ギャグマンガ・4コママンガ千冊 78〜81冊目 『あずまんが大王』 単行本 全4巻 感想
1999年から2002年にかけて、『月刊コミック電撃大王』(メディアワークス)にて連載された『あずまんが大王』(あずまきよひこ)を読んだ。
連載当時は小中学生だったが、このマンガに触れる機会はなかった。
内容は、女子高生たちのまったりとした学校生活コメディ、といったもの。
女子高生たちの高校三年間が描かれている。共学だが、男子生徒との絡む場面はほとんどない。したがって、ラブコメも発生しない。のほほんと、それでいてクスッと笑いたくなる女子高生たちのやり取りが、ゆっくりとしたテンポで進んでいく。読んでいて安心していられるような感触があった。4コママンガだが、二三コマ同じ絵が使われたりと、たっぷりと間を取っていることが多い。刺激的な場面が急に訪れたり、グロテスクな表現があったりそういった読者を驚かせるところがないので、心理的安全性を感じながら、読み進めていけることに心地よさがある。
この感覚はどこかで味わったことがあるな、と思っていたら膝をポンと打って思い出せた。YouTubeなどで流行っている chill / lofi hip hop を聴いているときの感覚と似ている。スローテンポで、単調なメロディーの繰り返しの音楽で、それを聴いてゆったりとくつろぐことができる。chill out することができるのが、『あずまんが大王』と同じだ。日本では、このような日常系とか、空気系とか言われるマンガが chill hip hop の役割を担って、人々をくつろがせているのかもしれないな。現に、わたしも『あずまんが大王』でそれを体験した。感情を揺り動かされるんじゃなくて、まったりとして落ち着かされる。エモいんじゃなくて、チルいマンガだと思った。
登場キャラはみんな魅力的で、10歳で高校へ飛び級してきた神童”ちよちゃん”、関西出身のど天然”大阪”、負けず嫌いで人の嫌がることが好きな”とも”、ツッコミ役の”よみ”、文武両道でスタイル抜群なおっとりさん”榊”、中途からは、良くも悪くもさっぱり系スポーツ女子”神楽”も加わる。どのキャラ同士のやりとりも面白い。事の発端を起こすのは、ともちゃんと大阪が多い気がする。このマンガのチルさを醸し出しているのは、ちよちゃんと大阪だと感じた。天才だが純粋な少女であるちよちゃんと、ド天然で独特な想像力を発揮する大阪がいることで、展開が加速していくことを制止して、ゆったりとしたテンポで物語が進んでいけているんじゃないか。ちなみに、わたしはキャラの中で”とも”がいちばん好きですね。劇がはじまるきっかけをつくっているようなところが面白いです。
Youtube では chill hip hop 系のチャンネルや動画がまだまだ人気なようですんで、日本でもこのマンガを始祖として、チルな空気を醸し出すマンガはこれからもたくさん出現しそうですね。日中、忙しさや煩わしさに翻弄されながらも、夜はこういったマンガや音楽でチルアウトするってのは、とても健全だと思いました。
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