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若手従業員のメンタルヘルス不調の要因とは?パーソル総研の調査結果が示した納得の理由📚

みなさんこんにちは!今日は半導体やテクノロジーの話題からは少しずれますが、パーソル総研が公開した若手従業員のメンタルヘルス不調に関する調査結果が興味深かったので、取り上げたいと思います💡

調査の背景

2000年代以降、メンタルヘルス不調の早期発見と対応の重要性が広く認識され、精神障害の労災認定基準の厳格化やストレスチェックなどの義務化といった法整備が進められています。

しかし、職場におけるメンタルヘルス不調は依然として大きな課題になっています。特に、2020年以降、社会的不安やSNSの影響、パンデミックの影響、職場環境の変化などが若年層のメンタルヘルスに大きな影響を与え、メンタルヘルス不調の増加が指摘されているところです。

このような背景を踏まえて、パーソル総研は、若年層におけるメンタルヘルス不調の背景を解明し、企業が取り組むべき具体的な対策を示唆することを目的に調査を行っています。

なお、本調査におけるメンタルヘルスの不調とは、生活の質に影響を与えるような強い不安や悩み、気分の落ち込み、ストレスからくる体の不調などを指します。

調査概要

調査結果

こちらは、正社員に関して、性別、年齢ごとのメンタルヘルス不調を経験した割合を示しています。この結果から以下のようなことが読み取れます。

  • 正規雇用者では、若年層ほど過去3年以内のメンタルヘルス不調経験率が高い。

  • 20代男性の18.5%、20代女性の23.3%が経験。

さて、このメンタルヘルス不調を経験した正社員のうち、退職した割合を以下に示します。

グラフより、過去3年以内のメンタルヘルス不調経験者(当時正規雇用者)のうち、勤務先を退職したのは、25.3%でした。これでも相当に多く感じますが、年代別に整理すると、20代は35.9%と他年代と比べて多く、退職しやすいことが見て取れます。

それでは、退職しなかったメンタルヘルス不調者はどのような対応を取ったのでしょうか?以下に、各対処法の割合を示します。

メンタルヘルス不調者の行動として、「職場内での相談・報告」は46.1%と、およそ2人に1人でした。職場内での相談の中で、上司に相談した人は30.6%です(非管理職者の行動に限定しても同程度)。

本来は、真っ先に職場内での相談がなされるべきだと思いますが、実態としては人間関係での難しさなど、相談しにくい状況になっていることが分かります。

職場外での相談の中で、最も多かったのは「医師やカウンセラーに相談した・治療を受けた」で、49.3%に上っています。一昔前は、精神科にお世話になることは、恥ずかしいことだといったステレオタイプな見方があったかと思いますが、半数もの人が医師らに相談している事実から、現在ではかなり一般化していることが確認できます。

それでは次に、なぜ職場の人間に相談しなかったのか?について見ていきましょう。以下のグラフは、メンタルヘルス不調を職場に相談しなかった理由の割合を示しています。

メンタルヘルス不調者が不調を職場に相談しなかった理由として、「相談しても解決につながらないと思った」が34.5%と最多になっています。

次いで、「職場に相談できる関係性の人がいなかったから」、が21.0%です。

しかし一方で、相談者の約8割は職場からの支援的な対応(相談に乗る、業務負担の軽減、医療受診の勧奨など)を受けたと回答しています。

このことから、期待していなかったけど、相談してみたら思っていたよりもいい結果になったという方は多いのかもしれませんね。

次に、若手に焦点を当てて、退職者が多い理由についてもう少し見ていきましょう。近年強まっている若者の特徴と指摘されているのが、「拒否回避志向」です。

拒否回避志向が高いと、上司などからの叱責でストレス反応が高まりやすくなります。本研究では、拒否回避志向を以下の5点から構成されるとして、評価をしています。

  1. 人目を気にする

  2. 受け身の姿勢

  3. 失敗への恐れ

  4. 怒られたくない

  5. 対立回避

このように、年代別に見ると、20代など若手になるにつれて、拒否回避志向が高くなることが優位に確認できます。

このような拒否回避志向の高さは「保護」「従順さの期待」「情報過多」の経験に関連しています。これらの経験が20代で最も多く、世代による違いが確認できます。

若年層の拒否回避志向の高さは、子供~学生時代に保護的な教育環境やインターネットの利用が広がっていたために、人間関係の対立や叱責、失敗、自分なりに考える機会が減り、またSNSなどで人目を気にする機会が増えたことが一因として考えられます。

こう考えると、単に、最近の若者は根性が足りん的な話では全くなく、若者は技術の進歩による環境の変化の犠牲者であるという見方ができます。

対処法としては、デジタル機器から適度な距離を置くことが推奨されています。

以下は、スマートフォンやPCなどの画面付きデジタル機器に触れている時間(スクリーンタイム)と疲労・ストレス反応の関係を示しています。

このように、1週間のスクリーンタイムが長い人ほど、脳疲労や眼精疲労が高く、ストレス反応も高いことが分かります。この傾向は、30代以上でも同様です。

なお、1週間のスクリーンタイムを職種別でみると、テレワーク実施者や、情報処理・通信技術職、間接部門、事務職といったデスクワークの多い職種で、特にスクリーンタイムが長い傾向があります。

このような職種に従事されている方は、より注意する必要がありますね。

まとめ

いかがでしたか?今日はパーソル総研が公開した若手従業員のメンタルヘルス不調に関する調査結果が興味深かったので、取り上げました💡

重要なポイントを最後にまとめておきます。

  1. 正規雇用者では、若年層ほど過去3年以内のメンタルヘルス不調経験率が高い。20代男性の18.5%、20代女性の23.3%が経験。

  2. 正規雇用者の約4割が、職場で相談しても相談後の職場の対応イメージがないと回答。

  3. 若年層ほど、「拒否回避志向(怒られたくない、人目を気にする、受け身の姿勢、失敗への恐れ、対立回避)」が高い傾向。拒否回避志向が高いと、上司などからの叱責でストレス反応が高まりやすい。背景には、保護的な教育環境やインターネット利用の影響などが可能性として考えられる。

  4. 若年層ほど「スクリーンタイム(スマホ等のデジタル画面の使用時間)」が長く、特にテレワーク実施者やIT・間接部門・事務職で長い。スクリーンタイムが長いほど、脳疲労や眼精疲労、ストレス反応が高まる。

  5. メンタルヘルス不調を「職場内で相談・報告」したのは2人に1人であり、傾向に年代差はない。一方、相談しなかった20代の退職率は35.2%と他年代に比べ高い

  6. 職場にメンタルヘルス不調を相談しない理由は、「相談しても解決につながらないと思った」が34.5%と最多。他方で、相談者の約8割は職場からの支援的な対応(相談に乗る、業務負担の軽減、医療受診の勧奨など)を受けたと回答。

この他にも様々な興味深い調査結果が報告されていますので、興味ある方は以下の参考文献を読むことをおすすめします✨

メンタルヘルス不調は場合によっては、物理的な不調よりも深刻な状況になりかねません。職場以外にも、現在では様々な相談窓口があるので、一人で悩みすぎず、勇気を出して連絡してみて下さい。

今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
また次の記事でお会いしましょう!それでは!

参考文献


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