激化していく中で戦略はより重要になっていくと思いますね。
ーー企業が戦略のフレームワークから逸脱した行動をとってしまうのはどうしてでしょうか?
教科書で語られているような戦略論が見過ごされてしまう一つの背景に、つい組織の論理が強くなってしまうことが考えられます。そのようなことがあるという前提に立つからこそ、戦略のフレームワークを持つことが重要になってくると思いますね。
ーーなるほど、理論に立ち返るためにも、企業は戦略のフレームワークから外れた意思決定をしまうことがあると知っておくことが重要なんですね。
そのことに関して伊丹先生が面白いことを言っていたんですよ。人間は、「性善説」でも「性悪説」でも語られるべきではなく、「性弱説」で語られるべきだと。
ー「性”弱”説」ですか?
はい、本来こうなるべきだと分かっていしても、ついつい流されてしまうということですね。これを防ぐのが戦略のフレームワークなんですよ。
ーー戦略のフレームワークを学ぶ意味が分かってきたような気がします。本日はお忙しい中ありがとうございました。
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インタビューした人(文責)
大吉 駿(商・2年)
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