【注目ニュース】ASMLとTSMC、半導体製造の無力化可能-中国が侵攻なら
発表日:2024年5月21日
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概要
オランダの半導体製造装置メーカーASMLホールディングと台湾積体電路製造(TSMC)は、中国が台湾に侵攻した場合、世界で最も高度な半導体製造装置を停止させる手段を持っています。これは、事情に詳しい関係者が明らかにしました。
米政府はオランダと台湾に対し、中国が台湾に対する圧力を侵攻にエスカレートさせた場合の懸念を内々に表明しています。オランダ政府がこの脅威についてASMLと協議した際、ASMLは製造装置を遠隔操作で無力化できると説明しました。オランダは侵略のリスクを評価するため、シミュレーションを行っています。
ASMLとTSMCの広報担当およびオランダ貿易・開発協力省の報道官はコメントを控えています。米政府関係者もコメントを控えました。
遠隔操作での停止はASMLの極端紫外線(EUV)露光装置に適用されます。この装置はTSMCが最大の顧客で、高周波の光波を利用し、人工知能(AI)用途やより繊細な軍事用途の半導体製造に使われます。市バスほどの大きさのEUV露光装置は定期的なメンテナンスとアップデートが必要で、ASMLは遠隔操作で強制的にシャットオフすることが可能です。
ASMLの技術は政府の介入を受けており、オランダ政府はASMLがEUV露光装置を中国に販売することを禁じています。オランダは今年、米国の要請により、ASMLの二番目に高性能な半導体製造装置の輸出を停止し始めました。ASMLは今年の中国向け売り上げの約15%が輸出規制の影響を受けると予想しています。
中国の習近平国家主席は中台統一に向け武力行使の可能性を否定しておらず、中国は軍備と核兵器を増強しています。米インド太平洋軍のアキリーノ司令官は中国が2027年までに台湾を侵略できるよう準備していると見ています。米議会は台湾の防衛力強化に向けた80億ドルの支援を承認し、バイデン政権は将来的なサプライチェーン分断に備え、半導体メーカーに390億ドルの助成金を約束しています。
EUV露光装置は頻繁なメンテナンスを必要とし、ASMLの予備部品がなければすぐに動かなくなります。クリーンルームに設置され、現場での保守作業が難しく、エンジニアは特殊なスーツを着用します。TSMCのような顧客は自社の製造システムにアクセスでき、ASMLは顧客の専有データにはアクセスできません。
TSMCの劉徳音会長は昨年のインタビューで、台湾を侵略しようとする勢力は同社の半導体製造装置が稼働していないことに気付くと示唆しました。「誰もTSMCを武力で支配できない。軍事侵攻があればTSMCの工場は操業不能になるだろう」と述べました。
解説
現状、2 nmなどの最先端半導体プロセスには、ASMLのEUV露光装置が必要不可欠です。既にASMLの存在は一企業にとどまらず、国を動かすレベルになっています。
今回のニュースは中国が台湾進攻した場合に、TSMCが乗っ取られることでASMLの最先端EUV露光装置が中国に奪われるリスクに対する対処についてです。
結論的には、ASMLは遠隔で露光装置を停止させることができるという、裏技を持っているようなので、仮に台湾有事が起こったとしても、装置は稼働できない状態になるとのことでした。
2023年9月の段階で既にケアしていたとのことなので、事前準備の万全さに驚くとともに、台湾有事の可能性が我々が考えているよりも遥かに高いと想定されているのかもしれないと思うと、平和ボケを修正しなければならないかもしれませんね。
参考文献
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